婚約者とヒロインが悪役令嬢を推しにした結果、別の令嬢に悪役フラグが立っちゃってごめん!

行枝ローザ

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絵画

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確かに──イストフは領地の屋敷に飾ってある家族の肖像画の中でも、いつの間に描かれたのかわからないとても自然な物が二~三点ある。
「子供はじっと見られることに恐怖を抱くことがあるからね。見合いや正装姿を記録として残す場合はポーズを決めてもらわないといけないけど、やっぱり子供は自然な笑顔を残したいもんね。ただ……そこまで記憶力や想像力を使ったり、スケッチして後から仕上げるっていうのができる画家の数が少なすぎるのよ」
「ああ……確かに、父上がお祖父様に文句を言っていたな……『たかだか子供の肖像画を描いてもらうのに、隣国から高い金を出して画家を呼ぶなど、単なる無駄遣いだ』と。俺と双子の妹、そして母が祖父の屋敷で遊んでいる場面だったが……」
「へぇ!隣国から。さっすが辺境領ね。一度見てみたいわ、その絵を」
目をキラキラと輝かせたシーナがふわふわとした髪を揺らして、思い出を語るイストフにグッと迫った。
ついさっき捨て去ったとはいえ感情がすぐにクリーンになるわけではなく、イストフはついグラリと理性を揺さぶられる。
それを見たアルベールがムッとするが、興奮した表情のままシーナはそちらに勢いよく顔を向けて「行きたーい!」と叫ぶ──まるで、子犬が遊びのために棒を投げてもらうのを待つように。
「……今回の件が収まり、ルエナ嬢も我々の…いや、少なくとも俺の詫びを受け入れてもらえるようならば、祖父の住まう屋敷へ招待させていただきたい。いかがでしょうか?アルベール様」
「……何故、俺に許可を?」
「シーナ嬢だけでなく……ぜひ、アルベール様とルエナ嬢もご一緒に。父と兄に会ってもらいたいというつもりはないし、特にエビフェールクス辺境侯爵家と懇意にしてもらいたいという下心はありません。逆に父に領邸に招く許可を請えば、諸手を挙げて歓迎してルエナ嬢を監禁するでしょうね」
「かっ……」
シーナがズザッと一気に引き下がり、アルベールの後ろに隠れる。
「何なにナニ?何なのっ?!拉致監禁幼女暴行とか……エビフェールクス辺境侯爵家って変態一族?」
「えっ……いやいや!おかしいのは父と兄だけだから!俺は違うから!!」
ヒィ~とわざとらしく怯えるシーナに対してイストフは慌てて拒否するが、おそらく、きっと、からかわれていることに気が付いていない。


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