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第二章 アーウェン少年期 領地編
伯爵夫人は家令代理を追いつめる
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アーウェンは緊張していた。
今まではカラとロフェナが自分のそばにいてくれて、クレファー先生もとても優しく勉強を教えてくれた。
エレノアの乳母であるラリティスも時々であるが、義妹と遊ぶ時はいつもそばにいて見守ってくれていた。
そうやって王都邸から真綿に包まれるように守られていたのだが、お義父様がリグレお義兄様とともに領都に隣接する土地を見回りに出る間、領都邸の家令代理であるギンダーがアーウェンのそばにいることを決定したためである。
実父や兄たちから向けられるような蔑みの視線とは違う、何だかもっと厳しいような目付きで睨まれているのを感じ、思わず萎縮してしまってビクビクしてしまい、さらに雰囲気がキツくなったのを感じてまた萎縮する──つまりアーウェンは自分がどう振る舞えばいいのか、わからなくなってしまった。
だがそんな態度を和らげず、ギンダーは査定の目で新しい『坊ちゃま』とその従者、異国人に見えなくもない『先生』を監視し続ける。
何故自分がそんな態度を取るのかという説明は一切せず──むしろ明かしてしまえば、自分の前で取り繕うはずだと決めつけてかかり、よけいに互いを誤解し合い関係は拗れていく。
ヴィーシャムはギンダーに『アーウェン・ウュルム・デュ・ターランド』という名の子供を見極めるチャンスを与えるようにと夫に進言したが、彼にどのような形でアーウェンに添うようにと伝えたのかまでは知らない。
知らないながら、ギンダーの態度がとても執事として、そしてターランド伯爵家に忠誠を誓う者としてふさわしいとはとても思えない。
そう個人的に考え、夫が不在の際にどのような心持ちでアーウェンに仕えているのか、家令代理の考えを聞こうと思った。
「……では、お話を聞きましょう」
「はい、奥様。わ」
「その前に」
「……は」
勇んで口を開こうとしたギンダーが持論を述べる前に、ヴィーシャムは上下関係をハッキリさせるために、あえてその発言に被せて口を閉じさせた。
その態度に一瞬不快そうな表情を浮かべたのを見て、やはり最上級使用人としてはまだ未熟だという感想を持つ。
「あなたは現在、このターランド伯爵家領都邸でどういう役割を担っているのかしら?」
「は……え?……あ、あの……?」
「あなたの役職は?」
「あ……わ、わたくしは、その……王都にいらっしゃいますダレニア様の次席として、この領都邸に勤めます使用人を纏める『家令代理』の籍をいただいております」
「ええ、そうね」
何故そんなことを確認されるのかと、ギンダーは顔に疑問の表情を浮かべる。
だがそこをさらに噛み砕かねばならないのかと、ヴィーシャムが溜息をつくと、理由はわからないながらも不興を買ったと理解してギンダーは息を飲んだ。
「……それはちゃんと理解しているのね。良かったわ」
「は……はい、もちろん」
「では、何故あなたは私の『息子』に対して、不遜な態度を取り続けるのかしら?」
「え……は?……あ、あの……ふ、不遜、とは……?」
ピクリと顔の表情筋が勝手に動く。
それを目に納め、改めてヴィーシャムは溜息をつく──やはり、『あの子』を侮っているのだと。
「何故、旦那様があなたをこの邸に残しリグレとロフェナを連れて領地を回っているのか、あなたに言いつけたことが何なのか、もう一度よく考え、明日からよく仕えなさい」
「え……あ……は……」
「もういいわ。あなたに聞こうと思ったことはすべて聞きました。下がっていいわ」
「え、あの、お、奥様」
何も自分は発言していない。
そう言い訳をしようとしたが、キラリと瞬く美しい瞳がギンダーの思っていることをすべて理解していると言っているようで、ぶちまけようと思っていた疑惑や不信、そして不満も飲み込まざるを得なかった。
今まではカラとロフェナが自分のそばにいてくれて、クレファー先生もとても優しく勉強を教えてくれた。
エレノアの乳母であるラリティスも時々であるが、義妹と遊ぶ時はいつもそばにいて見守ってくれていた。
そうやって王都邸から真綿に包まれるように守られていたのだが、お義父様がリグレお義兄様とともに領都に隣接する土地を見回りに出る間、領都邸の家令代理であるギンダーがアーウェンのそばにいることを決定したためである。
実父や兄たちから向けられるような蔑みの視線とは違う、何だかもっと厳しいような目付きで睨まれているのを感じ、思わず萎縮してしまってビクビクしてしまい、さらに雰囲気がキツくなったのを感じてまた萎縮する──つまりアーウェンは自分がどう振る舞えばいいのか、わからなくなってしまった。
だがそんな態度を和らげず、ギンダーは査定の目で新しい『坊ちゃま』とその従者、異国人に見えなくもない『先生』を監視し続ける。
何故自分がそんな態度を取るのかという説明は一切せず──むしろ明かしてしまえば、自分の前で取り繕うはずだと決めつけてかかり、よけいに互いを誤解し合い関係は拗れていく。
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知らないながら、ギンダーの態度がとても執事として、そしてターランド伯爵家に忠誠を誓う者としてふさわしいとはとても思えない。
そう個人的に考え、夫が不在の際にどのような心持ちでアーウェンに仕えているのか、家令代理の考えを聞こうと思った。
「……では、お話を聞きましょう」
「はい、奥様。わ」
「その前に」
「……は」
勇んで口を開こうとしたギンダーが持論を述べる前に、ヴィーシャムは上下関係をハッキリさせるために、あえてその発言に被せて口を閉じさせた。
その態度に一瞬不快そうな表情を浮かべたのを見て、やはり最上級使用人としてはまだ未熟だという感想を持つ。
「あなたは現在、このターランド伯爵家領都邸でどういう役割を担っているのかしら?」
「は……え?……あ、あの……?」
「あなたの役職は?」
「あ……わ、わたくしは、その……王都にいらっしゃいますダレニア様の次席として、この領都邸に勤めます使用人を纏める『家令代理』の籍をいただいております」
「ええ、そうね」
何故そんなことを確認されるのかと、ギンダーは顔に疑問の表情を浮かべる。
だがそこをさらに噛み砕かねばならないのかと、ヴィーシャムが溜息をつくと、理由はわからないながらも不興を買ったと理解してギンダーは息を飲んだ。
「……それはちゃんと理解しているのね。良かったわ」
「は……はい、もちろん」
「では、何故あなたは私の『息子』に対して、不遜な態度を取り続けるのかしら?」
「え……は?……あ、あの……ふ、不遜、とは……?」
ピクリと顔の表情筋が勝手に動く。
それを目に納め、改めてヴィーシャムは溜息をつく──やはり、『あの子』を侮っているのだと。
「何故、旦那様があなたをこの邸に残しリグレとロフェナを連れて領地を回っているのか、あなたに言いつけたことが何なのか、もう一度よく考え、明日からよく仕えなさい」
「え……あ……は……」
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何も自分は発言していない。
そう言い訳をしようとしたが、キラリと瞬く美しい瞳がギンダーの思っていることをすべて理解していると言っているようで、ぶちまけようと思っていた疑惑や不信、そして不満も飲み込まざるを得なかった。
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