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第一章 アーウェン幼少期

少年執事は問題未遂を退ける ①

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食堂の汚れは速やかに排除され、妻たちからこの屋敷に残る意向を示した女中とその連れ合いについて聞くと、ラウドは軽く頷いた。
「給金についてはターランド伯爵家から引き続き支給しますので、そのふたりに関してはお気遣いなく。ただし屋敷内の使用人全般の再教育に関しては、彼らに全面的に任せるという了承だけいただきたい」
「ああ、構わんよ。うちの領の者も結局は田舎暮らしで、皆顔見知りということでなあなあになってしまう。キッチリ締めてもらって、後任育成が可能になれば有り難いと思っておこう」
「となると、試用期間など新たに規則決めが必要になりますね、小父上。そちらも我が家のやり方で染めてしまっても?」
「構わん、構わん。いっそこちらに奉公見習いに寄こしたい者もおるぐらいだ。やはり王都で仕込まれた者は、『使用人』という立場でも立ち居振る舞いが違うわい」
それから更に、ターランド伯爵領から執事教育に適した者を派遣するということで、男たちの話は完了した。


アーウェンとエレノアは昼食後に軽く昼寝をした。
本来ならばアーウェンの年齢であればもう必要のないものではあるが、足りな過ぎた栄養を正常に取り込んで成長しようとしている過程では、身体だけでなく脳も休息を求め、三歳のエレノアと同じぐらいアーウェンは眠りを必要とした。
その間は従僕であるカラやロフェナには仕事がなく、休憩を認められたために一緒に町を歩いて回る。
王都のターランド邸ではなかなかゆっくり話す機会がなかったため、こういった時間を持つことは互いの認識をすり合わせるだけでなく、カラ自身のことについても理解を深めるいい機会だと思っていた。
ただしこの町には暇を潰せるような店は常に町民の目が光ると言っても過言ではなく、座って落ち着きつつ話すためには宿屋の食堂ぐらいしかない。
そういえば宿にはクレファーもいたはずとロフェナは思い出し、カラをそちらへと誘って向かった。
「あ!ロ、ロフェナ様っ」
少し上ずった声で名を呼ばれ、わずかにロフェナは眉を顰めた。
うっかりしていたが、クレファーがいるということは彼の両親であるイシューとパージェだけでなく、妹のシェイラもいることを失念していた。
すでにロフェナには将来を約束した恋人がいることは公認されているが、それはターランド伯爵家内の事情であり、『客人』という認識の料理人一家については詳しく話すつもりも親しく交わるつもりもなく、軽く微笑んでロフェナは食堂の奥へ席を決めてカラと共に座った。


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