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ロメウス先生とルネがふたりっきりで話をしたいということで、不満顔のデラを引きずり出して、皆でまた畑の世話をした。
逆にチャムシィはやたらとご機嫌で、まだ何も魔法を習っていないというのに、水桶に両手を添えて適当に『水よ!土の中の者を元気にしろ!』などと叫んでいる。
(あれで本当に魔力が注がれてしまったらどうするんだか……)
ヒロトはとりあえず見ているだけで何もしないが。
何せ自分に魔力がないのは元々わかっていたし、それで拗ねるほどおこちゃまでもないし、冒険者になるつもりもない。
だからかもしれないが、魔法や魔術を理解しようという気も、父親の不思議道具再現熱もわからないのだ。
「平和に暮らせる方が、幸せだと思うんだけどなぁ~……」
「僕もそー思う。兄ちゃんはどうしても宿屋を継ぎたくないんだって。僕は好きなんだけど。父ちゃんは『兄ちゃんが兄ちゃんだから、宿を継がないといけない』って」
「うっわ!それで言ったら、俺だって親父の跡を継がなきゃなんないってことだよな?彫金細工だってそんな得意じゃないってのに、おかしな研究まで引き継ぐって絶対無理……」
「え?だって、ヒロトんとこはヒロトだけでしょ?だったらやっぱり跡を継がなきゃ……」
そうだった。
前世と違って『子は親の職業を継ぐ』っていうのはこの世界では当たり前で──でもそう言えば父方の家業について話を聞いたことはないのにヒロトは気が付いた。
何せあの不思議なものが普通にある『フシギファクトリー』には物心つく前から住んでいるが、今まで一度も母方の祖父母や親戚以外と顔を合わせたことはないし、どこにいるかも聞いたことはなかった。
「まあ……それは……どう、かなぁ……?」
遺伝子的な母とは別に、前世の母もこの世界に存在しているらしいが、いつか父が恋愛して新しい継母や異母弟妹ができないとも限らないのだ。
もしかしたらその異母弟妹がヒロトの代わりに、父やルネの相手をしてくれるかもしれない──などと妄想してみるが、まず父が恋愛に現を抜かすという時点で想像がつかない。
そう言う意味ではチャラそうに見えるのに、まったく恋の浮ついた話も聞かないルネの方が大丈夫なんだろうと心配になる。
「まさか……ルネって……ゲイ?」
「ゲイ?ゲイって何?」
「ん?ああ、男が好きな男?」
ポロリと何の気の無しに漏らしたが、相手が幼いグラだったと思い出して、ヒロトはサァッと青くなった。
前世でもそういった性的嗜好に対する偏見があったのに、『子供は親の跡を継ぐ』というのが当たり前のこの世界では、もっとタブー意識が強いものかもしれない。
そんなことに思い至らずに漏らしてしまったが、案の定グラは吐きそうな嫌悪感を見せて、ルネがロメウス先生とふたりっきりでいる家の方を見た。
「あっ!!いや!!違うから!!ルネが…っていうか、そうだってことじゃないから!」
「え……で、でもっ……」
グラはガタガタと震えて、ヒロトからもそぉっと距離を取る。
本当は声に出さずに、頭の中だけで考えていたつもりだったのに──
どうやって誤解を解いて、信用を取り戻そうかとヒロトは勝手に名誉を傷つけてしまったルネの分まで頭を悩ませた。
逆にチャムシィはやたらとご機嫌で、まだ何も魔法を習っていないというのに、水桶に両手を添えて適当に『水よ!土の中の者を元気にしろ!』などと叫んでいる。
(あれで本当に魔力が注がれてしまったらどうするんだか……)
ヒロトはとりあえず見ているだけで何もしないが。
何せ自分に魔力がないのは元々わかっていたし、それで拗ねるほどおこちゃまでもないし、冒険者になるつもりもない。
だからかもしれないが、魔法や魔術を理解しようという気も、父親の不思議道具再現熱もわからないのだ。
「平和に暮らせる方が、幸せだと思うんだけどなぁ~……」
「僕もそー思う。兄ちゃんはどうしても宿屋を継ぎたくないんだって。僕は好きなんだけど。父ちゃんは『兄ちゃんが兄ちゃんだから、宿を継がないといけない』って」
「うっわ!それで言ったら、俺だって親父の跡を継がなきゃなんないってことだよな?彫金細工だってそんな得意じゃないってのに、おかしな研究まで引き継ぐって絶対無理……」
「え?だって、ヒロトんとこはヒロトだけでしょ?だったらやっぱり跡を継がなきゃ……」
そうだった。
前世と違って『子は親の職業を継ぐ』っていうのはこの世界では当たり前で──でもそう言えば父方の家業について話を聞いたことはないのにヒロトは気が付いた。
何せあの不思議なものが普通にある『フシギファクトリー』には物心つく前から住んでいるが、今まで一度も母方の祖父母や親戚以外と顔を合わせたことはないし、どこにいるかも聞いたことはなかった。
「まあ……それは……どう、かなぁ……?」
遺伝子的な母とは別に、前世の母もこの世界に存在しているらしいが、いつか父が恋愛して新しい継母や異母弟妹ができないとも限らないのだ。
もしかしたらその異母弟妹がヒロトの代わりに、父やルネの相手をしてくれるかもしれない──などと妄想してみるが、まず父が恋愛に現を抜かすという時点で想像がつかない。
そう言う意味ではチャラそうに見えるのに、まったく恋の浮ついた話も聞かないルネの方が大丈夫なんだろうと心配になる。
「まさか……ルネって……ゲイ?」
「ゲイ?ゲイって何?」
「ん?ああ、男が好きな男?」
ポロリと何の気の無しに漏らしたが、相手が幼いグラだったと思い出して、ヒロトはサァッと青くなった。
前世でもそういった性的嗜好に対する偏見があったのに、『子供は親の跡を継ぐ』というのが当たり前のこの世界では、もっとタブー意識が強いものかもしれない。
そんなことに思い至らずに漏らしてしまったが、案の定グラは吐きそうな嫌悪感を見せて、ルネがロメウス先生とふたりっきりでいる家の方を見た。
「あっ!!いや!!違うから!!ルネが…っていうか、そうだってことじゃないから!」
「え……で、でもっ……」
グラはガタガタと震えて、ヒロトからもそぉっと距離を取る。
本当は声に出さずに、頭の中だけで考えていたつもりだったのに──
どうやって誤解を解いて、信用を取り戻そうかとヒロトは勝手に名誉を傷つけてしまったルネの分まで頭を悩ませた。
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