婚約者とヒロインが悪役令嬢を推しにした結果、別の令嬢に悪役フラグが立っちゃってごめん!

行枝ローザ

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夜更

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前世での兄妹──同じ母の胎に同時期にあった双子──悲劇の別れ──感動の再会──

キラキラとした目でエリー嬢は子爵令嬢であるシーナ嬢と、この国で最高の未婚者であるリオン王太子殿下の『悲劇と感動の物語』に感激している。
脳内で一体どういうふうに話が変換されたのか問い質す気にはなれず、今は『かつての妹が全力でかつての兄の恋を応援する現在』であり、その恋のお相手であるルエナ嬢と共にこの部屋にいるということに全力で妄想を広げていた。
「……そんなわけで、あいつ……いえ、リオン王太子殿下はルエナにゾッコンです。たとえままごとであろうと、私の手を取りキスをする振りすらヤル気を起こしません。ご安心ください!」
「は、はぁ……」
「まあせいぜいが腕を貸してもらって『何となく仲睦まじい』ぐらいの演技はしてましたけど、そういうのはきょうだいではアリでしょう?」
「それは……そう、かもしれませんが……」
むろんリオン自身がシーナに対して恋愛どころか唇も肌も重ねることなど絶対にあり得ないと断言してはくれたが、シーナと妙に距離感が近いのはずっと気になっていたのだ。
シーナからも改めてそう言われたが、ディーファン公爵家の兄妹としての距離感はもっと遠く、親しみも何もない。
それは主に両親の教育方針の結果として男女で差をつけたということもあるが、ルエナの教育係として選んだ女家庭教師や専属侍女が繰り返しルエナの精神を蝕むようなクスリ入りのお茶を与えて、家族から見捨てられるように仕向けていたせいでもある。

そんな話ばかりより…と話題を変え、せっかく王都まで来たのだから観劇したり散策などはどうかとシーナは、自分より身分が上の少女ふたりに提案した。
エリー嬢は辺境侯爵家が現王家を陰ながら批判否定しているため、憧れはありながらも情報を仕入れることすらままならず、ルエナ嬢はそもそも貴族学園と王宮、そして公爵邸の自室以外出歩いたことがないため、現在の都の流行りに疎い。
さすがに自分が暮らしていた貧民街を案内することはできないが、貴族家に通うことが許された父のおかげで最高級の画材道具の置かれている貴族御用達の店にも行けたシーナの方が、断然庶民向けの通りのことも貴族しかいないような高級店が並ぶ通りのことも詳しく知っており、パパッと木炭で描いた地図であれこれ紙面上での道案内をした。


楽しくおしゃべりする時間はあまり運動をしない令嬢たちにとってかなりの負担となったらしく、糸が切れるようにエリーがまず沈没した。
ルエナもずいぶん瞼を重くしているが、シーナはしっかりと目を冴えさせて、エリーの身体を毛布の上からゆったりと叩きながら何か歌を歌っている。
どこの言葉かわからないが、ゆったりとしたメロディーは聞き慣れないのにとても優しく、「もっと彼女と話したかったのに…」という思考をふわりと包み込んでしまう。
「………なた……だ、れ………」
違う。
そうじゃなくて。

どうして
わたくしを

灯りが星だけになった令嬢たちの『お泊り部屋』には、詩音が歌う子守歌だけが懐かしく響いた。


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