婚約者とヒロインが悪役令嬢を推しにした結果、別の令嬢に悪役フラグが立っちゃってごめん!

行枝ローザ

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子供の考えなど休むに似たり──そう考えていたが、思ったより大人は欲深かったらしい。
幼い令嬢を寄こすには強行といえる日程で、エビフェールクス辺境侯爵は来訪を知らせてきた。
それは早馬で二週間掛けての王家の書簡であったが、辺境から飛ばされた伝書鳩で届けられたのである。
むろんそれは簡易的なものであるため、正式な返書は同じく早馬で二週間後、そして令嬢はそれより一週間から十日ほど掛けて王都の世話役となるレディッシュ伯爵家へ届けられると認められており──
「……まるで荷物扱いだな」
「はい……辺境で生き抜くには力が全てです。武力、財力、人力……我がエビフェールクス家が辺境のあの地で筆頭貴族となっているのも、父や祖父、そして先祖が築き上げてきた人望や統率力、そして交渉力によって隣接する国との交易によって、王家にも匹敵するほどの財を得ています」
「うわぁ~お」
前世でのサブカル知識として一般的になった『辺境を治める貴族は田舎者ではなくて大金持ち、もしくは武力的に王家に匹敵する』というのは間違いではないらしい。
シーナは実際にイストフがそう話すのを聞いて、感心したように呟いた。
一方のリオンは眉を上げて不快感を露わにしている。
「エリー……いや、我が兄の婚約者であるエルネスティーヌ嬢はイェン伯爵家の長女。我がエビフェールクスより落ちるとはいえかなり財産のある伯爵家なんだが、武の方で格段に落ちる。今たまたま武力で辺境侯爵家に貢献している貴族家がいないことでエリー…エルネスティーヌ嬢が兄の婚約者として決まったが、それはあちらの財力を目当てにした我が家と、我が家の武力を婚姻で得て辺境地での地位をもう少しあげたいあちらの家と……要は、親同士の思惑の一致が」
「最悪……」
そう思ったのはルエナも同じようで、シーナのように声には出さないが表情を歪めている。
「申し訳ない……だが、辺境とはそういうところだ。力がある者が、力のない者を支配する。支配されたくなければ、支配する側になりたければ、支配する力を示さねばならない……そして示せる者にとっては、持たざる者の人権なんて、簡単に無視できるんだ……」

後継者になれない自分が、後継者の婚約者を守れないように。

イストフは声に出さなかったが、思うことは皆に伝わった。


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