その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ

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第一章 アーウェン幼少期

伯爵は知人を助けることを選択する ①

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その問題の解決はグリアース伯爵だけではどうしようもないのだろうか──依頼された『不正』を見つけることはできた。
しかし、その原因は今この町にはいない。
「だからと言って道を曲げて港町までは……アーウェンにいろいろなものを見せたいとは思っているが……しかし……」
さすがに港町は遠すぎる。
ターランド伯爵領へ向かう方角とは正反対であるため、行きに一週間、グリアース伯爵の次男を見つけてどのような手段でも『説得』して連れ帰るにまた一週間。
それから領都に向かうとなると──
「いやいや、まさかそこまではさせん!これを見るに……どうやら鍵はろくでもない女のようじゃ。一体どこから見つけてくるのか……しかしいい歳の息子を屋敷に閉じ込めておくわけにもいかんじゃろうて……せめて身を固めてくれそうないいお嬢さんでもおればなぁ……」
「さすがにこちらの嫁候補を連れては来ていませんよ。王都の当主代理にでも声掛けを尋ねてみては?伯爵家次女以下ならば、まだ嫁ぎ先のない令嬢がいるかもしれません」
「王都育ちか……そのような育ちでこんな田舎町を我慢できるかの……?」
「その言葉をぜひ夫人に申し上げてください」
いい笑顔でラウドが進言すると、グリアース伯爵は慌てて手と首を振って、自分の失言を認める。
確かにグリアース伯爵の夫人であるターニャはこの町で生まれ育ったが、その環境を『こんな』と言われて笑顔でいられるほど寛容ではない。
それにしても妙なことに一定期間だけ奔放な女性と知り合って付き合い、別れ、また町政が回復するとどこからか誑かすための女が湧いて出る。
「その元凶を突き止めねば、またこの町を盛り返し、ご子息に番を宛がおうとまた誑かされるでしょうね」
「じゃろうなぁ……どれだけ己がアホなのか、この日記を読み返したりせんなんだか……」
ガックリと肩を落とした老伯爵は、久しぶりに会った時よりもずいぶん老けてしまったような印象だ。
ラウドは慰める気持ちを込めて、酒ではなく茶ではあるが、そのカップを持って側に座る。
「……カラを置いていくことはできませんが、いずれこちらに人を寄こします。我が領都でもなるべくこちらに馴染めるような者を……」
「うむ……しかしまずは息子が不当に扱った者たちを解放せねば!」
「それぐらいならばお手伝いいたしますよ?」
港町への往復を考えれば、ここで後二~三日ほどここに滞在するのはアーウェンの回復にもいいだろう。



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