その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ

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第二章 アーウェン少年期 領地編

伯爵は迎えに出る ①

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貴族といえどたかが小娘──そう侮っていたのかもしれない古着屋の店主はサァっと顔を青褪めさせ、無表情で細剣を向ける侍女とラリティスを交互に見てゴクリと喉を鳴らしつつ頷いた。
兄も妹も互いを守るように抱き合いながらカタカタと小さく震えていたが、エレノアはいつもの笑顔を封印ながらも怖がることもなく落ち着いて、後ろに控えていた侍女たちに囲まれ守られている。
「ア、ア、ア、アンタの主って……べ、別に違法なことなんか、してないって……そりゃ確かに娼婦の見習いっていう名目で身の回りの世話をさせるって聞いたことはあるけど、あんな小さい娘っ子なんぞに客を取らせるなん…て……」
焦ったようにベラベラと喋っていた店主だが、次第に力なく口籠る。
そして何か心当たりがあるのか──いつの間にか背を丸め、上目遣いにラリティスを伺いながら揉み手した。
「い、いや、今のは言葉の綾で……ええ、そんな非道なこと、するわけないじゃないですか」
「そうですか?私は何も訊ねていませんが」
「えっ…あっ…あっ、いやっ……」
笑みを深めるラリティスが言ったのは、確かに「面白いお話」という言葉であり、タリーのような幼女に性接待をさせているかどうかなど、ひとことも問い質してはいない。
そのことを思い返し、店主はさらに顔を青褪めさせた。
貧民街の兄妹のことは知っていたが、この新顔の貴族のことは知らない──知らないが、何故かヤバい状況に陥りかけている気がしてならない。


古着屋に店を閉めさせ、護衛たちにもう一台の馬車を手配させた頃──

ラウドはこの町を含む一帯の自治権を託したウェデリアン伯爵家当主デミアス・キニーの帰還予定の報告を、ようやくといった気持ちで手に入れた。

もうこの町に滞在して数日は経っているのに、本当にようやく、だ。

それは王都邸で専属執事を勤める父のバラット・エイブ・トゥ・ダレニアの代わりに、この旅での執事として側にあるロフェナも同感である。
確かに領主として任されている領を巡って見守るのは当然だが、早馬を駆って大領主であり一族の長であるラウド・ニアス・デュ・ターランド伯爵の到着を知らせる忠臣はいないのか、思わず今後も変わらずこの地を任せていいのかと不安に感じた。
「……して、いつ頃戻ると?」
「ハッ……その……」
「臆せず申せよ」
「……恐れながら。ウェデリアン伯爵は現在隣領のクァイニース伯爵を訪ねており、会合が終わり次第戻ると……」
「ほう………」
隣領といえど位置によっては馬で一日あれば往復できるはずだが、今出たクァイニース伯爵領はそんなに近くなく、復路に三日はかかる。
それに確かウェデリアン伯爵は領内の視察に出ているはずで、隣領まで足を延ばす理由などこの季節にはないはずだ。
しかも内容のわからない『会合』で何を話し合っているのやら──『終わり次第』の日時も明らかにしてこないこともまた不信感を呼んだ。


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