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第二章 アーウェン少年期 領地編
少年はお供達と町を歩く ①
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地図というものは楽しい。
見たことがないのに、道を折れたところ、その次の角、その先、後ろに戻った所、ぐるりと回りこんだもう一本向こうの通りにある店、拓けた場所に設けられた集会所──
アーウェンの家庭教師であるクレファー・チュラン・グラウエスは地図に書かれた文字や小さな絵や何かの記号を指差し読み上げ、実際にそこにあるのかを見に行こうと言った。
馬車ではなく、徒歩で。
そうしてアーウェンと専属従者のカラ、クレファー先生の他にも護衛三人という少しばかり目立つ集団で町を散策したのである。
「あっ!ありました!アーウェン様、本当にありました!」
「ほんとだね!」
カラが驚いたように指をさして声を上げると、アーウェンも同じように興奮して笑う。
王都では文字や数字の読み書きなどできずとも店などの場所を覚えて生きてきたカラも、『地図』などという代物があることは知っていても使ったことはなかった。
何せ使われている紙はとても高価で、とてもカラの給金などでは手に入らなかったし、入ったとしても文字が読めないとなれば宝の持ち腐れである。
そんな物に金を使うぐらいなら、少しでも母が身を売らずに済むように施設に上納するほうがよっぽど有意義だった。
でも今やそんな心配をすることもなく、母は健全に施設付属の食堂で働いたり、妹はこれから独り立ちするための教育を受けることができ、そしてカラはこうやって自分の見聞を広げることができている。
ただの下働きからいつどうやってか記憶にない呪いから解放されたと思ったら、養子とはいえ伯爵令息の専属従僕として取り立てられ、ゆくゆくは専属の執事も兼務するようにと教育されている最中という、貧民院育ちの身の上からは考えられないほどの好待遇だった。
見たことがないのに、道を折れたところ、その次の角、その先、後ろに戻った所、ぐるりと回りこんだもう一本向こうの通りにある店、拓けた場所に設けられた集会所──
アーウェンの家庭教師であるクレファー・チュラン・グラウエスは地図に書かれた文字や小さな絵や何かの記号を指差し読み上げ、実際にそこにあるのかを見に行こうと言った。
馬車ではなく、徒歩で。
そうしてアーウェンと専属従者のカラ、クレファー先生の他にも護衛三人という少しばかり目立つ集団で町を散策したのである。
「あっ!ありました!アーウェン様、本当にありました!」
「ほんとだね!」
カラが驚いたように指をさして声を上げると、アーウェンも同じように興奮して笑う。
王都では文字や数字の読み書きなどできずとも店などの場所を覚えて生きてきたカラも、『地図』などという代物があることは知っていても使ったことはなかった。
何せ使われている紙はとても高価で、とてもカラの給金などでは手に入らなかったし、入ったとしても文字が読めないとなれば宝の持ち腐れである。
そんな物に金を使うぐらいなら、少しでも母が身を売らずに済むように施設に上納するほうがよっぽど有意義だった。
でも今やそんな心配をすることもなく、母は健全に施設付属の食堂で働いたり、妹はこれから独り立ちするための教育を受けることができ、そしてカラはこうやって自分の見聞を広げることができている。
ただの下働きからいつどうやってか記憶にない呪いから解放されたと思ったら、養子とはいえ伯爵令息の専属従僕として取り立てられ、ゆくゆくは専属の執事も兼務するようにと教育されている最中という、貧民院育ちの身の上からは考えられないほどの好待遇だった。
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