その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ

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第一章 アーウェン幼少期

少年は生まれて初めてブランコに乗る ①

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存分に可愛がったろうと言われてアーウェンは解放されるかと思ったが、次は町を案内して公園まで散歩したいと言い出されてしまった。
「まったく……では、この子の専任従者がいますから、出掛けるならご一緒にお願いします」
「おお!よしよし!私がその者がこの子にふさわしいか、見極めようぞ!」
何か企むように勢いよく胸を張ったグリアース伯爵は、呼ばれてきたカラを見てたちまちアーウェンと手を繋いでいない方の手を繋ぎ、機嫌よく名前を訪ねる。
「こんな良い子をふたりも!狡いぞっ、ラウド!!名前は何という?少年よ!」
「はっ……はい……わ、私はカラと申します…がっ!」
「よし!ではアーウェン!カラ!ともにこの町の悪を暴きに行くぞっ!我に続けっ!!」
「は…はいっ」
「わっ…よっ、よろしい…の……?」
「よい、よい!お前の主人なぞ今日は気にするな!今日はお前も私をお前の爺と思って甘えて良いぞ!欲しい物は無いか?ん?」
カラがラウドの方を向こうとするのを無理やり引っ張り、グリアース伯爵が豪快に笑うと、もう片方の伯爵は苦笑するしかない。
「……好きにさせてやれ。カラ、あまり我儘をいうものではないが、今日だけは本当に祖父ができたと思って甘えて来い。お前も母の顔しか知らんのだから、たまにはいいぞ」
「ん……?お前は父無しなのか?」
「はっ……母と妹共に、その……貧民救済のための施設で育ちました。父の顔は多少覚えてはいますが……祖父母という方には会ったことはありません」
「なっ……何とっ……クッ……ラ、ラウドッ……やはり王都の闇はまだ深いのぅ……」
またもや泣き出しそうな老伯爵に向かい、ターランド伯爵は肯定の頷きを返す。
「ええ。この町のように子育てが家業に直結するわけではありませんから。労働を嫌うが故に食うに困る者たちが集まるということもあるでしょう……いつでも犠牲になるのは子供たちです……」
「……この子の後見になるわけには」
「なりません。カラの母御に許可を取らずに何をおっしゃってるのか!とりあえず現状を確認に私が役所に参りますから、ご老体は孫代わりにそのおふたりを連れて町を散策ください!」
最後の方では蹴り出す勢いで、ラウドは三人を宿屋から出す。
宿料や食事代をボッタくったり、若い女性を侍らせてご機嫌を取ろうと画策していた宿屋の夫婦は、領主であるタークジャ・デルー・デュ・グリアース伯爵その人が現れ、しかも目標に定めた客が『小父上』と呼びかけるのを聞いて震えあがっていた。


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