間の悪い幸運勇者

行枝ローザ

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警戒される者。

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バルトロメイ自身は『魔法』だとか『魔術』、人外の能力について疑問に思ったことがない。
むしろ人外とともに育ったために、何が『普通』ではないのかがわからないから、チェットやポリネが何を不思議に思っているのかまったくよくわからないというだけだ。
「……とにかく『勝手に人の物に触らない。触っていいと言われても、許可がなければ開けない』という約束を。クガンももうそろそろ『幼いから』という理由で何でも許される歳ではないんだから」
「ううう……」
アンバールではなくチェットがそう言い聞かせると、それこそクガンは実年齢よりもずっと幼い表情で目に涙を溜めつつコクンと頷く。
そして並んでアンバールもシュンと項垂れているが、それこそ大きな犬がご主人様に付き従って一緒に反省しているようにしか見えない。
「ガキ。2匹。治らない」
「ポリネ……君は君で判断力が良すぎて、実年齢を疑うよ……まあ、用心を怠らないのはいいことだと思うけどね」
チェットはとりあえずパーティーリーダーと最年少のメンバーを窘め終わると、バルトロメイに向き直った。
「……で、君はもう危ない物はもう持って…ないよね?」
にっこり笑っているが、その表情が強張っているのに気付いたのはポリネだけである。

しかし何が危険で何がそうじゃないのか──バルトロメイには判断がつかないので、その質問には答えようがなかった。
しかもそのせいでたとえバルトロメイが許可して自分の持ち物を差し出したとしても、気軽に調べようとは思えないのだから、聞くだけ無駄だったかもしれない。
「無理。命令。ひとつ」
「なるほど……対象限定魔法か……ずいぶんと高性能な魔道具ばかり身に付けて……よく君からその『素晴らしい剣』を盗もうと思った奴がいるな」
「うん。とても綺麗だったんだけど。ちゃんと使う前に無くなっちゃったから……」
「店。魔道具?」
「え?ううん。違うよ。普通の武器屋さんで……でも魔法の石が嵌めこんであるから、絶対他の魔法をつけちゃダメだって言われて」
「言われて……銀貨2枚?」
「うん」
「……騙されてねぇ?それって」
さっきまで怖がっていたのが嘘のようにいつの間にかまた皆で輪になって座り込み、普通に食事をしながらバルトロメイの話を聞いている。
その気安さは初めての冒険となったドファーニ商会の護衛で友人となったラジムや、彼の師匠であるシェイジンや他の気の良い冒険者たちと火を囲んで談笑して来た時とよく似ていた。


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