婚約者とヒロインが悪役令嬢を推しにした結果、別の令嬢に悪役フラグが立っちゃってごめん!

行枝ローザ

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何度も繰り返される『行間』という言葉を、アルベールは考える。
『げーむ』という言葉はよくわからないが、『小説』──要は『物語』であるが少年少女が読む物ではなく、大人が好んで読む物らしい。
女性ならば母親となってもそういった本は子供への読み聞かせとして手に取ることもあろうが、男が読むとは──という思考は幼い頃から『我が主』と決めた人物を思い浮かばせる。
(……あの方は、そういえば幼い頃からなぜか好んで読まれていたような)
一応王宮の図書室は国中の本が収められているが、そこにさらに王太子専用棚が追加されて、内容は冒険譚や童話、寝物語、少年少女向けの物語、創作には溢れているが万人受けはしないような妄想話ばかりの本。
「でもねぇ……やっぱり書き方が未熟なんだよな。もっとこう……こっちの想像力を削ぐほどではないにしても、行間を読むどころか想像しまくらないと理解できないって、おかしくないか?!」
ブツブツとそう言いながらその本を読み終わったリオン殿下は、おもむろに紙とペンを持って来させてアルベールには三日後を楽しみにするようにと笑った。
そうして待った三日後──『行間を読むどころか想像しまくらないと理解できない本』は『適度に情報をつけたされて、単なる影絵から頭の中に風景や人物像が浮かぶワクワクした本』に生まれ変わっていたのである。
「で、殿下……っ」
「シィ……僕がこんなことできるの、内緒にしてね?でないと、歴史書とかを書き換えさせようっていうのが現れるからね?」
いたずらっぽくそういった王太子殿下はその当時ようやく八歳。
もっと小さい頃、うっかり王子教育の歴史の時間に、「ここはきっとこんなことが起こったんじゃないのか。こうだったら歴史はこんなふうに動いて、今とは違う王家がおきたんじゃないか」とうっかり零してしまったところ、その教師が歴史の改変を目論んだという。
「その教師が僕にそれを書いてごらんっていう宿題を出してね」
「えっ、そっ、それって……」
「うん、やっちゃいけないよね~?でもやっぱり書き上げたら嬉しいじゃない?で、やっぱり子供だからさぁ、父上に見せちゃうよね?母上にも自慢するよね?『せんせいがぼくのおはなししたのがすごいからかいてっていわれた!』って見せたよ」
「それって……な、何歳ぐらいで……?」
「ん~?詩音に……シーナに会ったすぐ後……六歳?『あ、僕、こういうことできる』って思い出した後。それからてんやわんやの大騒ぎ~」
今よりずっとリオンとシーナの話していることが理解できなかったが、さらにわからない『てんやわんや』という言葉の意味を探る前に、確かにあの時は大人たちが大変なことになっていたのを思い出す。
幼いリオン王子に歴史を教えていたのは、『改変した後の歴史』では王家に連なるはずだったある没落貴族の末裔息子だったからだ。
正しい歴史・・・・・なら、私が王だったんだぁ~~~!!」
そう言いながら彼は王室付き家庭教師という地位どころか、実家からも勘当されて、王家転覆を狙った犯罪者として炭鉱へと送り込まれてしまった。
その幼い文字で書かれた紙の束はもちろん『宿題の答え』ではなく、丁寧に装丁されて父親の現国王陛下の手で『これはリオン・シュタイン・ダンガフが六歳の際に創作した素晴らしい書である。故に城外への持ち出しを禁ずる』と認められ、さらにその後に別人の手で『もしもシリーズ』とでも名付けたいような架空の歴史の流れが付け足され、完全な作り物として今でも国王の私室に『王の愛読書』という偽の情報を纏わされて本棚にしまわれている。


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