間の悪い幸運勇者

行枝ローザ

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推察する者。

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それからわかったこと──元・修道女には精神関与系の魔力があり、その能力は『魅了』というものだった。
もっともその影響範囲は弱く、せいぜいが『人から信頼を得る』ということや、意識して使えばそれこそ『異性を虜にする』というぐらいである。
そのせいで村中の成人以上の男たちは彼女と進んで関係を持ちながらも、その家族から嫌悪されることもなかった──どころか逆に女子供たちには慕われ、レーアですら自分を引き取られた理由を知ったあの日以降もこの教会に残ることを疑問に思わなかったのだ。
その能力をただの平民が持つということはあまり例がなく、おそらくは王族の誰かが市井の女に手を出して産ませた私生児かもしくはその子だろうと推測されたため、これからはその出生について可能な限り詳しく調べられるのと、監禁場所は普通の牢屋ではなく表には出せない王家の血縁者がまとめて管理されている施設に変更された。
万が一、王族とまったく関係はなかったとしても聖職にあったという来歴は変わらず、ただその施設で罪を贖うために彼らまたは彼女らのために日々祈り世話をする役目を与えられることになる。
そこに本人の意思や希望を聞き入れられる自由などなく、また能力や魔力を封じられる処置も施されるため、今後は魅了能力を使って誰かを誑しこむこともできない。

だが──

「……惜しい」
「気持ちはわかりますが、私の前以外では言わずにいてくださいよ?」
「むむっ…わかっておる」
アギディハーンの呻き声に、ラン・バクーは苦笑しつつ釘を刺す。
王族の誰かの落胤おとしだねかもしれない人間など剣呑そのものかもしれないが、出生がバレる前に冒険者登録されてさえいれば、特別措置として冒険者ギルド職員もメンバーとなっているパーティーで囲うこともできたかもしれない。
『魅了』という能力に抗えないという弱点を持つ魔物に対する戦力という意味合いもあるが、何より味方を鼓舞し実力以上の実力を発揮させるという特殊効果をパーティー全体にもたらすことも可能な人材ともいえるのだ。
王族直系でこの能力を有するということは凄まじいカリスマ性を持って国民の支持を得るということであるが、その危険性を知ってなおかつ制御できる者が『王』と呼ばれる存在となるが、冒険者ギルドに『王』はいらない。
しかし各人の戦闘能力や生存率が上がるような能力の持ち主は大歓迎である。
「まあ本人に適性があるとは思えませんからね。彼女にとっては自己肯定感も含めて『性交』のみが至上のようですから」
「色狂いか……ある意味教会に所属する人生で助かったとも言えるか」
「まったくです。変に外交女官の職を得られるような教育を受けられる環境でなかったのが幸いしましたね」
そう言ってラン・バクーはやれやれと肩を竦めた。


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