144 / 259
称える者。
しおりを挟む
「それなんだが……」
「なんだが?」
「わからん!!」
キッパリとアギディハーンが言い切り、バルトロメイ以外の室内にいる者は皆脱力する。
「何ですかそれ……そんなわからないってこと、自信満々に言い切らなくても」
ツッコむのはやはりアギディハーンについてきたギルド職員だけで、村長たちも同じことを言いたそうにしつつグッと言葉を飲み込んだ。
けれどもそれを聞いてバルトロメイはゴソゴソと自分の腰につけたバッグを探る。
「石…石…吸収…結界…?」
呟きながらパラパラと捲るのは、ビン町の冒険者ギルド受付嬢をしているメイシャーお手製の『魔石一覧説明本』である。
読み込んでいるのか紙の端が丸まっているが、あるページで指を止めるとアギディハーンの方へずいっと向けて見せた。
「あの……これ、でしょうか?」
そこには『ヴェンデル』という名前が書かれており、魔石としての効果や採掘方法、さらに取り込んだ魔物の魔力──人間に害を与えるということから『魔素毒』と名付けられたそれを魔石の中に縛り付け、ゆっくりと無毒化するとあった。
しかしそれにはかなり時間がかかり、無毒化が終わった魔石は少しだけ成長し、また新たに魔素毒を取り込んでいくとまで書かれている。
「すげぇ……何なんだ、この本を書いたやつ……奴?女?」
「あ、ビン町の冒険者ギルドにいる女の人です」
「ビン……女?あそこには女の冒険者上がりなんていたか?」
アギディハーンはバルトロメイではなく、自分の連れに話を振る。
それを不思議に思うことはなかったらしく、ギルド職員はう~んと唸りながら記憶を探った。
「冒険者……そう、ですね……試験官とか管理課の方には何人かいますけど、こんなに魔石に詳しいのは……確か『魔石マニア』って言われてるあの子かな?」
「あの子?」
「ええ。メイちゃん…メイシャーっていう可愛い子なんですけど……いやでも別に本人は冒険者でも何でもなくて……でも凄いんですよ!何か地質学?偉い学者さんみたいな勉強をしてたらしくって。普通の女性だとせっかくの知識なんて活かす機会がないけど、冒険者ギルドにいればいろんな魔石を見れるかもって募集してきた珍しい子なんですよ。ま、薀蓄すごくって、けっこう煙たがられてるらしいんですけど……いやでもホント凄いですねぇ~」
凄いすごいとアギディハーンとギルド職員が盛り上がっているが、レーアやバルトロメイ、そして村の者たちには何のことやらさっぱりわからない。
「なんだが?」
「わからん!!」
キッパリとアギディハーンが言い切り、バルトロメイ以外の室内にいる者は皆脱力する。
「何ですかそれ……そんなわからないってこと、自信満々に言い切らなくても」
ツッコむのはやはりアギディハーンについてきたギルド職員だけで、村長たちも同じことを言いたそうにしつつグッと言葉を飲み込んだ。
けれどもそれを聞いてバルトロメイはゴソゴソと自分の腰につけたバッグを探る。
「石…石…吸収…結界…?」
呟きながらパラパラと捲るのは、ビン町の冒険者ギルド受付嬢をしているメイシャーお手製の『魔石一覧説明本』である。
読み込んでいるのか紙の端が丸まっているが、あるページで指を止めるとアギディハーンの方へずいっと向けて見せた。
「あの……これ、でしょうか?」
そこには『ヴェンデル』という名前が書かれており、魔石としての効果や採掘方法、さらに取り込んだ魔物の魔力──人間に害を与えるということから『魔素毒』と名付けられたそれを魔石の中に縛り付け、ゆっくりと無毒化するとあった。
しかしそれにはかなり時間がかかり、無毒化が終わった魔石は少しだけ成長し、また新たに魔素毒を取り込んでいくとまで書かれている。
「すげぇ……何なんだ、この本を書いたやつ……奴?女?」
「あ、ビン町の冒険者ギルドにいる女の人です」
「ビン……女?あそこには女の冒険者上がりなんていたか?」
アギディハーンはバルトロメイではなく、自分の連れに話を振る。
それを不思議に思うことはなかったらしく、ギルド職員はう~んと唸りながら記憶を探った。
「冒険者……そう、ですね……試験官とか管理課の方には何人かいますけど、こんなに魔石に詳しいのは……確か『魔石マニア』って言われてるあの子かな?」
「あの子?」
「ええ。メイちゃん…メイシャーっていう可愛い子なんですけど……いやでも別に本人は冒険者でも何でもなくて……でも凄いんですよ!何か地質学?偉い学者さんみたいな勉強をしてたらしくって。普通の女性だとせっかくの知識なんて活かす機会がないけど、冒険者ギルドにいればいろんな魔石を見れるかもって募集してきた珍しい子なんですよ。ま、薀蓄すごくって、けっこう煙たがられてるらしいんですけど……いやでもホント凄いですねぇ~」
凄いすごいとアギディハーンとギルド職員が盛り上がっているが、レーアやバルトロメイ、そして村の者たちには何のことやらさっぱりわからない。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気が付くと見知らぬ部屋にいた。
最初は、何が起こっているのか、状況を把握する事が出来なかった。
でも、鏡に映った自分の姿を見た時、この世界で生きてきた、リュカとしての記憶を思い出した。
記憶を思い出したはいいが、状況はよくなかった。なぜなら、貴族では失敗した人がいない、召喚の儀を失敗してしまった後だったからだ!
貴族としては、落ちこぼれの烙印を押されても、5歳の子供をいきなり屋敷の外に追い出したりしないだろう。しかも、両親共に、過保護だからそこは大丈夫だと思う……。
でも、両親を独占して甘やかされて、勉強もさぼる事が多かったため、兄様との関係はいいとは言えない!!
このままでは、兄様が家督を継いだ後、屋敷から追い出されるかもしれない!
何とか兄様との関係を改善して、追い出されないよう、追い出されてもいいように勉強して力を付けるしかない!
だけど、勉強さぼっていたせいで、一般常識さえも知らない事が多かった……。
それに、勉強と兄様との関係修復を目指して頑張っても、兄様との距離がなかなか縮まらない!!
それでも、今日も関係修復頑張ります!!
5/9から小説になろうでも掲載中
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる