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第一章 アーウェン幼少期
少年は慕われる ③
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「……まったく。ご自身がお子に『先回りをするな』と諫めたのに、旦那様が率先して先回りされるとは!カラの身内のことは、あの子自身が決めるべきこと。旦那様はそれを見守ること」
「いや、だが……それとこれとは……」
「新たに『耳』を差し向けます。カラの妹が無体に花を散らされぬようにいたしましょう。あの者たちが住む救貧院はまだまともな方ですから、幼子に毒手が伸びるとは思いませんが……」
バラットにクドクドとお説教されるのを、モゴモゴと口籠りながら聞いていた伯爵だが、何かを思いついたかのように顔を輝かせた。
「買う!」
「は?」
「救貧院の購入を!同時に複数施設を!であれば、目立つまい?」
「……旦那様」
はぁ…とバラットは溜息をついたが、ターランド伯爵家がたびたび慈善事業のために孤児院などを購入し、直接運営に関わることは珍しくないため、確かにカラのいた救貧院ごと一区画を購入してしまえばいいのだとは思う。
思うが──
「確かあの地区はメイダス伯爵家の管理する物件がいくつかあったかと思いますが?」
「むっ……メイダスか……」
現メイダス伯爵自身はラウドより二歳ほど年下で王立貴族学院では多少の縁があった。
そのまま上の大学部に進んだラウドと違い、彼は前メイダス伯爵当主から請われて高等部の学問を修めてすぐに結婚して次期当主の座を譲られ、リグレと同い年の息子がいる。
悪い人間ではなく、どちらかというと愚鈍に近いお人好しの部類に入るのだが、その性格を利用されて芳しくない仕事にも担ぎ出されてしまう傾向がある。
ターランド家としては同じ伯爵格とはいえ、なるべく近づかないようにしているのだが──
「いっそのこと、メイダス家の後見人的な立場になるというのはどうだ?陛下もあの押しの弱さにたびたび頭を抱えておられる。つい最近も変な連中が『科学のため』などと言って取り入り、ずいぶんと財産室の空きを増やしたと聞いているが……」
何か思いついたようにラウドはニヤニヤとし始め、リグレを呼ぶようにと従僕に言付ける。
「いかがいたしますので?」
「なぁに。カラの母子の身体を綺麗にし、ついでに他の入院者も綺麗にし、帰るべき家がある者が帰るべき家族を連れてこれる施設を作り、メイダス家の財産室の棚をまた埋め、不届きな鼠どもが入りこまないように鍵を閉めるだけさ」
ふふふ~んと鼻歌を歌いながら、ラウドは小さな声でそっと窓の外に向けて呟いた。
「ついでに、我が息子とメイダス次期当主に箔と財産を作ってやるだけさ」
「いや、だが……それとこれとは……」
「新たに『耳』を差し向けます。カラの妹が無体に花を散らされぬようにいたしましょう。あの者たちが住む救貧院はまだまともな方ですから、幼子に毒手が伸びるとは思いませんが……」
バラットにクドクドとお説教されるのを、モゴモゴと口籠りながら聞いていた伯爵だが、何かを思いついたかのように顔を輝かせた。
「買う!」
「は?」
「救貧院の購入を!同時に複数施設を!であれば、目立つまい?」
「……旦那様」
はぁ…とバラットは溜息をついたが、ターランド伯爵家がたびたび慈善事業のために孤児院などを購入し、直接運営に関わることは珍しくないため、確かにカラのいた救貧院ごと一区画を購入してしまえばいいのだとは思う。
思うが──
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「むっ……メイダスか……」
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悪い人間ではなく、どちらかというと愚鈍に近いお人好しの部類に入るのだが、その性格を利用されて芳しくない仕事にも担ぎ出されてしまう傾向がある。
ターランド家としては同じ伯爵格とはいえ、なるべく近づかないようにしているのだが──
「いっそのこと、メイダス家の後見人的な立場になるというのはどうだ?陛下もあの押しの弱さにたびたび頭を抱えておられる。つい最近も変な連中が『科学のため』などと言って取り入り、ずいぶんと財産室の空きを増やしたと聞いているが……」
何か思いついたようにラウドはニヤニヤとし始め、リグレを呼ぶようにと従僕に言付ける。
「いかがいたしますので?」
「なぁに。カラの母子の身体を綺麗にし、ついでに他の入院者も綺麗にし、帰るべき家がある者が帰るべき家族を連れてこれる施設を作り、メイダス家の財産室の棚をまた埋め、不届きな鼠どもが入りこまないように鍵を閉めるだけさ」
ふふふ~んと鼻歌を歌いながら、ラウドは小さな声でそっと窓の外に向けて呟いた。
「ついでに、我が息子とメイダス次期当主に箔と財産を作ってやるだけさ」
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