婚約者とヒロインが悪役令嬢を推しにした結果、別の令嬢に悪役フラグが立っちゃってごめん!

行枝ローザ

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「聞いてほしい」とは言ったもののリオンはどこからどう話せばいいかと逡巡し、ルエナは何を言われるのかわかりきっているという諦観の表情で沈黙したまま待っている。
「……たぶん、信じられない…と、思われる、と思う……けど、まずは、聞いてほしい……」
ひと言ずつ区切りながらリオンが口火を切ると、ルエナはまだ黙ったまま頷いた。
「まず、ひとつだけハッキリさせておきたいんだが……シーナ、嬢……いや、シーナ?う~ん……シオンと呼ばせてほしいんだけど」
「え?」
「うん……まずはそこからなんだけど……ああ、ハッキリさせたいとか言っといて……えぇと……と、とりあえず!シオンと俺は恋人ではない!以上!」
「は…ぁ……あ、あの……?」
「というだけではわからないよね……この世界では全く血の繋がりはないけれど……この国に産まれる前……俺と詩音は、双子の兄妹だったんだ……」

この世界で言う『医局』に当たる『病院』という組織の中で医局長よりもはるかに財産と権威のある家庭に産まれたこと。
あまり夫婦仲の良くなかった両親と、歳の離れた兄がふたりいる家庭であったこと。
シオンが実の兄に二度も穢され、その際に止めに入った凛音が絞め殺され、また詩音も惨殺されたこと。
この世界でも珍しいピンクブロンドの髪を持って生まれ変わったシオン──シーナを守るため、実父であるオイン子爵の弟はシーナの髪を染め、『画家の息子』としてディーファン家に連れてきたこと。
その時に見た幼く可愛らしい令嬢に、前世の自分たちが楽しんでいた『ゲーム』という遊びと、それに付随する小説の挿絵と同じ顔を見出し、まずシーナが『詩音』であることを思い出したこと。
現在の国王であるリオンの父の知人であるという理由で宮廷画家の扱いで二人が登城した際、シーナが同い年の王太子に自分のデッサンを見せようと持ってきたのが刺激となり、リオンもまた『凛音』という過去を思い出したこと。

「……まだまだ話したいことがある。だけど……もう、お腹いっぱい、だよね?」
「え……?あ、あの……い、今のお話しでお腹は膨れませんが……あの、はい……理解が……追いつきません……」
「だよねー」
前世の世界では通じた「お腹いっぱい」もやはり通じはしなかったが、それでもルエナは理性を失わずに耳を傾けてくれた。
それだけでも、あの『薬物混入茶』の影響はだいぶ抜けているのがわかる。
「まぁ……アルベールも理解するのに数年かかったんだから、今すぐ理解してとは言わないよ」
「お…お兄様、も……まさか、その『てんせいしゃ』という方なのですか?」
「え?ああ、ううん、いやいや違うよ?アルベールはルエナ嬢のお兄さんで、間違いなくこの世界の人!前世なんて欠片も覚えていないし、普通はそうだから!」
「は…はぁ……?」
「これは前世での、俺たちの生きていた世界での考え方のひとつでね?『魂は輪廻転生を経て様々な経験を積み、末に解脱する』というものがあるんだ」
「げだつ……」
さらに不可解な知識を披露されて、ルエナは困惑の表情を浮かべる。
「解脱とは仏教の教えで……」


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