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迎える者。
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幸いなことに狙われたのはバルトロメイとラジムの居室となっていた部分だけで、荷馬車の方はまったくと言っていいほど荒らされてはいなかった。
それは厩舎開口部が人目に付く場所にあるうえ、開く際にはかなりの物音がするため、わざわざ見つかる危険を冒してまで荷物を改めようとは思いつかなかったからだろう・
それでも今後も同じように見過ごしてもらえるとは限らないため、ドファーニは荷馬車用の守り袋まで用意してくれた。
「私たちのこの宿であればこうやって荷馬車ごと乗り込める部屋もありましたが、この先バルトロメイさんがひとりで移動する際、荷馬車は共同の置き場でなければダメだという宿もあるでしょう。その時の荷物が全て部屋に持ち込めればいいのですが……」
言い淀むのは、ビンの町を出発する際に贈られた物の山を見ていたドファーニだからかもしれない──きっとこの先、どこに行ってもバルトロメイは何らかの形で人から恩を返されるだろうということが。
しかしそんな時にも旅の神様を信仰する神殿で祈祷された守り袋は霊験あらたかと言われ、盗難防止によく旅人が求めるのもだと言われた。
特にその後はバルトロメイたちの部屋から、物は盗まれていない。
この町での用事をこなしている責任者であるドファーニが護衛たちと立ち去ればどうなるかわからないが、少なくとも監視の目が行き届いている間は、新しい宿の主となったサーシャの兄もバカなことはできないだろう。
そうはいっても心配なのか、入れ代わり立ち代わりバルトロメイたち殿組の冒険者が見回り役を買って出てくれ、出立の日まで問題は起きなかった。
「……まぁ、何かしらヤラかすとしたら、やっぱり町を出てから…になるだろうな」
「やっぱり来るのかなぁ……」
「ああいう手合いは逆恨みしやすいからな。ドファーニ商会縁者ということで、監視も手心を加える可能性だってある」
最初に狩った魔物で作ったために身体に合わなくなっていたラジムは、格段に動きやすく防御面でも不安を感じることのない上等な革鎧を付けながら、シェイジンの言葉を聞いていた。
バルトロメイも初めて付けた鎧より少し重くなってはいるものの、やはり身体にピッタリと合うことに感動しながら、師弟の会話を黙って聞いている。
「でもさぁ……さすがに俺たちの方には来ないんじゃねぇ?あんな酷い目に合ったんだから……」
「酷い目に合ったのは、バルトの武器に何らかの呪いがかかっていたから……つまり、お前さんたち2人の実力は、あいつらにはわからんだろう」
「へっ!舐めてらぁ!」
「そうだよ。普通は『大人が子供に負けるわけがない』って舐められるんだよ。お前も20歳そこそこ、バルトに至っちゃぁ成人してるかどうかも怪しい『ガキ』にしか見えん。だったら俺たちベテランよりよっぽど手出ししやすいって思い込むはずだ」
「………………へぇ~~~~~~~」
ギュッ、ギュッと革を軋ませ、ラジムは様々なポーズをとる。
ゆったりと腕を回したり足を上げ、ピタリと止める。
その動作にどんな意味があるのかわからないが、バルトロメイが純粋に綺麗な動きだと見惚れていると、ビシッと空気を切り裂く音を立ててラジムがニヤリと笑った。
「手出ししやすいかどーか、コソ泥如きに後れを取るようなガキかどーか、お手合わせ楽しみにしちゃおうじゃないか」
「……いや、確実に襲ってくるとは限らないんだけどな」
それは厩舎開口部が人目に付く場所にあるうえ、開く際にはかなりの物音がするため、わざわざ見つかる危険を冒してまで荷物を改めようとは思いつかなかったからだろう・
それでも今後も同じように見過ごしてもらえるとは限らないため、ドファーニは荷馬車用の守り袋まで用意してくれた。
「私たちのこの宿であればこうやって荷馬車ごと乗り込める部屋もありましたが、この先バルトロメイさんがひとりで移動する際、荷馬車は共同の置き場でなければダメだという宿もあるでしょう。その時の荷物が全て部屋に持ち込めればいいのですが……」
言い淀むのは、ビンの町を出発する際に贈られた物の山を見ていたドファーニだからかもしれない──きっとこの先、どこに行ってもバルトロメイは何らかの形で人から恩を返されるだろうということが。
しかしそんな時にも旅の神様を信仰する神殿で祈祷された守り袋は霊験あらたかと言われ、盗難防止によく旅人が求めるのもだと言われた。
特にその後はバルトロメイたちの部屋から、物は盗まれていない。
この町での用事をこなしている責任者であるドファーニが護衛たちと立ち去ればどうなるかわからないが、少なくとも監視の目が行き届いている間は、新しい宿の主となったサーシャの兄もバカなことはできないだろう。
そうはいっても心配なのか、入れ代わり立ち代わりバルトロメイたち殿組の冒険者が見回り役を買って出てくれ、出立の日まで問題は起きなかった。
「……まぁ、何かしらヤラかすとしたら、やっぱり町を出てから…になるだろうな」
「やっぱり来るのかなぁ……」
「ああいう手合いは逆恨みしやすいからな。ドファーニ商会縁者ということで、監視も手心を加える可能性だってある」
最初に狩った魔物で作ったために身体に合わなくなっていたラジムは、格段に動きやすく防御面でも不安を感じることのない上等な革鎧を付けながら、シェイジンの言葉を聞いていた。
バルトロメイも初めて付けた鎧より少し重くなってはいるものの、やはり身体にピッタリと合うことに感動しながら、師弟の会話を黙って聞いている。
「でもさぁ……さすがに俺たちの方には来ないんじゃねぇ?あんな酷い目に合ったんだから……」
「酷い目に合ったのは、バルトの武器に何らかの呪いがかかっていたから……つまり、お前さんたち2人の実力は、あいつらにはわからんだろう」
「へっ!舐めてらぁ!」
「そうだよ。普通は『大人が子供に負けるわけがない』って舐められるんだよ。お前も20歳そこそこ、バルトに至っちゃぁ成人してるかどうかも怪しい『ガキ』にしか見えん。だったら俺たちベテランよりよっぽど手出ししやすいって思い込むはずだ」
「………………へぇ~~~~~~~」
ギュッ、ギュッと革を軋ませ、ラジムは様々なポーズをとる。
ゆったりと腕を回したり足を上げ、ピタリと止める。
その動作にどんな意味があるのかわからないが、バルトロメイが純粋に綺麗な動きだと見惚れていると、ビシッと空気を切り裂く音を立ててラジムがニヤリと笑った。
「手出ししやすいかどーか、コソ泥如きに後れを取るようなガキかどーか、お手合わせ楽しみにしちゃおうじゃないか」
「……いや、確実に襲ってくるとは限らないんだけどな」
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