105 / 259
考えずに向かう者。
しおりを挟む
バルトロメイにしてみれば、特に悲壮感を持って別れたつもりはない。
『母』と『父』に拾われた時の記憶はむろんないが、『家族』がいなくなったり新しく増えたりすることはしょっちゅうだったし、だからといってまったく戻ってこないわけでもなかった。
生き物の『脈』というものが見えるという『母』が拾ったばかりの『短き者』がいつ生まれ、どのようにしてここにおり、これから先どうすればよいのかを先見し、『別れを惜しむ』という人間らしい感情など持ち合わせていない『家族』とは違う場所で目覚めても、驚きはしたが悲しいとは思わなかった。
意識した初めての『別れ』は師匠であるバルトバーシュとマクロメイ、そして師匠になりかけていたエクルー神官たちの目の前から消えたことだが、その時抱くべき感情を知る前にガンス家当主のマロシュ老とその孫であるレオシュと出会ってしまった。
彼らとの『別れ』こそハッキリとした『別れ』ではあったが、「できれば戻ってきて、見たことのない姪の話を聞かせてほしい」と頼まれたことから、バルトロメイの中ではアレは『二度と会えない別れ』ではなく、「ちょっと行ってきます」程度の気持ちである。
そしてビンの町で『冒険者』という職業についてようやく理解を深めるまでに手助けした人たちと出会い、別れてきたが、バルトロメイにしてみれば邪険に接する意味がなかっただけで、ただにこやかに挨拶をして助けて「じゃあ」と歩き出しただけでしかない。
ドファーニ商会の商隊に加わらせてもらって、比較的安全にマロシュ老の弟が没した町だか村だかの近くまで来れたが、その間にも商会の人間が増えたり減ったり新たな人に代わったりしたせいで、「そういうものなのだ」としかバルトロメイは学習しなかった。
つまりは『今度は自分が減る番が来た』だけのことである。
だから気が付かなかった──バルトロメイが向かおうとしているのが、『雇い主が忙しい間、ちょっと町を抜け出て探索と、可能ならばダンジョンクリアをしてしまえ』と前方組冒険者たちが企んでいるあの森へ向かっているのだと。
『母』と『父』に拾われた時の記憶はむろんないが、『家族』がいなくなったり新しく増えたりすることはしょっちゅうだったし、だからといってまったく戻ってこないわけでもなかった。
生き物の『脈』というものが見えるという『母』が拾ったばかりの『短き者』がいつ生まれ、どのようにしてここにおり、これから先どうすればよいのかを先見し、『別れを惜しむ』という人間らしい感情など持ち合わせていない『家族』とは違う場所で目覚めても、驚きはしたが悲しいとは思わなかった。
意識した初めての『別れ』は師匠であるバルトバーシュとマクロメイ、そして師匠になりかけていたエクルー神官たちの目の前から消えたことだが、その時抱くべき感情を知る前にガンス家当主のマロシュ老とその孫であるレオシュと出会ってしまった。
彼らとの『別れ』こそハッキリとした『別れ』ではあったが、「できれば戻ってきて、見たことのない姪の話を聞かせてほしい」と頼まれたことから、バルトロメイの中ではアレは『二度と会えない別れ』ではなく、「ちょっと行ってきます」程度の気持ちである。
そしてビンの町で『冒険者』という職業についてようやく理解を深めるまでに手助けした人たちと出会い、別れてきたが、バルトロメイにしてみれば邪険に接する意味がなかっただけで、ただにこやかに挨拶をして助けて「じゃあ」と歩き出しただけでしかない。
ドファーニ商会の商隊に加わらせてもらって、比較的安全にマロシュ老の弟が没した町だか村だかの近くまで来れたが、その間にも商会の人間が増えたり減ったり新たな人に代わったりしたせいで、「そういうものなのだ」としかバルトロメイは学習しなかった。
つまりは『今度は自分が減る番が来た』だけのことである。
だから気が付かなかった──バルトロメイが向かおうとしているのが、『雇い主が忙しい間、ちょっと町を抜け出て探索と、可能ならばダンジョンクリアをしてしまえ』と前方組冒険者たちが企んでいるあの森へ向かっているのだと。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。


俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる