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仮病?
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だからこそ貴賓室にノックもそこそこに飛び込んだベレフォン・ジュスト・ダンビューラ伯爵令息は、目の前の光景に理解が及ばず、ルエナ嬢が恥ずかし気にリオン王太子から離れようとしたところを逆に抱き締められる姿を直視してしまった。
何がどうして、あの気に食わない冷徹で悪どい公爵令嬢が王太子の腕の中に閉じ込められているのか──むしろ逃れようともがいているようにも見えたが、リオンは不躾に睨み付けるベレフォンから泣き顔を隠すかのように囲い込んでいる。
「なっ、何をしにきた?」
やや焦り気味とはいえ、なるべく王太子としての仮面を外さずに対応した──と思っているが、どうだろうか。
そんなふうに思いながらチラリとベレフォンを窺ったが、まさかふたりが抱擁を交わしているとは思わなかったようで、呆然とした顔をしている。
「な…何をっ………!無礼なっ!!」
だが次の瞬間には思考を立て直したらしく、リオンたちに向かって突進してくると、勢いよくリオンからルエナを離すべくその細い肩を強く叩いて引き離した。
「ルエナッ!!」
張り飛ばされた少女の弱った身体は軽く浮き、そのままテーブルに激突してから床に倒れ込んだ。
ピクリとも動かなくなった銀髪で覆われた少女を見下ろすベレフォンは勝ち誇った顔をしたが、自分がやったことを後悔するだけの暇もなく、丁寧にルエナ嬢を抱き上げたリオン王太子に睨みつけられて怯む。
「……お前はいったい、この病み上がりのか弱い女性に対して何をしたのか、わかっているのか?」
「はっ…ヒッ……?!」
ソファの上に横たえられたルエナ嬢の顔から、リオンが丁寧に梳くように髪を除けて怪我がないかと確認したが、その覗き込む視線にまったく反応しない人形のようなその顔は青褪めたままでとても健康的ではないとわかるほどやつれているのがベレフォンからも見てわかる。
「いっ…いぇ……て、てっき…り……その……ディーファン公爵…令嬢が、その、あの……け、仮病を……」
「仮病?」
「で、殿下のっ…き、気を引く…ために……」
「なるほど?お前はルエナ嬢のこの様子を見て、彼女が仮病を使ったとわかるのか?私がルエナ嬢に触れた時、驚くほど軽く細くなってしまっていた。突き飛ばしたお前の手には、彼女の重みがあったか?」
重み?
呆然と自分の手を見下ろすベルフォンは、王太子の言う意味を反芻し、記憶を手繰り──抵抗どころか、まるで紙人形でも押し倒したように何の手応えもなかったことに気付き、ルエナ嬢と変わらないほどに顔色を悪くした。
何がどうして、あの気に食わない冷徹で悪どい公爵令嬢が王太子の腕の中に閉じ込められているのか──むしろ逃れようともがいているようにも見えたが、リオンは不躾に睨み付けるベレフォンから泣き顔を隠すかのように囲い込んでいる。
「なっ、何をしにきた?」
やや焦り気味とはいえ、なるべく王太子としての仮面を外さずに対応した──と思っているが、どうだろうか。
そんなふうに思いながらチラリとベレフォンを窺ったが、まさかふたりが抱擁を交わしているとは思わなかったようで、呆然とした顔をしている。
「な…何をっ………!無礼なっ!!」
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「ルエナッ!!」
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「仮病?」
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「なるほど?お前はルエナ嬢のこの様子を見て、彼女が仮病を使ったとわかるのか?私がルエナ嬢に触れた時、驚くほど軽く細くなってしまっていた。突き飛ばしたお前の手には、彼女の重みがあったか?」
重み?
呆然と自分の手を見下ろすベルフォンは、王太子の言う意味を反芻し、記憶を手繰り──抵抗どころか、まるで紙人形でも押し倒したように何の手応えもなかったことに気付き、ルエナ嬢と変わらないほどに顔色を悪くした。
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