その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ

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第二章 アーウェン少年期 領地編

家庭教師は成長を見守る ①

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────ッチ。

それは人形の首を括っていた糸の最後の繊維が切れた音か、ソレの舌打ちか。
「……もう少し、役に立つと思ったんだけどなぁ…………」

まあいいか。

そう見切りをつけたのに。
つけたのに。

ゾワリゾワリと身体中から何かが抜け落ちる悪寒に、血の気が引くのがわかる。
「まっ……クッ……ッチ……あ…の……クソ…がぁ……それっ……ぼ…くの……」

僕のモノなのに。

アレの価値をわからないバカが、アレの存在をぞんざいに扱うから。
成長しきってから捨てればよかったのに。
成長しきれば、もういらないから、抜け殻になったのを捨てればよかったのに。
金に目がくらんだせいで。

少し距離・・があっても、繋がってさえいれば問題はなかった。
だから監視と今まで通り呪薬で『他人から疎ましく、しかし殺さず』生かしておいたのに、まずその監視役が死んだ・・・
呪薬など見つかってしまえば、懲罰の対象となってしまうから簡単に傀儡術にかかった奴を使ったのに、そいつは見た目よりはるかに脆かったらしい。
だから言い訳をつけてアレを引き取らせにバカを遣わせたのに。
バカは連れて帰ってくるどころか、僕を閉じ込めようとしやがった。
本当に役立たずだ……死の呪薬が効かないから、切り捨てることすらできない。

僕のモノ────いつか、取り返してやる。
それまでは、生かしておいてやる。



──何という『大甕』か。
王都のターランド伯爵邸を経ってからまだ半年足らずだというのに、アーウェンは馬車を停めた休憩中に、警護兵で見回りを外れている者から型を習って木刀を振っている。
さっきまで揺られる馬車の中でクレファー・チュラン・グラウエスから数学を習っていたというのに、まるでスイッチが切り替わったかのように、その表情は勉学の時に見せる好奇心に輝くものではない。
それは専属従者のカラも同じで、主人の横に立って同じく木刀を振っている。
「……少年とは、まさしく成長著しい」
「本当ですね」
横に立つのは、自分よりふたつ年下で十八歳の執事であるロフェナ・グラウ・トゥ・ダレニアだ。
産まれた時からターランド伯爵家の執事という仕事が決まっていた青年だが、将来は次期ターランド伯爵であるリグレ・キュアン・デュ・ターランドの専属執事となり、ゆくゆくは家令を勤めるのだろう。
妹である十六歳のシェイラ・チュラン・グラウエスと同い年のラリティスという少女と恋仲であり婚約者でもあるが、そんな素振りは一切見せない。
どういう教育をしたらたかだか十八歳の青年──少し前までは『少年』と呼ばれる未熟者だったはずなのに、二十歳の自分よりも大人らしく振る舞えるのだろうか。
クレファーはまじまじとロフェナを見るが、返ってきたのは賢者のような微笑だけだった。


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