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第二章 アーウェン少年期 領地編
伯爵は領都で報告を受ける ②
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どこから手に入れた物だろうと、宝石は宝石──そういう者もいるのだろうが、どうやらサウラス男爵家嫡男の嫁はその類の人間ではなかったらしい。
さすがに手放すことはなかったものの、婚姻式の時ですら身に着けず、「あれは家宝とする」という理由で人目に晒すことを拒んでいるとロフェナは続ける。
「なお他の宝石に関してはほとんどが売り払われ、ごく一部が加工されてサウラス男爵や長男が領村で身を飾って『接待』する際に付けられる程度だとか……その由来を聞いた他のご夫人が、夫の目につかないようにではありますが、装飾品を報酬として与えている、と」
報告を聞くラウドは黙ってうなずくが、若いロフェナは嫌悪感に顔を歪めた。
ターランド伯爵家のように王都で広い敷地を有し、自分たちの抱える兵たちを駐在させることができる高位貴族であれば訓練にも事欠かないが、タウンハウスはあっても本邸が領地にあり、しかもそこが王都から見てふた月以上も旅程がかかるような田舎にある貴族家も多い。
そういう時は王宮の衛兵訓練場で合同訓練をしたり、王都内に訓練場を持つ高位貴族に頭を下げて土産を持って場所を借りねばならないこともある。
それを業腹とする貴族は、もう少し手軽に訓練の場を得る方法を模索した結果、サウラス男爵のように何より金を欲するような弱小の低位貴族に金貨をチラつかせる手法を得た。
相手にヘコヘコと頭を下げるのではなく、「来ていただけて光栄の極み」と『領主』に頭を下げさせるのだ──これほど気持ちの良いことがあろうか。
しかもサウラス男爵当主の代わりに領主館にいる長男が美少年であることはかなり前から有名で、付いてきたはいいものの、娯楽など何もない小さな村で退屈をかこう妻女たちにとってはちょうどいいらしい。
リグレからの物であるため報告書を叩きつけるわけにもいかないが、話の内容は不潔そのものだ。
むしろ自分より幼い主人にこのような穢らわしい話を耳に入れた者の舌を、ロフェナ自ら切り取ってやりたいという気持ちが沸き上がる。
新しい令息となったアーウェンにも溺甘だが、当然本来の主人であるリグレに対してもロフェナの庇護欲は強かった。
さすがに手放すことはなかったものの、婚姻式の時ですら身に着けず、「あれは家宝とする」という理由で人目に晒すことを拒んでいるとロフェナは続ける。
「なお他の宝石に関してはほとんどが売り払われ、ごく一部が加工されてサウラス男爵や長男が領村で身を飾って『接待』する際に付けられる程度だとか……その由来を聞いた他のご夫人が、夫の目につかないようにではありますが、装飾品を報酬として与えている、と」
報告を聞くラウドは黙ってうなずくが、若いロフェナは嫌悪感に顔を歪めた。
ターランド伯爵家のように王都で広い敷地を有し、自分たちの抱える兵たちを駐在させることができる高位貴族であれば訓練にも事欠かないが、タウンハウスはあっても本邸が領地にあり、しかもそこが王都から見てふた月以上も旅程がかかるような田舎にある貴族家も多い。
そういう時は王宮の衛兵訓練場で合同訓練をしたり、王都内に訓練場を持つ高位貴族に頭を下げて土産を持って場所を借りねばならないこともある。
それを業腹とする貴族は、もう少し手軽に訓練の場を得る方法を模索した結果、サウラス男爵のように何より金を欲するような弱小の低位貴族に金貨をチラつかせる手法を得た。
相手にヘコヘコと頭を下げるのではなく、「来ていただけて光栄の極み」と『領主』に頭を下げさせるのだ──これほど気持ちの良いことがあろうか。
しかもサウラス男爵当主の代わりに領主館にいる長男が美少年であることはかなり前から有名で、付いてきたはいいものの、娯楽など何もない小さな村で退屈をかこう妻女たちにとってはちょうどいいらしい。
リグレからの物であるため報告書を叩きつけるわけにもいかないが、話の内容は不潔そのものだ。
むしろ自分より幼い主人にこのような穢らわしい話を耳に入れた者の舌を、ロフェナ自ら切り取ってやりたいという気持ちが沸き上がる。
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