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第一章 アーウェン幼少期
伯爵家は才能ある者に溢れる ①
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アーウェンを養子に迎えたおかげで、ターランド伯爵家は様々な魔術の研究が始まった。
まさか使用人たちから『自分の属性を知りたい』という申し出まであるとは思わなかったが、アーウェンやカラに植えつけられていた黒い種や糸状の痕などの治療や研究のために、王都貴族院の魔術研究を行う魔術師がターランド伯爵邸に研究所を構えるようになったのも手助けとなった。
だがその検査のおかげで、料理だけでなく掃除や洗濯などでも魔力を使うことが可能だとわかったり、王都伯爵邸の建物や植栽、畑の育成などにも強化がかけられることが可能となったのである。
「……アーウェンやカラを呪った者の尻尾はまだ掴めんが……まあ、我が屋敷によくぞこれほどの人材がいたものだ」
「本当ですね。測るほどの魔力があるかないかはともかく、『なんとなく他人と違う』という感覚を持つ者が多かったようです。ひとり一人の力は弱くとも、複数で魔術をかけるなどで強化するなど、兵士たちが後方支援魔術を応用して無機物にも有機物にも使っています。言葉はアレですが……」
「うむ……アレだ……『怪我の功名』というやつだが……あまり言いたくはないな、アーウェンやカラの命がかかっていたと思うと」
「はい」
ラウドとバラットがそれぞれ頷くが、カラが『なんとなく』で行っていたアーウェンのための強化魔法入りスープも、特定の人間以外にも効き目のある汎用方法も編み出せたし、まだ幼いエレノアに対する魔力増加のための訓練にもなっている。
「もうそろそろエレノアにも乳母ではなく家庭教師をつけようと思っていたところだが、スープに魔力を混ぜるという家政にも通じる方法で、ある程度コントロールすることを身に着けられたからな。幼いゆえか、飲み込みも早い」
「そうですね……加護の力を顕現されたと聞いた時は驚きましたが、魔力量ではリグレ様よりもおありのように思います。成長過程で魔力の暴走が起きなくて幸いでした。リグレ様もあと一歩というところでしたから……」
「あっ……あぁ~~……確かに……アレは大変だった……まだターランドの歴史書のひとつにあった『魔力放出の儀』を叩きこまれていて助かったよ……あの時ばかりは父上とお祖父様に感謝したが」
「ハハハ……」
『才能溢れる』といえば聞こえはいいが、御せない力はただの凶器である。
場合によっては、リグレは魔力暴走の果てに廃人となって、ターランド伯領地内でも人目につかない家族専用の療養保養地に閉じ込めねばならなかった。
実際そうやって何人もの血族がそこで生涯を終えているのだから──
「それはそうとも、この判明してしまった魔力持ちの者たちはどうしたものか……」
「まあ、あまりにも魔力値が高い者は魔術師様たちが研究所に誘われているようですが……伯爵家に恩義を感じている者ばかりで、『本邸裏手に作った研究所内でのお手伝いだけなら』とお断りさせていただいているとか」
「そうか……そうか……ハハ……そうか……」
側近中の側近であるバラット以外には見せないが、ラウドはだらしないほど相好を崩して椅子に寄り掛かる。
まさか使用人たちから『自分の属性を知りたい』という申し出まであるとは思わなかったが、アーウェンやカラに植えつけられていた黒い種や糸状の痕などの治療や研究のために、王都貴族院の魔術研究を行う魔術師がターランド伯爵邸に研究所を構えるようになったのも手助けとなった。
だがその検査のおかげで、料理だけでなく掃除や洗濯などでも魔力を使うことが可能だとわかったり、王都伯爵邸の建物や植栽、畑の育成などにも強化がかけられることが可能となったのである。
「……アーウェンやカラを呪った者の尻尾はまだ掴めんが……まあ、我が屋敷によくぞこれほどの人材がいたものだ」
「本当ですね。測るほどの魔力があるかないかはともかく、『なんとなく他人と違う』という感覚を持つ者が多かったようです。ひとり一人の力は弱くとも、複数で魔術をかけるなどで強化するなど、兵士たちが後方支援魔術を応用して無機物にも有機物にも使っています。言葉はアレですが……」
「うむ……アレだ……『怪我の功名』というやつだが……あまり言いたくはないな、アーウェンやカラの命がかかっていたと思うと」
「はい」
ラウドとバラットがそれぞれ頷くが、カラが『なんとなく』で行っていたアーウェンのための強化魔法入りスープも、特定の人間以外にも効き目のある汎用方法も編み出せたし、まだ幼いエレノアに対する魔力増加のための訓練にもなっている。
「もうそろそろエレノアにも乳母ではなく家庭教師をつけようと思っていたところだが、スープに魔力を混ぜるという家政にも通じる方法で、ある程度コントロールすることを身に着けられたからな。幼いゆえか、飲み込みも早い」
「そうですね……加護の力を顕現されたと聞いた時は驚きましたが、魔力量ではリグレ様よりもおありのように思います。成長過程で魔力の暴走が起きなくて幸いでした。リグレ様もあと一歩というところでしたから……」
「あっ……あぁ~~……確かに……アレは大変だった……まだターランドの歴史書のひとつにあった『魔力放出の儀』を叩きこまれていて助かったよ……あの時ばかりは父上とお祖父様に感謝したが」
「ハハハ……」
『才能溢れる』といえば聞こえはいいが、御せない力はただの凶器である。
場合によっては、リグレは魔力暴走の果てに廃人となって、ターランド伯領地内でも人目につかない家族専用の療養保養地に閉じ込めねばならなかった。
実際そうやって何人もの血族がそこで生涯を終えているのだから──
「それはそうとも、この判明してしまった魔力持ちの者たちはどうしたものか……」
「まあ、あまりにも魔力値が高い者は魔術師様たちが研究所に誘われているようですが……伯爵家に恩義を感じている者ばかりで、『本邸裏手に作った研究所内でのお手伝いだけなら』とお断りさせていただいているとか」
「そうか……そうか……ハハ……そうか……」
側近中の側近であるバラット以外には見せないが、ラウドはだらしないほど相好を崩して椅子に寄り掛かる。
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