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難問
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それでもやはり歳が開き過ぎである。
「まあ、でも王家にあるまじき仲睦まじさで育児を楽しんでいるよ、我が両親は」
「はは。いいじゃないの、夫婦仲がいいっていうのは」
「……ああ」
双子時代の両親の仲は悪くはなかったが、良くもなかった。
父は金があったし、母はその金を自由にすることで、互いが『自由』だったのだから。
両親が揃っていても甘い雰囲気はなく、むしろ次男が末子であり唯一の娘である詩音をレイプするというあってはならない出来事で、さらにその仲は冷え切っていたように思う。
だからこそ記憶が無くとも実父が母を思って貧民街の家を守り続けるのを見てきたシーナと、歳の離れた兄弟をそれぞれ慈しんで育ててくれる国王夫妻の子供であるリオンは、それぞれの親を思い心が温かくなった。
それはともかく、今後の作戦が必要である。
ゲームでは『シーナ嬢を貶める悪役令嬢はルエナ公爵令嬢』であるが、派生派では逆にシーナが悪役だ。
だが現実世界となった『今』ではそのどちらも『悪役』ではない。
なのにルエナは婚約破棄の危機に──リオンやシーナから見れば絶対ならないと断言できるのだが──シーナはその『危険人物』の側にいて、これ以上危害を加えようがないのに悪い噂が消えていないのは、別の黒幕を引っ張り出せていないせいである。
「はぁ~~~……めんどうだなぁ。権力がある人間って上手いぐあいに咬ませやら仲介人を挟んじゃうから、直接断罪しない限り逃げられちゃって、今度は王太子妃暗殺未遂だとか王妃暗殺未遂に繋がりかねない……」
「あ~~~~!やっぱりそう?!そう思う?!
さすがに王家の威信にかけてルエナが害されることは防ぐだろうが、物語修正で命の危機に晒されることもなくはないかもしれない。
それはシーナとて変わりはないのかもしれないが、リオンとふたりで覚えているところを刷り合わせれば、避けられないこともないはずだ。
そしてあまり取りたくはない手段のひとつに『シーナがルエナと共に学園内で行動する』という作戦もないわけではない。
「でも炙り出しに確実とも言える方法……ではあるんだよなぁ……」
「少なくとも『ルエナ様が学園にいる』という事実がいるのよね……」
そう言ってリオンとシーナはそれぞれ溜め息をつく。
その場合は表面的にでもシーナと仲良くしてもらわねばならないが、薬の影響や洗脳状態が抜けた今のルエナであっても協力してくれるようには思えない。
何と言って共に学園内で行動してもらうことを了承してもらうか──それは馬車の中の誰も思いつくことはなかった。
「まあ、でも王家にあるまじき仲睦まじさで育児を楽しんでいるよ、我が両親は」
「はは。いいじゃないの、夫婦仲がいいっていうのは」
「……ああ」
双子時代の両親の仲は悪くはなかったが、良くもなかった。
父は金があったし、母はその金を自由にすることで、互いが『自由』だったのだから。
両親が揃っていても甘い雰囲気はなく、むしろ次男が末子であり唯一の娘である詩音をレイプするというあってはならない出来事で、さらにその仲は冷え切っていたように思う。
だからこそ記憶が無くとも実父が母を思って貧民街の家を守り続けるのを見てきたシーナと、歳の離れた兄弟をそれぞれ慈しんで育ててくれる国王夫妻の子供であるリオンは、それぞれの親を思い心が温かくなった。
それはともかく、今後の作戦が必要である。
ゲームでは『シーナ嬢を貶める悪役令嬢はルエナ公爵令嬢』であるが、派生派では逆にシーナが悪役だ。
だが現実世界となった『今』ではそのどちらも『悪役』ではない。
なのにルエナは婚約破棄の危機に──リオンやシーナから見れば絶対ならないと断言できるのだが──シーナはその『危険人物』の側にいて、これ以上危害を加えようがないのに悪い噂が消えていないのは、別の黒幕を引っ張り出せていないせいである。
「はぁ~~~……めんどうだなぁ。権力がある人間って上手いぐあいに咬ませやら仲介人を挟んじゃうから、直接断罪しない限り逃げられちゃって、今度は王太子妃暗殺未遂だとか王妃暗殺未遂に繋がりかねない……」
「あ~~~~!やっぱりそう?!そう思う?!
さすがに王家の威信にかけてルエナが害されることは防ぐだろうが、物語修正で命の危機に晒されることもなくはないかもしれない。
それはシーナとて変わりはないのかもしれないが、リオンとふたりで覚えているところを刷り合わせれば、避けられないこともないはずだ。
そしてあまり取りたくはない手段のひとつに『シーナがルエナと共に学園内で行動する』という作戦もないわけではない。
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「少なくとも『ルエナ様が学園にいる』という事実がいるのよね……」
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その場合は表面的にでもシーナと仲良くしてもらわねばならないが、薬の影響や洗脳状態が抜けた今のルエナであっても協力してくれるようには思えない。
何と言って共に学園内で行動してもらうことを了承してもらうか──それは馬車の中の誰も思いつくことはなかった。
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