間の悪い幸運勇者

行枝ローザ

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計画する者。

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だが彼らは自ら選択できる未来を潰し、さらには雇い主との契約まで軽視し、自分たちの利益のためだけに動こうとしている。
すべて清廉潔白にとまでは望まないが、最低限の礼儀すら守れないのであれば、今後の冒険者活動にも支障が出るとは思わないのだろうか?
「……兄さんは私たち商会の護衛団団長となる将来を見据えて、王宮警護衛兵隊にまで所属してくれた……それと同じように冒険者たちの中にも何かしら目標があって、きちんと計画を立てている者は存在することは、後から護衛団に入ってくれた者たちを見ればわかるでしょう?今回、確かに若者たちが多いことに若干の不安はありましたが、冒険者ギルドから依頼されている篩い落としに一役買っていると思えば、まあまあ悪くない感じです」
「だがなぁ……」
サイラーの歯切れが悪いのは、手癖と勤務態度と口が悪く、自分より格下だと思う相手に対しては高圧的な態度を取るくせに、敵わないと思う者に対しては揉みてして低姿勢を見せる若い冒険者が多いと感じたせいである。
「……まあこれから先も冒険者となって一旗揚げようという者は多いだろう。そういった者たちまで面倒を見てやるつもりはないが、せめて我が隊に関わった冒険者たちが無事に我らのもとに『就職に来た』と再会できることが、俺の望みなのだが……」
「兄さんは欲張りだ」
テイラーはそう言って、自分の手にあるグラスを煽る。
そこら辺の問題に関してはシェイジンと幾人かのまとめ役的な冒険者に通達はしているが、全体に広げるのはまだ早いと思っていた。
とはいえ──正規護衛団の者たちは『警戒・注意すべき対象』としてすでに前方にいる冒険者たちの名前や顔は共有されており、監視される者たちも何となく自分たちにとってあまりいい感情を持たれていないことは察しているに違いない。


サイラーとテイラーのドファーニ兄弟が様々に今後のことを話し合っている間、同じように計画を練る者たちがいた。
「……だからよぅ、あのガキの馬車を奪っちまえばいいんだって」
「いや、しかし……」
「どうせあのガキの周りはジイサンばっかりなんだ。役立たずだから、後ろの簡単な警護しか任されてないんだからな」
「だいたいあっちには貴重品なんかないって話だぜ?」
「ああ、あのガキがまったく戦力にならねぇから、お情けでヨボヨボたちをあてがってるだけだって」
「だが、水棲魔物が襲ってきた時に追い払ったって……」
「え?でもそれって、水ン中に引き込まれそうになった馬が暴れてひと蹴り食らわせたから逃げたって、俺は聞いたぜ?」
「マジか!ホントに役立たずのガキだぜ!そんなやつなら、自分の荷物も自分で背負えないだろうよ!」
「なぁんだ!そんなら俺たちが少しでも軽くしてやるのが『優しさ』ってもんだな!」
けっして大きな声ではなく、正規護衛団を近付けないようにしながら、ならず者に堕ちかけている冒険者たちは秘かに笑い合った。


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