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第二章 アーウェン少年期 領地編
少年は身体を鍛える ④
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ラウドが実働から内政へと仕事を切り替えたのは、愛娘のエレノアが産まれてからだった。
冷魔法や水魔法系のヴィーシャムが火魔法系統の属性を持つリグレを出産する際もなかなか難産ではあったが、エレノアはまったく性質が違いすぎて、生命が尽きるかもしれないと危惧されたのである。
ヴィーシャムの妹レーシャムが彼女とは違って弱くとも聖魔法属性だったことを考えれば、ヴィーシャムにもそのような子が宿るかもしれないと考えるべきだった。
しかも彼女自身の魔力量は高く、さらに強い力を持つラウドと番えば──もうすぐ親元を離れて貴族学園の寮で暮らすことになる幼いリグレを残し、妻が命を賭して赤ん坊を産んだとなれば、ラウド自身も息子もその子をただ純粋に愛することができるかどうか疑問だった。
「もう二度と、あのようなことは繰り返さない」
それがエレノア誕生以降に子をもうけなかった理由だが、さすがに一男ではターランド一族の本流としては他の血筋の者たちが静観しているはずもなかった。
本妻が子を産めなくなったのならば、新しい妻を娶ればいい
したり顔で諭す年配者たちは、揃いも揃って我が娘を推薦してきた。
「で?その娘は我が妻より魔力が優れているのだろうな?」
無論そんなものでヴィーシャムを妻と定めたわけではないが、少なくともラウドの両親が重視した条件のひとつがまさしくソレだったのである。
実際リグレの能力はその当時未知数とはいえかなりの魔力量があったし、母の生命力を試すかのように産まれた娘は制御が効かぬほどで、子供部屋に生けられた花瓶の花は三ヶ月を過ぎても枯れなかった。
そもそもヴィーシャム自身が冷魔法を身にまとって産まれたために、危うく自身の魔法で凍りつく寸前だったのだ──比べるのもおこがましいほどの圧倒的な魔力の持ち主である。
それを条件とすれば、誰もラウドにお節介などできるはずもなかった。
しかしもうひとりぐらい子供が欲しい──できれば、嫡男のリグレにはかけられなかった父親らしい心の砕き方をしたいと思っていたのも事実である。
故に、おあつらえ向きと言わんばかりに遠縁のサウラス男爵家に存在したアーウェンを見つけた時は、まさしくこの子こそ得るべきだと直感したのだ。
冷魔法や水魔法系のヴィーシャムが火魔法系統の属性を持つリグレを出産する際もなかなか難産ではあったが、エレノアはまったく性質が違いすぎて、生命が尽きるかもしれないと危惧されたのである。
ヴィーシャムの妹レーシャムが彼女とは違って弱くとも聖魔法属性だったことを考えれば、ヴィーシャムにもそのような子が宿るかもしれないと考えるべきだった。
しかも彼女自身の魔力量は高く、さらに強い力を持つラウドと番えば──もうすぐ親元を離れて貴族学園の寮で暮らすことになる幼いリグレを残し、妻が命を賭して赤ん坊を産んだとなれば、ラウド自身も息子もその子をただ純粋に愛することができるかどうか疑問だった。
「もう二度と、あのようなことは繰り返さない」
それがエレノア誕生以降に子をもうけなかった理由だが、さすがに一男ではターランド一族の本流としては他の血筋の者たちが静観しているはずもなかった。
本妻が子を産めなくなったのならば、新しい妻を娶ればいい
したり顔で諭す年配者たちは、揃いも揃って我が娘を推薦してきた。
「で?その娘は我が妻より魔力が優れているのだろうな?」
無論そんなものでヴィーシャムを妻と定めたわけではないが、少なくともラウドの両親が重視した条件のひとつがまさしくソレだったのである。
実際リグレの能力はその当時未知数とはいえかなりの魔力量があったし、母の生命力を試すかのように産まれた娘は制御が効かぬほどで、子供部屋に生けられた花瓶の花は三ヶ月を過ぎても枯れなかった。
そもそもヴィーシャム自身が冷魔法を身にまとって産まれたために、危うく自身の魔法で凍りつく寸前だったのだ──比べるのもおこがましいほどの圧倒的な魔力の持ち主である。
それを条件とすれば、誰もラウドにお節介などできるはずもなかった。
しかしもうひとりぐらい子供が欲しい──できれば、嫡男のリグレにはかけられなかった父親らしい心の砕き方をしたいと思っていたのも事実である。
故に、おあつらえ向きと言わんばかりに遠縁のサウラス男爵家に存在したアーウェンを見つけた時は、まさしくこの子こそ得るべきだと直感したのだ。
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