婚約者とヒロインが悪役令嬢を推しにした結果、別の令嬢に悪役フラグが立っちゃってごめん!

行枝ローザ

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ゾワワッと背筋を悪寒が走った──ということもなく、シーナは心穏やかにお茶を飲んでいた。
知らないし、知りたくもないし、そもそも知って何がいいのかわからない。
むしろこれからの学園生活において、王太子側近を選び直さなければならないリオンの方がこの先大変だろう。
「とりあえず今できることはない……な。もうすぐ授業も終わるし、イストフとアルベールは共に城に来い。それとえーと」
「クールファニー男爵です、殿下」
いつの間にか後ろに回っていたアルベールがそっとリオンに囁き、軽く頷くとリオンは改めて下位貴族の兄弟に向き直る。
「兄の方は確か王宮の蔵書を見たいんだったな。同行を許す。弟の方が兄を護衛するのに向いてそうだな」
「あ、ありがとうございます!」
「僕、しっかり兄上を守ります!」
さすがに身分の証立あかしだてもなく城内をうろつけば、少年といえど捕縛されてしまうだろう。
その手配はアルベールに任せ、シーナとルエナについてもいったんは城に身を寄せるようにと勧めた。
「なによ、結局みんな一緒に行くんじゃないのさ……」
「う~ん……まあ、何だかんだ言ってそっちの方が安全かなぁ……って」
確かに学園内側近五名のうち三名は捕らえることができたが、ここにいるイストフ以外の残ったひとり──ベレフォン・ジュスト・ダンビューラがいまだ見つかっていない。
学園内にいるとすれば遠からず衛兵が捕縛するとは思うが、王都にあるダンビューラ伯爵邸に逃げ込んでいるとすれば、たとえ王太子と言えどもそう簡単に踏み込むわけにはいかなかった。
何せシーナやアルベールの前に現れ、ディーファン公爵家を侮辱したのは捕らえられた三人だけであり、ベレフォンは簡単に尻尾を掴ませなかったのだから。
「さすがに学園内で何かやらかそうとはしないかもしれないけど、アルベールやイストフを王宮に連れて行って、ルエナ嬢とシーナをそのまま公爵家の馬車で帰したとしたら、その途中で……とか、あり得ないことではないし」
「う~ん……伯爵家の者が公爵家の馬車を襲うとは思えないけど……」
「襲うのは伯爵家の手の者じゃなくて、急募したゴロツキどもだろうな。もしかすると予めそのチャンスを窺っているかもしれないし」
ストーリーはかなりゲームから外れてしまっている。
楽観視はできなかった。


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