114 / 259
切り倒す者。
しおりを挟む
その後は──
赤い霞がかった視界にはゆらり、ゆらりと動く緑と薄赤い影が映る。
それはヒラヒラと幾枚もの腕のような葉がくるりと干からび動かない衣服を纏った骨と皮だけの男たちを絡めとって蠢いている。
だから。
シュッとバルトロメイの腕が動き、同じくらいの素早さで背後に近付いていた葉の付け根をすっぱりと切り取った。
そしてそのままの円の動きで足元に這い寄っていた根の先も切り落とす。
勢いがついていたのか切られた根はその這い寄るスピードのまま遠くへ弾き飛ばされ、まるで痛みを感じるかのように幹のように太い茎がくねってその先で咲いている大輪の花がブルンブルンと大袈裟に振られて、ぷつりと大きな花片が何枚か千切れ堕ちてきた。
それらはひらりとかふわりとか可愛らしいものではなく、ズシンと音を立てて地面に落ち、土埃を舞い上げる。
「………こっ……のっ……」
何故か、怒りが沸く。
沸点に達したまま、バルトロメイは地面を蹴り、一気に巨大花の茎に駆け寄り、あっさりと地面スレスレから横切りに剣を振るった。
ズル。
ジュル。
ジュル。
そんな粘液の音を立てながらゆっくりと茎はズレて、重たい花部分を大きく振り回すように地面に倒れた。
その様自体はとても美しいと思えるものだったかもしれないが、儚い散り際とは裏腹に、ドォォォォンッと地響きを伴う重音を立ててその巨大な花部分と茎は地面にめり込み、さらに動けない男たちを巻き込んで動かなくなる。
ドロリとした樹液というか粘液が茎の切り口から溢れ出て、地面下に残った根がそれを吸おうとボコり、ボコりと這い出てきた。
<……貴様たちも、逝け>
ザクリ、とひと振りごとに根は千切られ、最後に残った茎と根の結合部分が真っ二つにされると、さすがにその植物性の魔物は蠢くのを止めた。
辺りを見回すと人の形を保ったままの骨がたくさん床にある。
どうやらあの粘液は生物を溶かしてしまうらしく、息をするだけしかできなかった者たちをすべて巻き込んで息絶えたらしい。
よく見ればバルトロメイの服もボロボロになっており、ドファーニから贈ってもらった新しい魔物製の革鎧でなければ丸裸になっていたか、それ以上に骨まで溶かされていたかもしれなかった。
だが、そんな惨状でも泣いているわけにはいかない。
いったいここがどこでこの先に進む場所を見つけるべきか、戻るべきか。
「…………ぅ…………」
コポリと粘液が弾け、微かな呻き声が聞こえた。
赤い霞がかった視界にはゆらり、ゆらりと動く緑と薄赤い影が映る。
それはヒラヒラと幾枚もの腕のような葉がくるりと干からび動かない衣服を纏った骨と皮だけの男たちを絡めとって蠢いている。
だから。
シュッとバルトロメイの腕が動き、同じくらいの素早さで背後に近付いていた葉の付け根をすっぱりと切り取った。
そしてそのままの円の動きで足元に這い寄っていた根の先も切り落とす。
勢いがついていたのか切られた根はその這い寄るスピードのまま遠くへ弾き飛ばされ、まるで痛みを感じるかのように幹のように太い茎がくねってその先で咲いている大輪の花がブルンブルンと大袈裟に振られて、ぷつりと大きな花片が何枚か千切れ堕ちてきた。
それらはひらりとかふわりとか可愛らしいものではなく、ズシンと音を立てて地面に落ち、土埃を舞い上げる。
「………こっ……のっ……」
何故か、怒りが沸く。
沸点に達したまま、バルトロメイは地面を蹴り、一気に巨大花の茎に駆け寄り、あっさりと地面スレスレから横切りに剣を振るった。
ズル。
ジュル。
ジュル。
そんな粘液の音を立てながらゆっくりと茎はズレて、重たい花部分を大きく振り回すように地面に倒れた。
その様自体はとても美しいと思えるものだったかもしれないが、儚い散り際とは裏腹に、ドォォォォンッと地響きを伴う重音を立ててその巨大な花部分と茎は地面にめり込み、さらに動けない男たちを巻き込んで動かなくなる。
ドロリとした樹液というか粘液が茎の切り口から溢れ出て、地面下に残った根がそれを吸おうとボコり、ボコりと這い出てきた。
<……貴様たちも、逝け>
ザクリ、とひと振りごとに根は千切られ、最後に残った茎と根の結合部分が真っ二つにされると、さすがにその植物性の魔物は蠢くのを止めた。
辺りを見回すと人の形を保ったままの骨がたくさん床にある。
どうやらあの粘液は生物を溶かしてしまうらしく、息をするだけしかできなかった者たちをすべて巻き込んで息絶えたらしい。
よく見ればバルトロメイの服もボロボロになっており、ドファーニから贈ってもらった新しい魔物製の革鎧でなければ丸裸になっていたか、それ以上に骨まで溶かされていたかもしれなかった。
だが、そんな惨状でも泣いているわけにはいかない。
いったいここがどこでこの先に進む場所を見つけるべきか、戻るべきか。
「…………ぅ…………」
コポリと粘液が弾け、微かな呻き声が聞こえた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。


俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる