その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ

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第一章 アーウェン幼少期

伯爵は義息子の急成長を訝しむ ②

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そうして迎えたその日の遅い晩ご飯に、ラウドは危うく喉を詰まらせかける。

アーウェンの食事だ。

量は確かに少ない。
それはもちろんまだ内臓が大量の食べ物を受け付けるに至っていないからではあるが、だが今目の前に座っている少年は、エレノアよりもぎこちない動きで使っていたカラトリーを完全に正しく使い、ゆっくりではあっても綺麗に食べていく。
カラも同じテーブルに着き、呪いの影響が出ていないかを観察されるために同じ物を食べているが、やはりアーウェンの変わりようを目にしてその動きが止まっていた。
見つめる四つの目──実際には給仕のためにいる侍従、ラウドの側で控えるロフェナ、食事を取り分けるために壁に控えている侍女など、ターランド伯爵家の者たち皆が注視しているのだが、アーウェンは臆せずひと口ひと口を味わっている。
その様子も今までとはかなり違って、ラウドは思わずグッと喉を鳴らしそうになった。
それを見てグリアース伯爵もそれなりの量を平らげながら、溜め息をつく。
「……いや、お前が感極まるという珍しいものを見れたのは良かったが、いや確かにアーウェン坊の変わりようを見れば当然か……それにしても『呪い』とは恐ろしいもんだな……」
「ええ。私自身は『呪術』とは薬と暗示を使うまやかしのようなものと思っていましたが、アーウェンだけでなくカラ自身から小父殿が言うような『呪い』らしきものが抜けるのを実際見てからは、やはりいわゆる禁忌魔法の類を使える者がいるかもしれないと今では思っています」
「うむ……」
「ただその者がどこにいるのか……見当がないわけではないが、確証がない。そしてそう言ったことを行えるかという確信もないのです」
それは王都のサウラス男爵家はもとより、男爵領村で怪しまれないように情報を集めている『耳』たちからの報告を総合しての判断ではあるが、いくつか腑に落ちない点があるためラウドは執事長代理として身近にいるロフェナにすら、まだ自分が考えていることを気軽には口に出せないでいる。
「なるほど……なかなか難しい問題のようだな」
「はい。しかしそれよりも今は……落ち着いてからとなりますが、アーウェンから直接話を聞かねば……」
「うむ。私も今夜は妻を迎えるから、お互いゆっくりと話し合おう」
「そうですね……」
たった一回の食事でアーウェンがふっくらとするわけではないが、それでも少しは肉がついたのではないかとラウドは満足げに自分の皿を下げさせ、食後の飲み物を持ってくるようにと合図した。


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