婚約者とヒロインが悪役令嬢を推しにした結果、別の令嬢に悪役フラグが立っちゃってごめん!

行枝ローザ

文字の大きさ
上 下
101 / 267

忌避

しおりを挟む
考えてみればおかしい話だ。
現実のルエナとシーナではクラスも違うし、ゲームの中では選択制の授業の話などまったくなかったはずである。
あの場面では確かダンスの授業で王太子や他の攻略者の誰の手を取るかで好感度が変わるのだが、その相手が王太子だった場合には、「ダンスの相手にふさわしくない」とか言いがかりをつけてきたくせに、シーナを庇う王太子の態度にルエナと取り巻きたちがバタバタと倒れていく寸劇には思わず笑ってしまった。
「でも今はダンスの授業でもないし、そもそもアタシはそっちは取ってないし」
「そうなのか?しかし子爵令嬢といえど、夜会などに参加すればダンスの申し込みなどあったのではないのか?」
「え?ああ……伯父……じゃなくて、お父様がアタシを養女にしたことは周知していたけど、ほら……オイン子爵夫人はいないでしょ?」
「え……あ……そうか……オイン子爵現当主は独身か」
「ええ。それにアタシの父さんもね。ふたりとも女っ気ないんだから!そしてそんなふたりの婚姻相手を探すべきお祖母様は前当主であるお祖父様と共にどっか遠い保養地に引っ込んで、そのお祖父様は平民どころか貧民の娘と勝手に結婚したことに未だ激怒して『たったひとりの孫娘だろうが関わり合いになるつもりはない』って絶賛拒絶中。なので、アタシは社交界デビューも果たしていないはみ出し令嬢なので、こうやって学園には通えても社交界的お誘いは今のところひとっつもありませーん」
「なっ……」
本来なら五歳でプレデビューというべき昼の交流会に連れて行かれて王国の貴族の子供たちと顔見知りになる。
それから十歳から十二歳で女の子は母親と共に自分が所属すべき貴族の家に共に呼ばれ、そこで婚約者候補と出会えるように縁を繋ぐ。
そして十五歳になって初めて夜に開かれる大舞踏会に参加して、ようやく社交界デビューをした令嬢だとして、正式に求婚してよい女性だと認められるのだ。
しかしシーナが子爵令嬢になったのは学園に入れる年齢の直前で、また学園に入るにふさわしい学力を得るために勉強漬けになるということを言い訳に、特にダンスなど令嬢らしいことはほぼ避けてきたのである。
「だから踊れない……と思う。たぶん、アタシとリオ……殿下の知っているダンスは、きっと皆にはすごく変に見られると思うから、絶対に見せないけどね。社交ダンスは……スクエアステップぐらいならできるだろうけどなぁ……」
今や室内にいる令嬢はアルベールを憧れの目で見るよりも、シーナを恐れるように遠巻きにして、意味不明な言葉はたったひとり側にいるアルベールしか聞いていなかった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】望んだのは、私ではなくあなたです

灰銀猫
恋愛
婚約者が中々決まらなかったジゼルは父親らに地味な者同士ちょうどいいと言われ、同じ境遇のフィルマンと学園入学前に婚約した。 それから3年。成長期を経たフィルマンは背が伸びて好青年に育ち人気者になり、順調だと思えた二人の関係が変わってしまった。フィルマンに思う相手が出来たのだ。 その令嬢は三年前に伯爵家に引き取られた庶子で、物怖じしない可憐な姿は多くの令息を虜にした。その後令嬢は第二王子と恋仲になり、王子は婚約者に解消を願い出て、二人は真実の愛と持て囃される。 この二人の騒動は政略で婚約を結んだ者たちに大きな動揺を与えた。多感な時期もあって婚約を考え直したいと思う者が続出したのだ。 フィルマンもまた一人になって考えたいと言い出し、婚約の解消を望んでいるのだと思ったジゼルは白紙を提案。フィルマンはそれに二もなく同意して二人の関係は呆気なく終わりを告げた。 それから2年。ジゼルは結婚を諦め、第三王子妃付きの文官となっていた。そんな中、仕事で隣国に行っていたフィルマンが帰って来て、復縁を申し出るが…… ご都合主義の創作物ですので、広いお心でお読みください。 他サイトでも掲載しています。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

処理中です...