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第二章 アーウェン少年期 領地編
伯爵は旧知との再会を予感する
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高位貴族が養子を取るのは珍しくはない。
当主に娘しか産まれず、近親に後継ぎ以外の男児がいる場合。
そもそも当主に子が恵まれなかった場合。
男児がいたとしても夭折した場合。
それ以外にも成長しつつある嫡男に先が見えず、廃嫡も視野に入れた未来しか考えれない場合、スペアとして近親で年齢の近い者を迎え入れることもある。
だがターランド伯爵家の後継者であるリグレ・キュアン・デュ・ターランドにはいささかの瑕疵もなく、頭脳も明晰で、魔力も申し分がない。
その性質は母譲りの氷魔法ではなく、父のように気温を操る方面が昂じて火属性と探索などの補助系魔法を操れるなど将来有望と見られており、国軍でも後方部隊として魔法支援を行っているターランド伯爵家に斜陽の陰りはなかった。
だからこそキャステ騎士爵家と縁ができたサウラス家の次男や三男ではなく、存在自体が明らかになっていなかった末子を引き取ったことが公になると、ターランド伯爵家が武力を得て更なる軍事力と国政に口出しを企んでいると勘繰る者も出るかもしれない。
だがそれでもラウドは手にしたか弱い少年を手放す気はなく、忠実なる従者も手に入れることができ、さらには優秀な家庭教師に珍しい異国の料理を作る一家まで手に入れることができた。
たったひとつの宝を得ようとして、その手中にはいくつもの珠が転がり込んできたようなものである。
妻が午睡を取るためにこの別邸にある自室へと籠り、ラウドはロフェナに茶を淹れるようにと合図した。
別邸の給仕係が下がり、この地で量産されるものの中でも品質の高い茶の香りを楽しみながら、ラウドは安堵の溜息をつく。
「……こうなると、噂が広まる前に領に着けて良かったな」
「チュラン・グラウエス一家に関しては、ひょっとするといまだ王都までは広まっていないかもしれません。あの市に立ち寄った時に、領主様は不在でありましたし」
「確かに……市民が異動するというのは領地として損失ではあるし、あの市長がまともであればすぐにでも住民増減の報告は上げるだろうが、原因が異国から嫁入りした女性の子孫を力尽くで手に入れようとして逃げられたためとは言えんだろうな」
王都に残る家令のバラットに代わって相槌を打つロフェナの言葉に、ラウドはふっと鼻で嗤う。
だいたいチュラン・グラウエス一家がいた市を含んだ領を治めるキンフェニー公爵はいまだ王都におり、市長を務めるヒューマット子爵は親子ともどもの好色さを吹聴されるようなことはするまい。
ただ珍しいものが好きなキンフェニー公爵がターランド領までやってくることは想定しており、その際には彼の思惑ほど市の運営が上手く言っていないことは指摘しなければならないことも想定している。
「それはあちらがやってくることがわかってからではあるが」
「さようでございますね」
「それはそうとして、最近のアーウェンはどうしている?私の馬車に同乗することも少なくなってしまって、父としては寂しい限りなのだが……」
「アーウェン様はだいぶ騎乗することに慣れ、馬車での移動よりも警護担当の者との同乗を楽しまれております」
表情を一変して本当に寂しそうな顔をする主人に対し、ロフェナは想定内の質問にそう淀みなく答える。
「そぉか~~~~~…………」
できれば自分が同乗し、まだ慣れぬアーウェンと共に遠乗りをしたかった。
ガックリと頭を落とす主人の声にならぬ願望を受け止め、ロフェナは父であるバラットが何故微笑を絶やさずにお相手できるのかと、必死になって笑いをかみ殺した。
当主に娘しか産まれず、近親に後継ぎ以外の男児がいる場合。
そもそも当主に子が恵まれなかった場合。
男児がいたとしても夭折した場合。
それ以外にも成長しつつある嫡男に先が見えず、廃嫡も視野に入れた未来しか考えれない場合、スペアとして近親で年齢の近い者を迎え入れることもある。
だがターランド伯爵家の後継者であるリグレ・キュアン・デュ・ターランドにはいささかの瑕疵もなく、頭脳も明晰で、魔力も申し分がない。
その性質は母譲りの氷魔法ではなく、父のように気温を操る方面が昂じて火属性と探索などの補助系魔法を操れるなど将来有望と見られており、国軍でも後方部隊として魔法支援を行っているターランド伯爵家に斜陽の陰りはなかった。
だからこそキャステ騎士爵家と縁ができたサウラス家の次男や三男ではなく、存在自体が明らかになっていなかった末子を引き取ったことが公になると、ターランド伯爵家が武力を得て更なる軍事力と国政に口出しを企んでいると勘繰る者も出るかもしれない。
だがそれでもラウドは手にしたか弱い少年を手放す気はなく、忠実なる従者も手に入れることができ、さらには優秀な家庭教師に珍しい異国の料理を作る一家まで手に入れることができた。
たったひとつの宝を得ようとして、その手中にはいくつもの珠が転がり込んできたようなものである。
妻が午睡を取るためにこの別邸にある自室へと籠り、ラウドはロフェナに茶を淹れるようにと合図した。
別邸の給仕係が下がり、この地で量産されるものの中でも品質の高い茶の香りを楽しみながら、ラウドは安堵の溜息をつく。
「……こうなると、噂が広まる前に領に着けて良かったな」
「チュラン・グラウエス一家に関しては、ひょっとするといまだ王都までは広まっていないかもしれません。あの市に立ち寄った時に、領主様は不在でありましたし」
「確かに……市民が異動するというのは領地として損失ではあるし、あの市長がまともであればすぐにでも住民増減の報告は上げるだろうが、原因が異国から嫁入りした女性の子孫を力尽くで手に入れようとして逃げられたためとは言えんだろうな」
王都に残る家令のバラットに代わって相槌を打つロフェナの言葉に、ラウドはふっと鼻で嗤う。
だいたいチュラン・グラウエス一家がいた市を含んだ領を治めるキンフェニー公爵はいまだ王都におり、市長を務めるヒューマット子爵は親子ともどもの好色さを吹聴されるようなことはするまい。
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「それはそうとして、最近のアーウェンはどうしている?私の馬車に同乗することも少なくなってしまって、父としては寂しい限りなのだが……」
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