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第一章 アーウェン幼少期

少年従者は憂いを失くす ①

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グリアース伯爵家にはすでに三人もの令息がおり、しかも長男にはすでに子供がいるため、後継者問題はまったく起きてはいない。
そのためカラを養子にするのではなく、あくまで経済的援助を中心とした後ろ盾となる。
むろんターランド伯爵家からもアーウェンの専属侍従として手当は出るし、それも安い額ではない。
それでも──
「王都しか知らんお前さんなら、母御も妹御も外を知らんかもしれん。それでも王都で肩身の狭い暮らし方をするよりか……誰も顔見知りのおらんこの町で暮らすのもいいかもしれん。ラウドがお前さんの育った施設がある辺りを買い取って清浄しようとしておるようだが、まあ万が一…ということもある。変に執着するような男がおらんとも限らんからの。早めに迎えに行くわい」
「それがいいでしょう。私も久しぶりに孫に会いたいわ。クージャのことが片付き次第、あなたのお母様たちを訪ねて、こちらに来ていただけないかと話すわ」
「あ……あり、がと……ござ…ます……」
幼すぎる妹のことも、その妹と自分を育てるために身を売らざるを得なかった母のことも、見捨てたつもりはなかったが気にはなっていた。
カラの育った施設を含めたあの区域から、劣悪な環境はきっとなくなるだろう。
どこよりも高潔な孤児院や貧民院ができるかもしれないが、彼らが真っ当な仕事に就けるかどうかはわからない。
過去に後ろ暗い仕事をしていた者は足元を見られ、けっきょく同じ仕事しか斡旋してもらえない可能性が高いのだ。
しかしそれをすべて捨てて、王都を捨てて、この町に越して来れたなら──
「そろそろこの屋敷にもちゃんとした住み込みを就けた方が良さそうだしな……お前さんの母御に良い人がいるならば、その者もちゃんと面談して連れてくるなり別れさせるなりして、ちゃぁんと面倒を看てやるぞ!きっとお前さんの妹ならば可愛いだろうな!」
「その際はクージャも躾け直さないといけませんわ、あなた。使用人を自分の欲情処理と見なすような愚を犯すならば、放逐ではなく死ぬまで館から出せませんもの」
「おお!そうだな!」
そうグリアース伯爵夫妻は互いにニヤリと少し悪い笑顔を浮かべ、カラが口を挟む間もなくどんどん話は進んでいく。
聞いているだけしかないカラは、いったい自分たち親子はどうなるのかと少し心配になりながらも口を挟むことができない。
「まあ…どうなろうと、ちゃんとお前さんにはちゃんと報告をするわい。えぇと……ラウドたちと行くんじゃろう?」
「はい……二年間、アーウェン様のお世話で領地に参り、その後は専属従者としてアーウェン様と共に旦那様がご懇意の辺境伯爵様の領地へ参ります」
「うむ」
アーウェンは今いち理解していないようだが、カラはしっかりと言われたことを覚えていて、今後の予定をざっくりと説明した。


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