その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ

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第一章 アーウェン幼少期

少年従者は幼い主人の闇を知る ①

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カラが困る様子を見、そしてアーウェンがどうしていいのかわからずに突っ立ったまま辺りを見回しているだけなのを見て、さすがにグリアース伯爵はいろいろ悟ったらしく、無言で頷いた。
「ちょっと王都にいる息子に連絡して、この町にあるような遊具を作って『公園』に置けるか、そういった環境を整えるか掛け合ってもらおう」
「はい……しかし……」
「まぁ、お前さんが考えているように、すぐに高位貴族の子供たちが、下位貴族やら平民やらの子供たちと共に遊ぶということにはならんだろうから、そこらへんは徐々に……だ。ラウドのやっておることは、アレの父親を通じて聞いておるしな」
「先代伯爵様は……ご存命なのですか?」
「ん?ああ、元気じゃよ。あいつは領地の一地方に引っ込んでおるから、戻ったらそのうち領都の本邸の方に顔を出すだろう。お前のことはよぉく私から連絡しておくからな。ゆっくり旅を楽しむがいい」
「えっ…と……あ、の……は、はい……」
喜んでいいのかどうかわからず曖昧にカラは返事をしていたが、その間にアーウェンは公園の茂みの方に向かって軽く走り出していた。
「ほぉっ?!あんまり細いから走ることもできんと思っておったが……なかなか……おいっ?!」
「アーウェン様っ!」
走ることは、できる。
幼すぎる男爵領村での数日間という悲惨な体験をしたが、その間だけは本意でないとしてもアーウェンは土を踏み『走る』ということができた。
その後はまったく男爵家から出してもらえず足は萎え切っていたが、ターランド伯爵家ではやってきた三日後からは少しずつ警護兵たちの訓練に混じり、まずは体力作りからと軽い運動を半年以上行ってきたのである。
だが──
「おかしい?!アーウェン様っ!様子が変です!私はアーウェン様を追いますので、こちらにいてください!」
茂みに飛び込んでしまった小さな主人の後を追い、カラは木々の間を通る小道に踏み入れた。


「アー……ウェン……様……?」
にやり。
屈みこんでいた小さな背中がビクリと震え、こちらを向いた時にアーウェンが浮かべたその笑みを見て、カラは顔を青褪めさせた。
その小さな手元にはピクピクとまだ痙攣している子ウサギが血を流して倒れ込んでいる。
そしてアーウェンの手には──血の付いた少し大きめの石。
「ぼく……も……できた、よぉ……」
あ、とアーウェンがまたウサギの方を見たのは、ビクリと後ろ脚が動いた気配に気づき、さらに殴打しようと石を持った腕を振り上げる。
「ちゃ……ん、と……とどめ……ささな、い……と……ぼくは……僕、が……僕……」
そこでやっと気が付いたかのようにアーウェンは目の前で息絶えようとしている小さな命と、自分の手に握られた石、そして背後に立つカラをもう一度見て──そのまま気絶した。


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