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憤激
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しかし今回医局室に運び込まれたのは主人公のシーナではなく、攻略キャラのひとりであるイストフだ。
その違いが一体どんな結果を生むのか──
「まったくもうさぁ!ムサイ男なんか見たくねぇっての!せめて美少年運び込んで来いよぉ!!」
ゲームボイスでは絶対聞かれないような台詞を吐きながら登場したのは、やはりゲームどおりのイケメンっぷりとイケボイスを持った性格はド悪そうな医師で──
「えっ!!何だぁ!いるじゃん、美少女!!良い子だからおいで~♪お兄さんが頭の先からつま先まで、全部の穴という穴までじっくり診察してあげるよぉ~~……」
『残念イケメン』という言葉があるが、シーナにとっては『超絶断固拒否事故物件イケメン』である。
そう言葉に出したわけではないが、ふんわり可愛らしいヒロイン顔を歪め、嫌悪と憎悪と蔑みを込めた目付きで睨みつけながらアルベールの服を掴もうとすると、サッとその腕が引っ張られてシーナは大きな背中の後ろに隠された。
「うぇっ…ディーファン公爵の跡取りかよ……お前のような朴念仁に、そんな極上のゴチソ……いや、ご令嬢は不釣り合いだろう?黙っておにーさんに寄こしなさいよ」
「お前のような軽佻浮薄な兄は存在したことがないし、シーナ嬢はゴチソウでも、お前の獲物でもない。リオン王太子殿下の命により彼女の護衛を務めている以上、たかが一介の医師の下品な要望に応える必要も義務も義理もない」
「なんだとぉ……」
「むしろこれ以上シーナ嬢に向かって下賤な言葉を吐くのなら、その舌ごと顔半分を切り落とす!」
「なっ……こ、ここでそんなことをしたら、王太子がお前を裁くだろうがっ!」
「……そうか?『いっそのこと戯言をこれ以上吐かせないために、この場での斬首』を許可されると思うがな?この方は、王太子殿下にとって大切なご友人だ」
「なぁにが『大切なご友人』だ……何だ?じゃあ、その娘は王太子の愛人か?婚姻もまだだってのに、下半身がお盛んなことでふぇっ!!!」
それはそれは見事な回し蹴りが、その残念イケメンのガラ空きの胴体に決まった。
アルベールの背後から回転をかけて死角から蹴りを放った後、その勢いでシーナはアルベールの腰に佩いた剣を抜いて、思いがけない攻撃に痛みはそれほどなくても後ろに倒れ込んだ医師が持ち上げた綺麗な顎の下にピタリと切っ先を向ける。
「取り消せ」
ゾッとするほど冷たい声が、怒りのあまり無表情になった少女の口から零れ落ちた。
「『愛人』と言ったことを取り消せ。王太子に対する不遜を詫びれ。さもなくば、お前の喉仏を串刺しにしてやる」
その違いが一体どんな結果を生むのか──
「まったくもうさぁ!ムサイ男なんか見たくねぇっての!せめて美少年運び込んで来いよぉ!!」
ゲームボイスでは絶対聞かれないような台詞を吐きながら登場したのは、やはりゲームどおりのイケメンっぷりとイケボイスを持った性格はド悪そうな医師で──
「えっ!!何だぁ!いるじゃん、美少女!!良い子だからおいで~♪お兄さんが頭の先からつま先まで、全部の穴という穴までじっくり診察してあげるよぉ~~……」
『残念イケメン』という言葉があるが、シーナにとっては『超絶断固拒否事故物件イケメン』である。
そう言葉に出したわけではないが、ふんわり可愛らしいヒロイン顔を歪め、嫌悪と憎悪と蔑みを込めた目付きで睨みつけながらアルベールの服を掴もうとすると、サッとその腕が引っ張られてシーナは大きな背中の後ろに隠された。
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「なんだとぉ……」
「むしろこれ以上シーナ嬢に向かって下賤な言葉を吐くのなら、その舌ごと顔半分を切り落とす!」
「なっ……こ、ここでそんなことをしたら、王太子がお前を裁くだろうがっ!」
「……そうか?『いっそのこと戯言をこれ以上吐かせないために、この場での斬首』を許可されると思うがな?この方は、王太子殿下にとって大切なご友人だ」
「なぁにが『大切なご友人』だ……何だ?じゃあ、その娘は王太子の愛人か?婚姻もまだだってのに、下半身がお盛んなことでふぇっ!!!」
それはそれは見事な回し蹴りが、その残念イケメンのガラ空きの胴体に決まった。
アルベールの背後から回転をかけて死角から蹴りを放った後、その勢いでシーナはアルベールの腰に佩いた剣を抜いて、思いがけない攻撃に痛みはそれほどなくても後ろに倒れ込んだ医師が持ち上げた綺麗な顎の下にピタリと切っ先を向ける。
「取り消せ」
ゾッとするほど冷たい声が、怒りのあまり無表情になった少女の口から零れ落ちた。
「『愛人』と言ったことを取り消せ。王太子に対する不遜を詫びれ。さもなくば、お前の喉仏を串刺しにしてやる」
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