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気持ち良く別れる者。
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賭けは流れた。
『荷馬車ごと譲る』、『馬を巻き上げられる』、『自分も馬喰についてこの旅から離脱する』、『身ぐるみ剥がされて自分たちの馬車に乗ってくる』等々、とにかくバルトロメイが損をする予想ばかり立てていたのに、気が付けば男が行きたいと言っていた町にまで到着し、あっさりと別れたのである。
少しぐらい情を残すのかと思ったが、むしろバルトロメイと離れがたそうな表情をしていたのは馬喰の方で、可能なら数ヶ月自分の家や知り合いの牧場に滞在してほしいと交渉を始めようとしていた。
「ごめんなさい。僕たちすぐに出発しますから。あなたの用事を待っててあげられないんです」
「そうですかぁ……あ!もしまたこの町を通ることがあったら、ここの貸し馬車舎を訪ねてくださいね!バルトロメイさんの荷馬車も馬もまるごと休ませられるように手配しておきますから!」
「うわぁ!ありがとうございます!!」
「……ちょっと待って?え?何?」
「あいつ、いつの間にそんな話に……?」
馬を巻き上げようとしていたのが見え見えだった馬喰は何故かバルトロメイの両手を親し気に握り、さらにバルトロメイの無事がわかるようにこの町の冒険者ギルドに時々訪ねるとまで約束している。
どう見てもカモられる状態だったはずなのに──
それどころか何故かかなり感謝されているらしい。
しかも人が増えて来ている。
「いったい何がどうなってるんだ……?」
「知らないっすよ…サイラーさん、近くにいたじゃないですか」
「そう、なんだよなぁ……」
ボリボリと頭を掻く大男に向かって冒険者のひとりが困惑顔で問いかけるが、本当に何故バルトロメイの馬をかすめ取ろうとしていた男に向かって、通りすがりで助けた者たちに案内してもらった良質な牧草地と野生馬の生息地を教えてやる流れになったのか、さっぱりわからない。
しかもそこは教えてくれた者たちが集落ぐるみで隠していたらしいが、バルトロメイにはあっさり明かして、さらに『必要な人がいれば自分のところに許可をもらいに来てくれれば』とまで言ってくれたのだ。
人助けどころかついでに顔も知らない者たちまで繋げてしまった手腕は、もしバルトロメイが冒険者ではなく人材紹介所の職員でもやっていけるんじゃないかと思えるほどである。
バルトロメイを手元に置いておきたいと思った兄は、ひょっとしてあの才能を秘かに見出ていたのだろうか──サイラーは今すぐドファーニ商会の本部にいるテイラー・ドファーニに面会して問い質したい思いだった。
『荷馬車ごと譲る』、『馬を巻き上げられる』、『自分も馬喰についてこの旅から離脱する』、『身ぐるみ剥がされて自分たちの馬車に乗ってくる』等々、とにかくバルトロメイが損をする予想ばかり立てていたのに、気が付けば男が行きたいと言っていた町にまで到着し、あっさりと別れたのである。
少しぐらい情を残すのかと思ったが、むしろバルトロメイと離れがたそうな表情をしていたのは馬喰の方で、可能なら数ヶ月自分の家や知り合いの牧場に滞在してほしいと交渉を始めようとしていた。
「ごめんなさい。僕たちすぐに出発しますから。あなたの用事を待っててあげられないんです」
「そうですかぁ……あ!もしまたこの町を通ることがあったら、ここの貸し馬車舎を訪ねてくださいね!バルトロメイさんの荷馬車も馬もまるごと休ませられるように手配しておきますから!」
「うわぁ!ありがとうございます!!」
「……ちょっと待って?え?何?」
「あいつ、いつの間にそんな話に……?」
馬を巻き上げようとしていたのが見え見えだった馬喰は何故かバルトロメイの両手を親し気に握り、さらにバルトロメイの無事がわかるようにこの町の冒険者ギルドに時々訪ねるとまで約束している。
どう見てもカモられる状態だったはずなのに──
それどころか何故かかなり感謝されているらしい。
しかも人が増えて来ている。
「いったい何がどうなってるんだ……?」
「知らないっすよ…サイラーさん、近くにいたじゃないですか」
「そう、なんだよなぁ……」
ボリボリと頭を掻く大男に向かって冒険者のひとりが困惑顔で問いかけるが、本当に何故バルトロメイの馬をかすめ取ろうとしていた男に向かって、通りすがりで助けた者たちに案内してもらった良質な牧草地と野生馬の生息地を教えてやる流れになったのか、さっぱりわからない。
しかもそこは教えてくれた者たちが集落ぐるみで隠していたらしいが、バルトロメイにはあっさり明かして、さらに『必要な人がいれば自分のところに許可をもらいに来てくれれば』とまで言ってくれたのだ。
人助けどころかついでに顔も知らない者たちまで繋げてしまった手腕は、もしバルトロメイが冒険者ではなく人材紹介所の職員でもやっていけるんじゃないかと思えるほどである。
バルトロメイを手元に置いておきたいと思った兄は、ひょっとしてあの才能を秘かに見出ていたのだろうか──サイラーは今すぐドファーニ商会の本部にいるテイラー・ドファーニに面会して問い質したい思いだった。
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