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第二章 アーウェン少年期 領地編
少年は義兄と再会する ②
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周囲の大人は心配をしつつも、子供たちが固まって転がるのに笑みを浮かべる。
特にカラの献身で誰も怪我がなかったことが、よけい安堵の波を広げていた。
困ったことにエレノアが腕の中からぬるりと身体を仰け反らせ、受けとめてもらうことを楽しみだしたため、それを留めるのに苦心することになってしまったが。
アーウェンの勉強や運動の際に、リグレの付き添いも増えた。
もちろんリグレ自身の勉強もあるため、全部一緒にできるわけではないが、都合がつけばアーウェンとともに訓練場で剣を握ることも躊躇わない。
ターランド伯爵家嫡男が参加するというイレギュラーに対して、兵たちは扱いに困るのではないかとカラは思ったが大きな混乱など何もなく、むしろ遠慮なくリグレは叱り飛ばされたり、文字通り投げ飛ばされていた。
「……だ、大丈夫……なんですか?……」
「ええ。それはもちろん」
カラが恐る恐る尋ねる先は、今日は執事服ではなく、皆と同じ訓練服を着ているロフェナである。
「我がターランド伯爵家の直属兵の総大隊長は旦那様です。本日はいらっしゃいませんが、有事に対してきちんと統制が取れるよう、さらには何かあった場合にはご自身が戦えるように定期的に訓練に参加しますよ。リグレ様は貴族学園で多少は運動をされているでしょうが、やはり実戦を含んでの授業はされていないでしょう……騎士科生であれば違うのですが」
「へぇ……」
学問を学ぶ場所がどんな所かわからないカラは感心したが、アーウェンと共にランニングをするリグレの足音は軽い。
本気を出して走れば早いかもしれないが、それでも重量級の兵たちに敵うとは思えないのは、周回の数かもしれなかった。
「年齢的にはアーウェン様の次に若いと言えるけれど、やはり筋肉量や日頃からの訓練に耐えうる体力や持久力、たとえばこの後すぐに模擬剣を持ては打ち合いを始められる瞬発力、経験値もだいぶ違う……役目が違う部隊であればまた行う訓練も違うため、リグレ様に合った訓練ならば、何の苦労もなくついていくことも可能でしょうね」
「え?では……この訓練は、リグレ様には合わない……?」
「そうですね。まだリグレ様は魔法を繰り出す訓練をなされる方が、よほど楽しいに違いない」
『快・不快』で仕事をするわけにはいかないが、まだ少年である──伸びしろを見極めるためにも方向性を知る必要がある。
だからアーウェンが少しずつ体力をつけているこの訓練ではなく、別の『リグレ様に合った戦闘法』を学ぶべきなのであるが──時間は有限であり、長期休暇が終わればまた領地を離れてしまうリグレのワガママを、少しだけでもきいてやりたいと思うのが、ラウドを始めとした大人たちの心配りと思いやりだった。
特にカラの献身で誰も怪我がなかったことが、よけい安堵の波を広げていた。
困ったことにエレノアが腕の中からぬるりと身体を仰け反らせ、受けとめてもらうことを楽しみだしたため、それを留めるのに苦心することになってしまったが。
アーウェンの勉強や運動の際に、リグレの付き添いも増えた。
もちろんリグレ自身の勉強もあるため、全部一緒にできるわけではないが、都合がつけばアーウェンとともに訓練場で剣を握ることも躊躇わない。
ターランド伯爵家嫡男が参加するというイレギュラーに対して、兵たちは扱いに困るのではないかとカラは思ったが大きな混乱など何もなく、むしろ遠慮なくリグレは叱り飛ばされたり、文字通り投げ飛ばされていた。
「……だ、大丈夫……なんですか?……」
「ええ。それはもちろん」
カラが恐る恐る尋ねる先は、今日は執事服ではなく、皆と同じ訓練服を着ているロフェナである。
「我がターランド伯爵家の直属兵の総大隊長は旦那様です。本日はいらっしゃいませんが、有事に対してきちんと統制が取れるよう、さらには何かあった場合にはご自身が戦えるように定期的に訓練に参加しますよ。リグレ様は貴族学園で多少は運動をされているでしょうが、やはり実戦を含んでの授業はされていないでしょう……騎士科生であれば違うのですが」
「へぇ……」
学問を学ぶ場所がどんな所かわからないカラは感心したが、アーウェンと共にランニングをするリグレの足音は軽い。
本気を出して走れば早いかもしれないが、それでも重量級の兵たちに敵うとは思えないのは、周回の数かもしれなかった。
「年齢的にはアーウェン様の次に若いと言えるけれど、やはり筋肉量や日頃からの訓練に耐えうる体力や持久力、たとえばこの後すぐに模擬剣を持ては打ち合いを始められる瞬発力、経験値もだいぶ違う……役目が違う部隊であればまた行う訓練も違うため、リグレ様に合った訓練ならば、何の苦労もなくついていくことも可能でしょうね」
「え?では……この訓練は、リグレ様には合わない……?」
「そうですね。まだリグレ様は魔法を繰り出す訓練をなされる方が、よほど楽しいに違いない」
『快・不快』で仕事をするわけにはいかないが、まだ少年である──伸びしろを見極めるためにも方向性を知る必要がある。
だからアーウェンが少しずつ体力をつけているこの訓練ではなく、別の『リグレ様に合った戦闘法』を学ぶべきなのであるが──時間は有限であり、長期休暇が終わればまた領地を離れてしまうリグレのワガママを、少しだけでもきいてやりたいと思うのが、ラウドを始めとした大人たちの心配りと思いやりだった。
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