婚約者とヒロインが悪役令嬢を推しにした結果、別の令嬢に悪役フラグが立っちゃってごめん!

行枝ローザ

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偏考・2

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これもまたゲーム修正か──少なくともゲームではヒロインであるシーナが王太子かその側近の誰か、もしくは全員と恋愛イベント達成の末、それぞれの『幸せな未来』をエピローグストーリーとして見れたが、その途中でひっそりと王宮で王太子の補佐をしていたシルエットは消えてしまっていた。
それが表面では語られなかった『王宮がわ側近の排除』だったのかもしれない。
「繰り上がり……」
「そう……確か……ベレフォンが……ルエナ嬢が王太子妃となることはないのだから……みんなでシーナを……シーナ嬢を、共有できるんだから……王太子の側で……子爵令嬢……だから……王妃になることはない……だから……我々側近五人で、彼女を……」
ゾッとしたのはシーナだけではない。
アルベールもまた、譫言のようにイストフが虚ろな目をぐりっと瞼の裏に隠して白目を剥きだすのを、嫌悪感を滲ませた目付きで眺める。
「……誰かが、ベレフォンにそう言った……」
ガクンッとイストフが項垂れ、膝から崩れ折れたところを表情は変えずにアルベールが支えた。
「……これもまた、誰かの暗示か」
「彼らが口にした物とか、煙……何か麻薬的なモノか……とりあえず、イストフが目を覚ましてから、ね……」
ようやく手に入れられる『証拠のようなもの』
それは衛兵たちに連れられていった学園内側近たちからも得られる情報かもしれないが、口裏を絶対合わせられない立場になったイストフ・シュラー・エビフェールクス辺境公爵令息という手札は、絶対に手放してはいけない。


手近でウロウロしていた人の良さそうな男爵家の長男と次男の手を借りて、イストフは貴賓室にほど近い医務室に寝かされた。
どんなに高位貴族であってもただの令息令嬢では簡単に出入りできないその場所は、特殊な鍵でしか開かず、存在は知っていても一般生徒は絶対に入れない場所である。
今回限りかもしれないその場所は華美ではなくとも上質な物ばかりで、まあまあ裕福なために見る目を持っていた男爵令息たちは、実家とは段違いのさりげない豪華さにおっかなびっくりで歩を進めた。
そういう意味でいえばシーナこそその男爵家よりはるかに貧しい暮らしをしていたのだから恐れ入ってもおかしくないのだが、前世は一応大金持ちと言ってもおかしくない生まれである記憶と今世では王太子に生まれ付いた莉音と再会したおかげで、常ではないにしても王国内で『最高級』という物には気軽に触れられているため、怖がるより後を付けてくる者を気にする余裕すらある。
「……あなた、だあれ?」
にっこり笑って呼び止めたのは、柱に隠れたつもりだったらしい貴族令嬢の侍女だった。


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