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大切
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凛音は先に進んでいる──それは詩音もだ。
王太子として責任を果たす意欲のあるリオンの動機自体は『ルエナ嬢をゲームのようには断罪させず、晴れて『リアル俺嫁実現』を目指している。
最期はお互い悲惨だった。
凛音は凶刃で命を絶たれ、詩音は殴られ首を絞められ犯されて命を絶たれた。
その場、その時、実の兄のひとりに。
でも因果も縁も切れてはおらず、こうやって夢のような世界に生まれ変われて、離れていても近付けるこんな距離にいれて。
双子の妹を気遣うための引き籠りだった凛音と違って、詩音はもう本当にほとんど外に行けないぐらいの酷さだった。
それをゆっくり浮上していって、看護師として働くことは難しかったかもしれないが、それでもネット上の女性コミュニティで『他人』と意見を交わす程度には回復していったのに──
今でも完全に男性への完全な恐怖心がなくなったわけではないが、前世を思い出した後でも『生きる術』を父たちが考え、守り、愛してくれたおかげで、必要以上に怯えることはない。
それはひょっとしたら『ヒロイン補正』というものかもしれないが、ただのモブキャラで特に庇護されることもなく生きていたら前世からの対人恐怖症を引きずったまま精神を病んでいたかもしれないと思うと、何者かの采配に感謝しないでもなかった。
ルエナ・リル・ディーファンは婚約者であるリオン・シュタイン・ダンガフ王太子を見、それから離れたところに立つ兄のアルベール・ラダ・ディーファンがジッとこちらに視線を向けているのを見返し、だがその視線は自分に注がれていないと感じてその先を辿ると──シーナ・ティア・オイン子爵令嬢がいた。
王太子は彼女にまったく興味がないと言ったが、彼女の方はどうなのだろう──
そう思ってしまうほど、なぜか切なそうな表情で微笑んでいる。
「あの……」
微かに胸に湧き上がるモヤッとしたものを感じながら、リオンともシーナともつかず、ルエナは思わず声をかけてしまった。
「はいっ!!」
その声にパッと反応したのはリオンだけでなく、何故かものすごい嬉しそうな笑顔でシーナがルエナの声に元気良く返事をする。
その勢いの良さに困惑もしたが、少し犬っぽいような幼いようなその表情に、ルエナは思わず「ふふっ…」と笑い声を漏らしてしまった。
王太子として責任を果たす意欲のあるリオンの動機自体は『ルエナ嬢をゲームのようには断罪させず、晴れて『リアル俺嫁実現』を目指している。
最期はお互い悲惨だった。
凛音は凶刃で命を絶たれ、詩音は殴られ首を絞められ犯されて命を絶たれた。
その場、その時、実の兄のひとりに。
でも因果も縁も切れてはおらず、こうやって夢のような世界に生まれ変われて、離れていても近付けるこんな距離にいれて。
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それをゆっくり浮上していって、看護師として働くことは難しかったかもしれないが、それでもネット上の女性コミュニティで『他人』と意見を交わす程度には回復していったのに──
今でも完全に男性への完全な恐怖心がなくなったわけではないが、前世を思い出した後でも『生きる術』を父たちが考え、守り、愛してくれたおかげで、必要以上に怯えることはない。
それはひょっとしたら『ヒロイン補正』というものかもしれないが、ただのモブキャラで特に庇護されることもなく生きていたら前世からの対人恐怖症を引きずったまま精神を病んでいたかもしれないと思うと、何者かの采配に感謝しないでもなかった。
ルエナ・リル・ディーファンは婚約者であるリオン・シュタイン・ダンガフ王太子を見、それから離れたところに立つ兄のアルベール・ラダ・ディーファンがジッとこちらに視線を向けているのを見返し、だがその視線は自分に注がれていないと感じてその先を辿ると──シーナ・ティア・オイン子爵令嬢がいた。
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そう思ってしまうほど、なぜか切なそうな表情で微笑んでいる。
「あの……」
微かに胸に湧き上がるモヤッとしたものを感じながら、リオンともシーナともつかず、ルエナは思わず声をかけてしまった。
「はいっ!!」
その声にパッと反応したのはリオンだけでなく、何故かものすごい嬉しそうな笑顔でシーナがルエナの声に元気良く返事をする。
その勢いの良さに困惑もしたが、少し犬っぽいような幼いようなその表情に、ルエナは思わず「ふふっ…」と笑い声を漏らしてしまった。
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