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第一章 アーウェン幼少期

伯爵は友人を嗜める ③

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ログナスがラウドを案内して戻った本邸では、豪華な食事が用意されていた。
「こっ、このような時に……」
「えっ、いえっ…だ、旦那様……こ、これはターランド伯爵閣下が……」
この町だけでなく、ルアン伯爵領の特産品が使われた宴会料理を前にして、ログナスは怒りを向ける矛先を一瞬見失った。
「とにかく席に着こう。お前も俺も、そして部下たちも」
そう言うと、ラウドは率先して主人席の左側に座る。
促されてログナスが納得のいかない顔をしながらも席につくと、両翼を埋めるようにターランド伯爵兵とルアン伯爵兵が、その位に倣って次々と席に着いた。

「……お前はこの部屋と、あちらの牢にいる者たちの違いを、どう思う?」
「どう……とは……?」
落ち込みようが酷く、ほぼ酒しか口にしないログナスに向かい、ラウドは交流を深める部下たちにグラスを上げる。
「聖人君子とまではいかずとも、人格が優れているからか?」
「いや……」
粗野な言動が多い田舎者たちだから、全員が全員、お行儀がいいとはいえない。
幼馴染同士ばかりだが、牢にいる者たちもその関係に違いはないだろう。
「立場、だよ」
「は……?」
何を言われたのか理解できず、ログナスは顔を顰める。
「我々は貴族だ。平民より尊重され、権力を持ち、『税』と称して領民から富を得る」
「……はい」
「ここにいる者たちもそうだろうが、心構えが違う」
ログナスがラウドの視線を辿って室内を見渡せば、アーウェンの王都での様子を話す者もいれば、今まで町の中で起こった弱者への暴力行為などの犯罪対策などについての意見を交わしているようだ。
「ここにいる者たちは、自分たちの負う責任と町から得ている賞賛や利益を結びつけているだろう。ここにいない者たちは、責任の重さと自分の得るものの軽さについて思うところがあるのだろう」
「そう……でしょうか……いや、そうかも……しれません」
「貴族といっても、その財や領地、王宮での仕事……責任は重いが、その差がどのようにあるかなど、平民では推し量れぬこともあろう…であれば、生まれの真偽はともかく、『男爵子息』という立場にある者を虐げる機会が訪れた……それを心から喜んで手に入れるか、悪事に染まることをよしとしないか…その心持ちがここにいるかどうかの違いだと、俺は思うぞ」
ログナスはラウドの言葉を聞き、また宴会の席に着く者たちを見回した。

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