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見捨てる者。
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不穏な気配を孕みつつも、さして大きな問題もなく商隊は進んでいった。
ただし護衛の分断ははっきりしており、前方の冒険者たちは正規護衛団の言うことを聞いているようで最低限のことしかこなさない。
中央部分はドファーニ商会の者で固まってしまっており、余人を受け入れがたくしている。
そして後方に関してはサイラーとシェイジンが何とか協力体制を崩さない程度に纏まりつつあったが、その結びつきのせいで逆に前方の若い冒険者たちとは距離ができてしまった。
それを危惧したサイラーの方から後方へ向かい、シェイジンと並び移動しながら現状と意見交換を行う。
「……今回の商隊移動の雰囲気……貴殿はどう見る?」
「ああ……たぶん、かなりヤバい」
「……やはり、か……」
「ああ。あんたたち正規の護衛たちと俺たち殿はそれなりに意思疎通ができていると、俺なりに感じている。何かあっても、荷馬車もドファーニさんたちも守れるだろうが、前方の奴らは自分たちだけでやろうとするかもしれない」
「うむ。あちらはあちらで纏まっているから、我々の言葉を聞こうともせん……戦力的には何とかなるかもしれないが、やつらよりもレベルの高い魔物なぞに襲われたら……」
平均的な強さを求めて募集した冒険者たちのランクがそれぞれ同じCランクだとしても、どういう経緯でランクアップしたのか、どういう活動をしてきたのかで、どうしても経験値と年齢の差が出る。
そして連携して他の冒険者パーティーと組んだことがあるかどうかでも、やはりこの任務の成功率は変わってくるのだ。
「あまりいい感じじゃなく連携が取れちまってるな……前にダンジョンでああいうやつらと出くわしたことがあるよ」
「ほぅ……?で、結末は?」
「ありきたりさ。追い剥ぎに成り下がって指名手配…報奨金目当てのやつらに討伐されて、後はお縄よ。死亡した冒険者が手に入れた物を横取りするのはともかく遺品をギルドに渡さずに売っぱらっちまったり、欲かいてダンジョンアタック中の生きてる冒険者に襲いかかっちまったらなぁ……」
「考えることは悪党皆一緒というわけか……」
サイラーは顎を撫でる。
今までもドファーニ商会で雇った冒険者に問題が発生しなかったわけではない。
だがそれは少数で、冒険者同士が徒党を組んで悪さをする隙など与えず、正規の護衛団が取り押さえることができた。
それはこのような護衛依頼に次の就職先を見出すような、冒険家業に行き詰まりを感じられるぐらいに年齢的、体力的に限界を感じるような者たちが真っ先に依頼を受理し、楽に報酬を得ようとする若い冒険者が入り込む余地はあまりなかったのである。
それが今回に限っては、まるでバルトロメイの年齢に合わせたかのように若い冒険者たちがビンの町に集っており、しかも目玉となるような討伐依頼やダンジョンも冒険者ギルドにはなく、ドファーニ商団護衛に参加することとなった。
性質の良い者ばかりならバルトロメイに先輩として接し、テイラーもそれなりに扱い、将来的に正規護衛団への再就職もあると予めスカウトしていたかもしれない。
少なくとも追い剥ぎ強盗へ堕落する道を自ら進むような、愚かな行いを黙って見過ごそうとはしなかったはずだ。
ただし護衛の分断ははっきりしており、前方の冒険者たちは正規護衛団の言うことを聞いているようで最低限のことしかこなさない。
中央部分はドファーニ商会の者で固まってしまっており、余人を受け入れがたくしている。
そして後方に関してはサイラーとシェイジンが何とか協力体制を崩さない程度に纏まりつつあったが、その結びつきのせいで逆に前方の若い冒険者たちとは距離ができてしまった。
それを危惧したサイラーの方から後方へ向かい、シェイジンと並び移動しながら現状と意見交換を行う。
「……今回の商隊移動の雰囲気……貴殿はどう見る?」
「ああ……たぶん、かなりヤバい」
「……やはり、か……」
「ああ。あんたたち正規の護衛たちと俺たち殿はそれなりに意思疎通ができていると、俺なりに感じている。何かあっても、荷馬車もドファーニさんたちも守れるだろうが、前方の奴らは自分たちだけでやろうとするかもしれない」
「うむ。あちらはあちらで纏まっているから、我々の言葉を聞こうともせん……戦力的には何とかなるかもしれないが、やつらよりもレベルの高い魔物なぞに襲われたら……」
平均的な強さを求めて募集した冒険者たちのランクがそれぞれ同じCランクだとしても、どういう経緯でランクアップしたのか、どういう活動をしてきたのかで、どうしても経験値と年齢の差が出る。
そして連携して他の冒険者パーティーと組んだことがあるかどうかでも、やはりこの任務の成功率は変わってくるのだ。
「あまりいい感じじゃなく連携が取れちまってるな……前にダンジョンでああいうやつらと出くわしたことがあるよ」
「ほぅ……?で、結末は?」
「ありきたりさ。追い剥ぎに成り下がって指名手配…報奨金目当てのやつらに討伐されて、後はお縄よ。死亡した冒険者が手に入れた物を横取りするのはともかく遺品をギルドに渡さずに売っぱらっちまったり、欲かいてダンジョンアタック中の生きてる冒険者に襲いかかっちまったらなぁ……」
「考えることは悪党皆一緒というわけか……」
サイラーは顎を撫でる。
今までもドファーニ商会で雇った冒険者に問題が発生しなかったわけではない。
だがそれは少数で、冒険者同士が徒党を組んで悪さをする隙など与えず、正規の護衛団が取り押さえることができた。
それはこのような護衛依頼に次の就職先を見出すような、冒険家業に行き詰まりを感じられるぐらいに年齢的、体力的に限界を感じるような者たちが真っ先に依頼を受理し、楽に報酬を得ようとする若い冒険者が入り込む余地はあまりなかったのである。
それが今回に限っては、まるでバルトロメイの年齢に合わせたかのように若い冒険者たちがビンの町に集っており、しかも目玉となるような討伐依頼やダンジョンも冒険者ギルドにはなく、ドファーニ商団護衛に参加することとなった。
性質の良い者ばかりならバルトロメイに先輩として接し、テイラーもそれなりに扱い、将来的に正規護衛団への再就職もあると予めスカウトしていたかもしれない。
少なくとも追い剥ぎ強盗へ堕落する道を自ら進むような、愚かな行いを黙って見過ごそうとはしなかったはずだ。
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