間の悪い幸運勇者

行枝ローザ

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慌てない者。

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もっともバルトロメイ自身は、他の冒険者とは違ってレベルアップに拘ってはいない。
目的は──師匠であるバルトバーシュとマクロメイがいるあの家と、エクルーが配下の僧兵たちと宿舎と修練場を兼ねた隣り合わせの敷地、そして『家族』がいる森を探すこと。
しかしバルトロメイがちゃんと探せないのには訳がある。
まず第一に、バルトロメイは知らないが、精霊がいる森や山などは普通彼らによって結界に護られていることが多く、おそらく常人では見つけられないようにされている可能性が高い。
第二に、13歳の時に飛ばされたその場所は人里に近いというだけでなく、生まれ育った森からかなり離れた場所にあると思われ、さらに『聖ガイ・トゥーオン』という宗教の名前の施設だということを、バルトロメイは理解していなかった。
さらにそこからマロシュ老の住んでいる町に転移されたことで、さらに自分のいる場所と探さねばならない場所がどこだか、本当に分からなくなってしまったのである。

だからまあのんびりと──

のんびりしすぎて冒険者となってすでに2年目も過ぎ、それでも『万年新人冒険者ルーキー』という扱いで、なのに『奉仕ポイント』という査定基準を作りそこから幸運と対人運だけが爆上がりしてしまい、結果的に『勇者』となってしまったのだが、本人は一切気にしていない。
「これで良し……と。あ!あそこに幻惑茸が群生してる?!確か、娼館で探してるって言ってたっけなぁ~……キノスさんが『あったら嬉しい』とか言ってたし、あれも取っておこうかな」
そうやって結局依頼を受注していない採取物までゲットし、『成功率』もまた高くなっていく。


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