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招待される者。
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そういえばバルトバーシュの出生についても、確実ではないがどこぞの貴族の隠し子ではないかという噂もあったことを思い出す。
根拠としては遠方の神殿から巡礼にやってきた貴族出身の神官がバルトバーシュを見て、「あの貴族家の当主に似ていなくもない」と言ったとか言わないとか。
もう10年ほども前のことだからすっかり忘れていたが、庶民は特別に魔力があるかどうかを調べることはあまりしないため、どういう属性でどういう使い方ができるものかわからずとも、『魔力持ち』であるバルトバーシュが庶子である可能性は高いかもしれない。
「よーし!小バルト!バルトバーシュに今夜は客人がいると伝えて来い。ついでに畑からうんと食べごろのやつを少し多めに取って来い」
「小バルト?」
「ああ。あいつの洗礼名は『バルトロメイ』。いつまでたっても洗礼式が行われないからな……ささやかだがこの小屋に追いやられた日を祝して、1年半前に3人でやったんだ。ああ、招待するのをすっかり忘れていたな」
絶対わざと教えなかったのだろう。
そう言いたい気持ちを込めて睨み付けたが、マクロメイはエクルーの怒気を軽く流す。
だが神殿の上層部に抱いていた神聖さと尊敬の念に綻びができた今、確かに彼らよりも師匠である2人が名付ける方がふさわしいとも思い、言葉を発してはいないもののちゃんと師匠の言うことを理解して駆けだしていく少年の後ろ姿をジッと見つめた。
だがやむを得ない事情があるにしても、勝手に洗礼式を行ったことに対しては、僧兵隊総隊長として文句のひとつでも言わねばならないだろう。
そう思って家に入ったのだが、食糧事情はこの1~2年の間に劇的に向上したようで、新鮮な野菜はもちろんのこと、魔物ではない肉がきちんと食卓に並ぶのを見てエクルーは驚きを隠せない。
結界の外は魔境とも言える。
人間の住む地域に足を踏み入れられない代償として、森の中では魑魅魍魎が普通の動物を食い散らかしていると伝えられているのに、この家の食卓には野生の猪豚らしき肉が上手く焼かれて供されている。
「いったいどうやって……」
「それはこっちが知りてぇよ」
エクルーの呆然とした声にマクロメイが苦笑するが、そのやり取りを見ていた少年──バルトロメイが口の前で人差し指を交差させて『沈黙』を意味するジェスチャーをしてみせた。
「どうやら供給源はこいつらしいんだが、絶対にそれだけは言わねぇんだ。まぁ、こいつにしても畑の奥から引っ張りこんでくるから、『家族』がいまだに心配して持ってきてくれているのかもしれないがな……」
「家族……」
その件についてはバルトバーシュは最初の頃に聞き出したことを上層部には話していたが、あれ以上の情報が出たとは聞いていない。
そして神殿でもめったに奉納されないような上等な肉を食べていると、どちらが追放されたのか錯覚してしまいそうだ。
根拠としては遠方の神殿から巡礼にやってきた貴族出身の神官がバルトバーシュを見て、「あの貴族家の当主に似ていなくもない」と言ったとか言わないとか。
もう10年ほども前のことだからすっかり忘れていたが、庶民は特別に魔力があるかどうかを調べることはあまりしないため、どういう属性でどういう使い方ができるものかわからずとも、『魔力持ち』であるバルトバーシュが庶子である可能性は高いかもしれない。
「よーし!小バルト!バルトバーシュに今夜は客人がいると伝えて来い。ついでに畑からうんと食べごろのやつを少し多めに取って来い」
「小バルト?」
「ああ。あいつの洗礼名は『バルトロメイ』。いつまでたっても洗礼式が行われないからな……ささやかだがこの小屋に追いやられた日を祝して、1年半前に3人でやったんだ。ああ、招待するのをすっかり忘れていたな」
絶対わざと教えなかったのだろう。
そう言いたい気持ちを込めて睨み付けたが、マクロメイはエクルーの怒気を軽く流す。
だが神殿の上層部に抱いていた神聖さと尊敬の念に綻びができた今、確かに彼らよりも師匠である2人が名付ける方がふさわしいとも思い、言葉を発してはいないもののちゃんと師匠の言うことを理解して駆けだしていく少年の後ろ姿をジッと見つめた。
だがやむを得ない事情があるにしても、勝手に洗礼式を行ったことに対しては、僧兵隊総隊長として文句のひとつでも言わねばならないだろう。
そう思って家に入ったのだが、食糧事情はこの1~2年の間に劇的に向上したようで、新鮮な野菜はもちろんのこと、魔物ではない肉がきちんと食卓に並ぶのを見てエクルーは驚きを隠せない。
結界の外は魔境とも言える。
人間の住む地域に足を踏み入れられない代償として、森の中では魑魅魍魎が普通の動物を食い散らかしていると伝えられているのに、この家の食卓には野生の猪豚らしき肉が上手く焼かれて供されている。
「いったいどうやって……」
「それはこっちが知りてぇよ」
エクルーの呆然とした声にマクロメイが苦笑するが、そのやり取りを見ていた少年──バルトロメイが口の前で人差し指を交差させて『沈黙』を意味するジェスチャーをしてみせた。
「どうやら供給源はこいつらしいんだが、絶対にそれだけは言わねぇんだ。まぁ、こいつにしても畑の奥から引っ張りこんでくるから、『家族』がいまだに心配して持ってきてくれているのかもしれないがな……」
「家族……」
その件についてはバルトバーシュは最初の頃に聞き出したことを上層部には話していたが、あれ以上の情報が出たとは聞いていない。
そして神殿でもめったに奉納されないような上等な肉を食べていると、どちらが追放されたのか錯覚してしまいそうだ。
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