53 / 417
第一章 アーウェン幼少期
少年は『繋がり』が切れる ⑤
しおりを挟む
光が収まると、アーウェンは嘘のように咳き込みを止め、カラもまた肌がひときわ明るくなったように見える。
だが──
「ノア!」
「エレノア!?」
今度は幼いエレノアがアーウェンの膝の上に覆いかぶさるように倒れ伏し、そのただならぬ様子に両親は慌てて駆け寄った。
「…………スゥ~…………」
仰向けにさえれたエレノアはカクンと首を後ろに倒し、口から涎を垂らしながら穏やかな寝息を立てている。
「寝……て、いる……?」
髪は金色からさらに透き通るほど色彩がなくなり、顔色はやや青白いものの、具合が悪そうな感じはない。
アーウェンのために控えていた魔術師も傍に寄ることを許されたため、エレノアの手を取り、じっくりとその寝顔から身体全体を見回した。
「……大丈夫です。おそらく魔力を限界まで放出されたための睡眠状態のようです。このような幼齢の令嬢では稀ですがかなりの魔力をお持ちのようでしたが……今さっきより前に、何か魔術を使われたのでしょうか?」
「あ」
魔術師の言葉に一同が安堵と困惑の溜息をつく中、ロフェナが声を上げると同時に、カラも思いあたったようにロフェナを振り返り、合点がいったと頷いた。
「……後ほどご報告する予定でしたが」
「エ、エレノアが、何かしたのか……?」
「あの……こちらの応接室に呼ばれる前、執事長が来られる前でしたが……エレノア様がアーウェン様と『お茶会』を開かれまして」
あの部屋にいたのは、アーウェンとエレノア、カラとロフェナ、そしてラリティスだけであったから、事の顛末をきちんと説明していなかった。
「……というわけで、お嬢様がアーウェン様にお茶のカップを差し出し、それを持つ手のひらをそのままアーウェン様が添えられて飲まれましたところ、なぜか『守護の力』が顕現されたのでございます」
「いや……バラットから『エレノアがアーウェンに対して『守護の力』を発揮したとは聞いたが……単に一瞬というわけではなかったのだな?』
「はい。いえ……そんなに長い時間だったわけではないと思うのですが……あまりにも尊い光で……その時はエレノア様に体調のご変化はありませんでした」
また解明しなければいけないことが増えた──そうは思っても、まずはエレノアが目を覚ますまで本当に安堵はできない。
いったんはふたりを休ませるようにと応接室から子供部屋へ移動させたが、母であるヴィーシャムがついていくのを止めることはしなかった。
ラウドが話を聞こうとするより、きっといい結果が出るはずである。
だが──
「ノア!」
「エレノア!?」
今度は幼いエレノアがアーウェンの膝の上に覆いかぶさるように倒れ伏し、そのただならぬ様子に両親は慌てて駆け寄った。
「…………スゥ~…………」
仰向けにさえれたエレノアはカクンと首を後ろに倒し、口から涎を垂らしながら穏やかな寝息を立てている。
「寝……て、いる……?」
髪は金色からさらに透き通るほど色彩がなくなり、顔色はやや青白いものの、具合が悪そうな感じはない。
アーウェンのために控えていた魔術師も傍に寄ることを許されたため、エレノアの手を取り、じっくりとその寝顔から身体全体を見回した。
「……大丈夫です。おそらく魔力を限界まで放出されたための睡眠状態のようです。このような幼齢の令嬢では稀ですがかなりの魔力をお持ちのようでしたが……今さっきより前に、何か魔術を使われたのでしょうか?」
「あ」
魔術師の言葉に一同が安堵と困惑の溜息をつく中、ロフェナが声を上げると同時に、カラも思いあたったようにロフェナを振り返り、合点がいったと頷いた。
「……後ほどご報告する予定でしたが」
「エ、エレノアが、何かしたのか……?」
「あの……こちらの応接室に呼ばれる前、執事長が来られる前でしたが……エレノア様がアーウェン様と『お茶会』を開かれまして」
あの部屋にいたのは、アーウェンとエレノア、カラとロフェナ、そしてラリティスだけであったから、事の顛末をきちんと説明していなかった。
「……というわけで、お嬢様がアーウェン様にお茶のカップを差し出し、それを持つ手のひらをそのままアーウェン様が添えられて飲まれましたところ、なぜか『守護の力』が顕現されたのでございます」
「いや……バラットから『エレノアがアーウェンに対して『守護の力』を発揮したとは聞いたが……単に一瞬というわけではなかったのだな?』
「はい。いえ……そんなに長い時間だったわけではないと思うのですが……あまりにも尊い光で……その時はエレノア様に体調のご変化はありませんでした」
また解明しなければいけないことが増えた──そうは思っても、まずはエレノアが目を覚ますまで本当に安堵はできない。
いったんはふたりを休ませるようにと応接室から子供部屋へ移動させたが、母であるヴィーシャムがついていくのを止めることはしなかった。
ラウドが話を聞こうとするより、きっといい結果が出るはずである。
29
お気に入りに追加
787
あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。


【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。


【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

てめぇの所為だよ
章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる