婚約者とヒロインが悪役令嬢を推しにした結果、別の令嬢に悪役フラグが立っちゃってごめん!

行枝ローザ

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講義・1

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ただシーナが憤っていても、高位貴族の中で年の差婚も生まれる前から性別さえ合えば当人の意思も恋愛対象など関係なく婚約が成り立ってしまうのも当然であり、血筋を途切れさせないためにも女側がそれなりに夫を奮い立たせる対象とならざるを得ないという認識もあった。
夫婦の営みにおいてまったく夫が役立たずになる場合、その責任を負わされるのである。
「それって……男の方に問題があっても?」
「え?と、殿方に何の落ち度がありましょう……?」
「ええ、そうですわ、シーナ様…いえ、シーナ。すべては旦那様に子を授けられるに足りない己の不甲斐なさを改めるべきで……」
「何を言ってるんですか?!ふたりともっ!!」
「ヒッ……」
自分より高位である貴族令嬢ふたりに対して、シーナはキングサイズのベッドの上に仁王立ちになった。
「いいですかっ?!おふたりが知識を有されていないのは、失礼ながら存じております。しかしながら!男が女性に対して不能になるのは、けっして相手に性的魅力がないわけではないのですよ?」
「え?」
「せ、性的……」
たぶんこの言い方でもこの世界のこの時代ではあからさまだったのかもしれないが、構わずシーナは前世の知識を伝授することに決めた。
「まずおふたりとも……女性には月の物あることはご理解いただいておりますね?」
「えっ…えぇ…それは……」
「あの…ルーナおねえさま、シーナおねえさま…『つきのもの』って何ですか?」
これ以上はないくらいに顔を赤らめるルエナとは対照的に、エリー嬢はキョトンと年上のふたりの顔を交互に見つめ、シーナはがっくりと肩を落とした。
「……まずはそこから、ですか……」
「し、仕方ありませんわ……庶民はいかようかは存じませんが、貴族の家に生まれた者は世話をする者がしるしを認め、屋敷に勤める医療の者が検めてから、その意味を教えるのですもの……少なくとも、生活に困窮することのない高位貴族の家においては、女はその徴の意味と自分がやらねばならぬことを教えられるの……」
「な、なるほど……」
つまり表向きの女主人としての仕事にまつわる事柄は幼い頃から仕込まれていても、夜の部分に関しては子を産める状態になってからやっと教えてもらえるらしい。
対して男はもう少し早い時期から精通がある者もいるし、『情報が未熟なつまに対して優位に立つ』ためにプライドを保ちつつ、自分の性癖や手順などを『妻として受け入れる義務である』と刷り込むのだろう。
「……では、ルエナにはおさらいと、エリーちゃんには正しい知識を。『月の物』…いわゆる『月経』というものですが、これは女性側に『こどもを産む準備ができつつありますよ』という、身体からのメッセージです」
「え?」
「まぁ……その『月の物』というのがあれば、お子を授かれるのですね!」
「いえ、そういうわけではないの。初めのうちは『準備段階』……つまり、『子を授かれる器官があります』ということ。それと本当に子を授かれるかは、毎日の記録で推し測るしかないの」
それは前世でも女性がひとりで予測できる方法──毎日の体温記録と体重管理、そしておりものチェックといった貴族令嬢にとっては下々の者の手に委ねることかもしれないが、自分でちゃんと理解していなければ、男どもに都合よく解釈されまた支配されるきっかけになりかねない。
「で、こうやって数値化したものをグラフにして……」
「ぐらふ?」
「ぐらふって……?」

──『数値の図形化』という概念もなかった。


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