婚約者とヒロインが悪役令嬢を推しにした結果、別の令嬢に悪役フラグが立っちゃってごめん!

行枝ローザ

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偏考・1

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いつもは静かな学園内に武装した衛兵たちがいつもより多く配置され、特に空いている教室を中心に『安全確認』が行われた。
詳細は語られなかったものの『人の口に戸が建てられない』のは、古今東西異世界関係ないのかもしれない。
『誰』ということまでは特定されていないものの、『何者か』を探しているのはいつの間にか知れ渡っており、将来的に王宮関連施設への配属を願って、士官希望の低位貴族令息が衛兵たちの役に立とうと纏わりついている。
「……まあ、根性があることは確かだな」
やんわりとだったりやや強めにだったりと対応する衛兵によって様々ではあったが、未熟な手伝い候補を退けているのを見て、アルベールが双方に感嘆の意を表する。
「公爵家後継者であれば、将来的に路頭に迷うことなどあり得ないでしょう。しかし我々次男以下であれば嫡男が何らかの理由で廃されなければ、己の足で立てることを証明する必要があります。そうでなければよほど裕福な家でもない限り、遊び暮らすというには程遠い肩身の狭い思いをしますから」
「そう…だな、確かに。エビフェールクス辺境侯令息も次男だったな」
「どうかイストフと。俺の場合は単純に故郷に帰りたくないから、王都で士官の道を得ようとしていたまで。王太子殿下と同じ学年に在籍し、学園内側近として選出されなければ、彼らと同じような行動をしていたでしょうね」
傍から見れば仲間を見捨てた寝返り組だが、イストフ・シュラー・エビフェールクスはさっぱりとした顔でアルベールの後ろから発言した。
「『辺境侯爵の息子』という贔屓目がなかったとは言いませんが、自分の剣の腕は学園内でも上位と自負しています。それ故に王太子殿下の学園内側近に選ばれた……ゆくゆくは卒業後にそのまま王宮側近のひとりになれるはずだと思っていました」
「それについては……」
「わかっています。学問成績での上位、運動成績での上位、人格、人望…我々は『選ばれた人間』ではなく、『選ばれる資格を得た側近候補者』だということは……しかし何故か、我々五人は『卒業後はディーファン公爵令息を排除し、そのまま王宮側近として王太子殿下と共に王宮に登る』と思い込んでいた……」
「思い込んでいた?」
「ええ……そうだ……どうしてだろう?こうやって冷静になれば、今はまだ『試験の途中』とわかるのに。少なくとも我々が繰り上がりで殿下の側近になれるなど……」
イストフが腑に落ちない表情で呟くと、シーナが軽く目を瞠った。


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