間の悪い幸運勇者

行枝ローザ

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訊ね合う者。

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しかし『手紙を出さないのか』と言われて『お願いします』と返事をしたのはいいものの──いったい何を書けばいいのかと、バルトロメイは頭を捻った。
『げんきですか?』
そう書いた後から言葉が続かない。
だいたいラジムやシェイジンと一緒にいた間に聞いたこと以上、彼らに対して興味が湧いたとは言い難いのだ。
「う~んと…えぇ~と……」
『ぼくはたびをしています。こんどあったら、あいましょう。さようなら』
「よし!」
何も書かないよりはいいと、バルトロメイは満足してインクが渇くのを待つ。
「おう!書けたか?読んでもいいか?」
「どうぞ!」
とにかく『書いた』のだから、内容を見られてもまったく構わない。
むしろ綴り間違いがあったとしたら直してくれるだろうぐらいの気軽さで、バルトロメイはサイラーが覗き込んでくるのをニコニコと眺めた。
しかしサイラーの方は許可を得たのはいいものの、数行だけ書かれたバルトロメイの手紙は簡潔に過ぎ、アドバイスしようにもまずバルトロメイ自身が今日までどう過ごしていたかわからず口出しも憚られる。
「ま、まあいいんじゃないか……」
だいたい冒険者同士が頻繁に手紙をやりとりするということはあまりなく、あってもだいたい冒険者チームが複数所属するクランという団体の中で『これからA町のBダンジョンを攻略する。いつまでに集合』だとか『Cという依頼を受けた。参加する者はD市のギルドに○○日までに集合』という簡単な伝言めいたものが通常だ。
だからまあちょっと幼子のような書き方ではあるが、バルトロメイの手紙でも違反などとは言えない。
むしろこんなに無害でいいのかと思うほど裏も表も何もない、本当に文字通りの『ぼく元気です』報告だ。
「そう言えば、君はいったいどこに行くのかね?」
「えーっと」
どこと言われても──とりあえず「こっちへ行こう」と決めただけである。
だから正直にそう言えば、サイラーは何か喉に詰まったような表情をした。
「……では、特に目的はない…と?」
「ん~……あるけど、どこかわかんなくて」
「わからない?」

森があって。
師匠たちが家を作って。
別の師匠と何人かの弟子が家を作って。
別の大きな家とおじいちゃんとおじちゃんとおにいちゃんがたくさんいて。
いろんな人が来るが、バルトロメイは出てはいけないのでお留守番のおにいちゃんといて。

さて、そこはいったいどこでしょう?

「……どこって……」
「でも、何かどこにも森と家があるばっかりで。わかんないんで、何か見たことないとこに行こうかなって」
行った後で、さらにその先に道が続いていれば森と家を探そう──バルトロメイの旅の目的は、ただそれだけのことだ。

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