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続く者。
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それはひとまず置き、結局のところどうするのかの問題は、ドウシュのこの小刀による報酬の行方と吸い取った魔力の浄化がいつ終わるかということだった。
「……報酬のことは置いといて、だ……何々?この一覧本によると、お嬢ちゃんの小刀の石は、どうやら周囲に魔物が完全にいなくなったら浄化が完了する……ってことは、ある意味永遠に浄化は終わらない……」
「そ、そんな……」
「いや、冒険者にとっちゃぁ便利なもんだぜ?魔物を倒したら倒した分だけ、コイツは魔物の魔力を吸って勝手に強くなるんだからな。ただ、それだと『魔石集め』みたいな依頼には向かねぇけどな……」
「そうですよ!第一、魔物の魔力を吸うってことは、それだけ膨大な魔力を溜め込んでいるっていうことですよ?何かの弾みで爆発したり、強力な力が欲しい魔物が現れたりとか……」
「ヒッ………」
アギディハーンとギルド職員の会話を聞いて、レーアは今にも座ったまま気を失いそうである。
「そう言えば……ドウシュさんの身体から出てきた蔦みたいなの……なんか、この小刀を避けているみたいでした」
「小刀を……避けて……」
バルトロメイが閉じ込められた部屋の中で起きたことを思い出してアギディハーンに伝えると、フムと顎に指を当てて何か考え込んだ。
「……なぁ、村長さんよ」
「はっ、はい?」
「確か最初、ドウシュの遺体を埋めたあたりは普通に作物が育って、それ以外では毒草が生えてたんだっけか?」
「そう…ですね……」
ふむ…と唸って、アギディハーンは一枚の紙を取り出してテーブルに広げた。
皆で覗き込めば、それはこの辺りを簡単に描いた地図である。
「冒険者ギルドにあった『町』の頃の生活範囲と、廃墟…だっけか?アレがあった辺り、がこんな感じで」
ぐるりと大きな円の方を指で辿る。
「んで、今はここら辺りだけが『村』の範囲」
そうして乱雑に小さな円を書き足すと、その中心は教会であった。
ドウシュが関わった廃墟はその円から外れているが、それがどうしたという顔で全員がアギディハーンを見つめる。
「もしかして…という憶測なんだが。この廃墟…大昔にここらへんで信仰されていたっていう土地神だが、ひょっとしたら、ドウシュの身体に入り込んだ『呪い』やら魔物やらを封じていた可能性がある」
「えっ……」
異口同音に声が上がる。
推測としては、流れ者冒険者が持ち去ったという『お宝』の中に、その『呪い』や『魔物』を封じ込めたり、吸収するこの小刀についた石と同じ役目を果たすものがあったのかもしれない。
だがそれが失われたことで、犠牲となったドウシュの身体に憑りついた。
しかしドウシュ自身は小刀に嵌った石を家宝としてずっと身に着けていたため、一種封印のような加護を受けていた可能性がある。
だが人の身では抑えきるのにも限界があり命を落としたが、すでにドウシュの心臓を魔石化してしまったために魔物は解放されず、ドウシュの遺体を中心に土に沁み込む魔素毒を取り込むことだけで生き延びており、その結果魔素毒の抜けた土地だけが清浄化していった──
「ま、俺の見解ってだけで、正式なもんじゃねえし、間違っているかもしれない……だが」
「ええ。この石が魔物の力をすべて吸収したため、ドウシュ殿の『呪い』そのものが消えた……今後の結果ですが、ひょっとしたらもう少し村の範囲を広げられるかもしれません」
「ただし条件として……」
代わるがわるにアギディハーンとギルド職員が説明したが、ピタリとふたりはレーアに視線を止めた。
「……報酬のことは置いといて、だ……何々?この一覧本によると、お嬢ちゃんの小刀の石は、どうやら周囲に魔物が完全にいなくなったら浄化が完了する……ってことは、ある意味永遠に浄化は終わらない……」
「そ、そんな……」
「いや、冒険者にとっちゃぁ便利なもんだぜ?魔物を倒したら倒した分だけ、コイツは魔物の魔力を吸って勝手に強くなるんだからな。ただ、それだと『魔石集め』みたいな依頼には向かねぇけどな……」
「そうですよ!第一、魔物の魔力を吸うってことは、それだけ膨大な魔力を溜め込んでいるっていうことですよ?何かの弾みで爆発したり、強力な力が欲しい魔物が現れたりとか……」
「ヒッ………」
アギディハーンとギルド職員の会話を聞いて、レーアは今にも座ったまま気を失いそうである。
「そう言えば……ドウシュさんの身体から出てきた蔦みたいなの……なんか、この小刀を避けているみたいでした」
「小刀を……避けて……」
バルトロメイが閉じ込められた部屋の中で起きたことを思い出してアギディハーンに伝えると、フムと顎に指を当てて何か考え込んだ。
「……なぁ、村長さんよ」
「はっ、はい?」
「確か最初、ドウシュの遺体を埋めたあたりは普通に作物が育って、それ以外では毒草が生えてたんだっけか?」
「そう…ですね……」
ふむ…と唸って、アギディハーンは一枚の紙を取り出してテーブルに広げた。
皆で覗き込めば、それはこの辺りを簡単に描いた地図である。
「冒険者ギルドにあった『町』の頃の生活範囲と、廃墟…だっけか?アレがあった辺り、がこんな感じで」
ぐるりと大きな円の方を指で辿る。
「んで、今はここら辺りだけが『村』の範囲」
そうして乱雑に小さな円を書き足すと、その中心は教会であった。
ドウシュが関わった廃墟はその円から外れているが、それがどうしたという顔で全員がアギディハーンを見つめる。
「もしかして…という憶測なんだが。この廃墟…大昔にここらへんで信仰されていたっていう土地神だが、ひょっとしたら、ドウシュの身体に入り込んだ『呪い』やら魔物やらを封じていた可能性がある」
「えっ……」
異口同音に声が上がる。
推測としては、流れ者冒険者が持ち去ったという『お宝』の中に、その『呪い』や『魔物』を封じ込めたり、吸収するこの小刀についた石と同じ役目を果たすものがあったのかもしれない。
だがそれが失われたことで、犠牲となったドウシュの身体に憑りついた。
しかしドウシュ自身は小刀に嵌った石を家宝としてずっと身に着けていたため、一種封印のような加護を受けていた可能性がある。
だが人の身では抑えきるのにも限界があり命を落としたが、すでにドウシュの心臓を魔石化してしまったために魔物は解放されず、ドウシュの遺体を中心に土に沁み込む魔素毒を取り込むことだけで生き延びており、その結果魔素毒の抜けた土地だけが清浄化していった──
「ま、俺の見解ってだけで、正式なもんじゃねえし、間違っているかもしれない……だが」
「ええ。この石が魔物の力をすべて吸収したため、ドウシュ殿の『呪い』そのものが消えた……今後の結果ですが、ひょっとしたらもう少し村の範囲を広げられるかもしれません」
「ただし条件として……」
代わるがわるにアギディハーンとギルド職員が説明したが、ピタリとふたりはレーアに視線を止めた。
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