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嫌味
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しかもディーファン公爵家の庭園と夫人の育てる植物たちは観賞用でも薬用でも超一品と言われ、一介の子爵令嬢が伝手もなしに、簡単に手に入れられる代物ではない。
しかしその出所を息子であるアルベールが証言しているということは──
「私が母とシーナ嬢の指導の下、母の庭から病に伏している妹のために摘み、そのまま調理過程にも同席しました。これには我が家の厨房管理者しかいないため、他者の証言がありませんが……」
「確か夫人は王宮の薬草園にも助言をしていたような?」
「ええ。少量であれば薬になる物もあるため、自分の知識も深めたいと宮廷薬師に請われて……確かクリシュア伯爵閣下の弟君が責任者であられるはずでは……?」
リオン王太子とアルベールの問い詰めで、シーナ嬢が毒物を手に入れるとすればディーファン家からという可能性は潰され、逆にシーナに執着するジェラウスの方に疑いがかかるように誘導されていく。
そのことに気が付いたのかどうかジェラウスは俯き、逆に他の側近たちはその墓穴に勝手にハマっていく同級生に対して、ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべた。
「だっからさぁ~?やっぱりそんなこと、あるわけないでしょぉ?シーナねえさまはとっても優しいもん!たとえ敵でも、病人を労わるような素敵な女性だもん!ねぇ~?」
さりげなくルエナを貶めながら、まるでウサギのようにピョンッという擬音がつきそうな動きでシーナに近付いてきたのは、学園での側近たちの中で2学年下のルイフェン・クウェンティ・ダンビューラ伯爵令息である。
可愛らしい見た目はシーナに似ていなくもなく、しかし許可もなく『おねーさま』と親しく呼んで距離を詰めてきた。
前世でのゲームでは詩音も凛音も積極的に攻略したいとは思わないキャラクターだったが、キャラクターランキングでは弟キャラでかなり高位にあった攻略対象である。
しかしリアルキャラとして会ってみても、やはりシーナにとってはあまり近付きたくない男の子である。
距離感の問題だけでなくほのかなサイコパス的雰囲気が気に入らないし、何より自分の見た目で味方を増やしつつ、何もしていないルエナを貶めるように動いているのが気持ち悪い。
しかも本当にルエナを王太子の婚約者という座から引き下ろした上に断罪しようとしている人間とは結託しているわけでもなく、物理的に制裁を加えるような言動もたびたびするため、リオンも簡単に野放しにできないという事情がある人間だ。
彼の目的はオイン子爵家への婿入りという目的もあるが、純粋にシーナを手に入れるためにはルエナを排除しなければならないと本気で思い込んでいるため、ディーファン公爵跡取りであるアルベールを睨みつける目も遠慮がない。
「むしろさぁ?シーナねえさまを傷つけようと?ルエナ様が仮病って、一家ぐるみで嘘ついてるってことじゃないのぉ?ねぇ~?アルベール様ぁ?」
その態度には貴族社会では最高位である公爵家への畏怖など一切なく、むしろシーナ嬢を無理やりディーファン公爵家に留めて手籠めにしようとしていると決めつけ、自分をその悪の手から救う『正義の騎士』と自認している。
もっともそれはルイフェン自身の『正義』であり、ルエナ嬢に対して好き過ぎるほどの感情を寄せているシーナ自身に寄りそったものでは、けっしてない。
しかしその出所を息子であるアルベールが証言しているということは──
「私が母とシーナ嬢の指導の下、母の庭から病に伏している妹のために摘み、そのまま調理過程にも同席しました。これには我が家の厨房管理者しかいないため、他者の証言がありませんが……」
「確か夫人は王宮の薬草園にも助言をしていたような?」
「ええ。少量であれば薬になる物もあるため、自分の知識も深めたいと宮廷薬師に請われて……確かクリシュア伯爵閣下の弟君が責任者であられるはずでは……?」
リオン王太子とアルベールの問い詰めで、シーナ嬢が毒物を手に入れるとすればディーファン家からという可能性は潰され、逆にシーナに執着するジェラウスの方に疑いがかかるように誘導されていく。
そのことに気が付いたのかどうかジェラウスは俯き、逆に他の側近たちはその墓穴に勝手にハマっていく同級生に対して、ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべた。
「だっからさぁ~?やっぱりそんなこと、あるわけないでしょぉ?シーナねえさまはとっても優しいもん!たとえ敵でも、病人を労わるような素敵な女性だもん!ねぇ~?」
さりげなくルエナを貶めながら、まるでウサギのようにピョンッという擬音がつきそうな動きでシーナに近付いてきたのは、学園での側近たちの中で2学年下のルイフェン・クウェンティ・ダンビューラ伯爵令息である。
可愛らしい見た目はシーナに似ていなくもなく、しかし許可もなく『おねーさま』と親しく呼んで距離を詰めてきた。
前世でのゲームでは詩音も凛音も積極的に攻略したいとは思わないキャラクターだったが、キャラクターランキングでは弟キャラでかなり高位にあった攻略対象である。
しかしリアルキャラとして会ってみても、やはりシーナにとってはあまり近付きたくない男の子である。
距離感の問題だけでなくほのかなサイコパス的雰囲気が気に入らないし、何より自分の見た目で味方を増やしつつ、何もしていないルエナを貶めるように動いているのが気持ち悪い。
しかも本当にルエナを王太子の婚約者という座から引き下ろした上に断罪しようとしている人間とは結託しているわけでもなく、物理的に制裁を加えるような言動もたびたびするため、リオンも簡単に野放しにできないという事情がある人間だ。
彼の目的はオイン子爵家への婿入りという目的もあるが、純粋にシーナを手に入れるためにはルエナを排除しなければならないと本気で思い込んでいるため、ディーファン公爵跡取りであるアルベールを睨みつける目も遠慮がない。
「むしろさぁ?シーナねえさまを傷つけようと?ルエナ様が仮病って、一家ぐるみで嘘ついてるってことじゃないのぉ?ねぇ~?アルベール様ぁ?」
その態度には貴族社会では最高位である公爵家への畏怖など一切なく、むしろシーナ嬢を無理やりディーファン公爵家に留めて手籠めにしようとしていると決めつけ、自分をその悪の手から救う『正義の騎士』と自認している。
もっともそれはルイフェン自身の『正義』であり、ルエナ嬢に対して好き過ぎるほどの感情を寄せているシーナ自身に寄りそったものでは、けっしてない。
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