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第一章 アーウェン幼少期
義兄妹は行進に目を奪われる ③
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ようやく辿り着いた広場にいるのは大半が子供ばかりで、大人ばかりが二十人ほどのターランド伯爵一行は異色と言えば異色だった。
最初は見慣れない団体に視線をやる者も多かったが、ゾロゾロと憲兵の音楽隊が出てきて音合わせを始めると、子供たちがワァッと歓声を上げた。
ドドーンッ!と大太鼓が鳴らされるといつの間にか広場の端に整列していた憲兵隊がザッザッと足音高く行進を始め、賑やかな音楽が始まる。
「今日は『青い空、白い雲、大砲を鳴らせ』だっけ?」
「そうそう!ちゃんと合わせろよ!サンッ、ニィッ!」
子供合唱団だろうか、彼らもいつの間にかきちんと整列し、音楽に合わせて歌を歌い始めた。
どうやらこれは憲兵たちにも知らされていなかったらしく、指揮者を始め、音楽隊も行進する憲兵たちも一瞬驚いた顔をしたが、先ほどよりも張り切ってそれぞれ演奏や行進を続ける。
「ぜんたーい!止まれっ!!」
ザッ、ザッ、ザッ!
二隊が向き合い、敬礼し、クロスするように片側は憲兵控えの門へ向かい、もう片方は最初に行進してきた方へ身体を向けて行進する。
広場の端と端に離れるとまた新しい音楽が始まり、今度は憲兵隊隊歌が高らかに歌われた。
大人たちの野太い声に子供たちの軽やかな声がハーモニーとなったが、最後の方でひとりの憲兵が広場の端から女性の手を引いて、人のいない広場の真ん中へと歩いて立ち止まる。
「……子供合唱団に協力してもらったんだ。僕はやっと憲兵隊の交代式にも参加できるようになった。今日初めての憲兵交代式に参加できた記念に、僕に君の手を取って一生を共にする喜びを与えてもらえないだろうか?」
いわゆる公開プロポーズである。
予定にない行動に憲兵隊長は苦笑いしながらも咎めようとはせず、逆に静かに演奏を続けるようにと指揮者に指示を出した。
「………はい。あ、ありが……とっ……で、も……私っ……」
「君が孤児院出身だとしても、君がここにいるということは、君にはご両親がいたんだ。今日ここにいる人たちが皆、君の親代わりだ!君のその返事だけで、ここにいる人たちはきっと僕たちの婚姻を許可してくれるよ」
「許可します!!」
誰かが合図をしたわけでもないのにその声は揃って若い二人を祝福し、広場中に歓喜の声が溢れる。
エレノアはキラキラとした目で母と乳母を交互に見て、キャーキャーと声を上げて一緒に喜んでいるが、アーウェンには今何が起きているのかがよくわからない。
「と……父、様……あの……あの人たち、は……?」
「ん?あ…ああ……うーむ……つまり……恋人が婚姻の申し込みをして、それを受け入れて……」
「あなたったら……アーウェンには難しいですわよ。『一緒のお家で暮らしましょう』と男の人が言って、『いいですよ』と女の人が言ったの」
「いっしょに……」
「ええ、一緒に」
「僕が、ノアといっしょにいれる、みたいに……?」
「えっ……ええ……それとはちょっと違うけど……でも、似てるかしら?もう少し大きくなったら、きっとちゃんとわかるわ」
「お前もちゃんと説明できないじゃないか……」
「だってぇ……」
若いふたりを祝うムードにあてられたのか、ラウドとヴィーシャムの間も何だかいつもより甘い。
アーウェンにはその変化がなぜ起こったのかわからず、憲兵たちにもみくちゃにされる若い兵と、女性が友人たちに囲まれて花で作られた冠を被せてもらいながら泣き笑いしているのを、ただ不思議そうに見つめるだけだった。
最初は見慣れない団体に視線をやる者も多かったが、ゾロゾロと憲兵の音楽隊が出てきて音合わせを始めると、子供たちがワァッと歓声を上げた。
ドドーンッ!と大太鼓が鳴らされるといつの間にか広場の端に整列していた憲兵隊がザッザッと足音高く行進を始め、賑やかな音楽が始まる。
「今日は『青い空、白い雲、大砲を鳴らせ』だっけ?」
「そうそう!ちゃんと合わせろよ!サンッ、ニィッ!」
子供合唱団だろうか、彼らもいつの間にかきちんと整列し、音楽に合わせて歌を歌い始めた。
どうやらこれは憲兵たちにも知らされていなかったらしく、指揮者を始め、音楽隊も行進する憲兵たちも一瞬驚いた顔をしたが、先ほどよりも張り切ってそれぞれ演奏や行進を続ける。
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広場の端と端に離れるとまた新しい音楽が始まり、今度は憲兵隊隊歌が高らかに歌われた。
大人たちの野太い声に子供たちの軽やかな声がハーモニーとなったが、最後の方でひとりの憲兵が広場の端から女性の手を引いて、人のいない広場の真ん中へと歩いて立ち止まる。
「……子供合唱団に協力してもらったんだ。僕はやっと憲兵隊の交代式にも参加できるようになった。今日初めての憲兵交代式に参加できた記念に、僕に君の手を取って一生を共にする喜びを与えてもらえないだろうか?」
いわゆる公開プロポーズである。
予定にない行動に憲兵隊長は苦笑いしながらも咎めようとはせず、逆に静かに演奏を続けるようにと指揮者に指示を出した。
「………はい。あ、ありが……とっ……で、も……私っ……」
「君が孤児院出身だとしても、君がここにいるということは、君にはご両親がいたんだ。今日ここにいる人たちが皆、君の親代わりだ!君のその返事だけで、ここにいる人たちはきっと僕たちの婚姻を許可してくれるよ」
「許可します!!」
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「だってぇ……」
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アーウェンにはその変化がなぜ起こったのかわからず、憲兵たちにもみくちゃにされる若い兵と、女性が友人たちに囲まれて花で作られた冠を被せてもらいながら泣き笑いしているのを、ただ不思議そうに見つめるだけだった。
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