141 / 267
説明・1
しおりを挟む
「聞いてほしい」とは言ったもののリオンはどこからどう話せばいいかと逡巡し、ルエナは何を言われるのかわかりきっているという諦観の表情で沈黙したまま待っている。
「……たぶん、信じられない…と、思われる、と思う……けど、まずは、聞いてほしい……」
ひと言ずつ区切りながらリオンが口火を切ると、ルエナはまだ黙ったまま頷いた。
「まず、ひとつだけハッキリさせておきたいんだが……シーナ、嬢……いや、シーナ?う~ん……シオンと呼ばせてほしいんだけど」
「え?」
「うん……まずはそこからなんだけど……ああ、ハッキリさせたいとか言っといて……えぇと……と、とりあえず!シオンと俺は恋人ではない!以上!」
「は…ぁ……あ、あの……?」
「というだけではわからないよね……この世界では全く血の繋がりはないけれど……この国に産まれる前……俺と詩音は、双子の兄妹だったんだ……」
この世界で言う『医局』に当たる『病院』という組織の中で医局長よりもはるかに財産と権威のある家庭に産まれたこと。
あまり夫婦仲の良くなかった両親と、歳の離れた兄がふたりいる家庭であったこと。
シオンが実の兄に二度も穢され、その際に止めに入った凛音が絞め殺され、また詩音も惨殺されたこと。
この世界でも珍しいピンクブロンドの髪を持って生まれ変わったシオン──シーナを守るため、実父であるオイン子爵の弟はシーナの髪を染め、『画家の息子』としてディーファン家に連れてきたこと。
その時に見た幼く可愛らしい令嬢に、前世の自分たちが楽しんでいた『ゲーム』という遊びと、それに付随する小説の挿絵と同じ顔を見出し、まずシーナが『詩音』であることを思い出したこと。
現在の国王であるリオンの父の知人であるという理由で宮廷画家の扱いで二人が登城した際、シーナが同い年の王太子に自分のデッサンを見せようと持ってきたのが刺激となり、リオンもまた『凛音』という過去を思い出したこと。
「……まだまだ話したいことがある。だけど……もう、お腹いっぱい、だよね?」
「え……?あ、あの……い、今のお話しでお腹は膨れませんが……あの、はい……理解が……追いつきません……」
「だよねー」
前世の世界では通じた「お腹いっぱい」もやはり通じはしなかったが、それでもルエナは理性を失わずに耳を傾けてくれた。
それだけでも、あの『薬物混入茶』の影響はだいぶ抜けているのがわかる。
「まぁ……アルベールも理解するのに数年かかったんだから、今すぐ理解してとは言わないよ」
「お…お兄様、も……まさか、その『てんせいしゃ』という方なのですか?」
「え?ああ、ううん、いやいや違うよ?アルベールはルエナ嬢のお兄さんで、間違いなくこの世界の人!前世なんて欠片も覚えていないし、普通はそうだから!」
「は…はぁ……?」
「これは前世での、俺たちの生きていた世界での考え方のひとつでね?『魂は輪廻転生を経て様々な経験を積み、末に解脱する』というものがあるんだ」
「げだつ……」
さらに不可解な知識を披露されて、ルエナは困惑の表情を浮かべる。
「解脱とは仏教の教えで……」
「……たぶん、信じられない…と、思われる、と思う……けど、まずは、聞いてほしい……」
ひと言ずつ区切りながらリオンが口火を切ると、ルエナはまだ黙ったまま頷いた。
「まず、ひとつだけハッキリさせておきたいんだが……シーナ、嬢……いや、シーナ?う~ん……シオンと呼ばせてほしいんだけど」
「え?」
「うん……まずはそこからなんだけど……ああ、ハッキリさせたいとか言っといて……えぇと……と、とりあえず!シオンと俺は恋人ではない!以上!」
「は…ぁ……あ、あの……?」
「というだけではわからないよね……この世界では全く血の繋がりはないけれど……この国に産まれる前……俺と詩音は、双子の兄妹だったんだ……」
この世界で言う『医局』に当たる『病院』という組織の中で医局長よりもはるかに財産と権威のある家庭に産まれたこと。
あまり夫婦仲の良くなかった両親と、歳の離れた兄がふたりいる家庭であったこと。
シオンが実の兄に二度も穢され、その際に止めに入った凛音が絞め殺され、また詩音も惨殺されたこと。
この世界でも珍しいピンクブロンドの髪を持って生まれ変わったシオン──シーナを守るため、実父であるオイン子爵の弟はシーナの髪を染め、『画家の息子』としてディーファン家に連れてきたこと。
その時に見た幼く可愛らしい令嬢に、前世の自分たちが楽しんでいた『ゲーム』という遊びと、それに付随する小説の挿絵と同じ顔を見出し、まずシーナが『詩音』であることを思い出したこと。
現在の国王であるリオンの父の知人であるという理由で宮廷画家の扱いで二人が登城した際、シーナが同い年の王太子に自分のデッサンを見せようと持ってきたのが刺激となり、リオンもまた『凛音』という過去を思い出したこと。
「……まだまだ話したいことがある。だけど……もう、お腹いっぱい、だよね?」
「え……?あ、あの……い、今のお話しでお腹は膨れませんが……あの、はい……理解が……追いつきません……」
「だよねー」
前世の世界では通じた「お腹いっぱい」もやはり通じはしなかったが、それでもルエナは理性を失わずに耳を傾けてくれた。
それだけでも、あの『薬物混入茶』の影響はだいぶ抜けているのがわかる。
「まぁ……アルベールも理解するのに数年かかったんだから、今すぐ理解してとは言わないよ」
「お…お兄様、も……まさか、その『てんせいしゃ』という方なのですか?」
「え?ああ、ううん、いやいや違うよ?アルベールはルエナ嬢のお兄さんで、間違いなくこの世界の人!前世なんて欠片も覚えていないし、普通はそうだから!」
「は…はぁ……?」
「これは前世での、俺たちの生きていた世界での考え方のひとつでね?『魂は輪廻転生を経て様々な経験を積み、末に解脱する』というものがあるんだ」
「げだつ……」
さらに不可解な知識を披露されて、ルエナは困惑の表情を浮かべる。
「解脱とは仏教の教えで……」
3
お気に入りに追加
84
あなたにおすすめの小説

【完結】望んだのは、私ではなくあなたです
灰銀猫
恋愛
婚約者が中々決まらなかったジゼルは父親らに地味な者同士ちょうどいいと言われ、同じ境遇のフィルマンと学園入学前に婚約した。
それから3年。成長期を経たフィルマンは背が伸びて好青年に育ち人気者になり、順調だと思えた二人の関係が変わってしまった。フィルマンに思う相手が出来たのだ。
その令嬢は三年前に伯爵家に引き取られた庶子で、物怖じしない可憐な姿は多くの令息を虜にした。その後令嬢は第二王子と恋仲になり、王子は婚約者に解消を願い出て、二人は真実の愛と持て囃される。
この二人の騒動は政略で婚約を結んだ者たちに大きな動揺を与えた。多感な時期もあって婚約を考え直したいと思う者が続出したのだ。
フィルマンもまた一人になって考えたいと言い出し、婚約の解消を望んでいるのだと思ったジゼルは白紙を提案。フィルマンはそれに二もなく同意して二人の関係は呆気なく終わりを告げた。
それから2年。ジゼルは結婚を諦め、第三王子妃付きの文官となっていた。そんな中、仕事で隣国に行っていたフィルマンが帰って来て、復縁を申し出るが……
ご都合主義の創作物ですので、広いお心でお読みください。
他サイトでも掲載しています。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。


婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる