上 下
27 / 29
延長戦

第24話 鹿波ちゃんを攻略しよう!

しおりを挟む
 深夜1時。
 みんなは自室で寝ているが、僕は王様ゲームの時のキスが頭にこびりついて、どうにも眠れなかった。
 
 なので、さっぱりしようと、風呂場に向かった。が、先客で鹿波ちゃんが浸かっていたのであった。

 かぽーん

 別荘のお風呂はまるで、温泉施設のような広さを誇っている。

 そんな広々とした空間で湯船に並んで浸かる僕たち。

「ねぇ、鹿波ちゃん」

「どうしたの、大晴」

「本当にこれで3人とも落とせたのかな」

「ええ。キスに夢中になっていたし、最終的には目がハートになって、私が止めなかったら、大変なことになっていたわ」

 確かに、鹿波ちゃんが止めなければ、あのまま童貞を卒業していたかもしれない。

 そのくらい、堕ちた時の彼女たちは凄かった。

 生徒会の3人は攻略完了。
 次のステップに進める、と言いたいところだけど……。

 ——鹿波ちゃんを攻略していない。

 鹿波ちゃんは僕のことを夫に貰ってくれると言った。

 すごく嬉しかったし、ハーレムメンバー第一号と確信していた。

 だが、彼女が僕を好きとは限らない。
 僕は……鹿波ちゃんに好きだと言われたことがなかったから。

 くの仔ちゃんが言っていた。

『鹿波様はなんでもこなせる優等生です。ただ一つ、弱点があるとすれば……自分の思い通りにいかなかった時』

 今までは鹿波ちゃんの指示通り動いているため、彼女の思い通りにいって当然。
 
 鹿波ちゃんはあの日、「もし、失敗しても私が大晴を夫に貰ってあげるわ」と言っていた。

 なら、その逆のことを言えば、何かしらのボロが出るはず。
 
 仕掛けるなら、3人を攻略した今。
 
「鹿波ちゃん、僕さ」

「ん?」

「ハーレムを作るのに成功したから……奥さんいらないや」




(鹿波視点)

 攻略済みゲームを提案した理由。

 1人でゆっくり考えた結果——大晴を裏で独占する優越感に浸りたかったと出た。

 と、同時に気づいてしまった。
 結局、得られるのは優越感だけ。

 迫られたり、デートをしたり、彼からキスされたり……。

 思い返せば、大晴にそんな事されたことはなかった。

 それは、恩人という権利に縋った末路。

 本当は大晴に言って欲しかったのだ。

『鹿波ちゃんが1番だよ』
『やっぱり鹿波ちゃんがいないとダメ』
『鹿波が好きだ』

 ……ああ、私は余裕ぶっていたせいで、1番遅れていたのだ。




 静寂が続く。
 
 ……これは選択を間違えたかな?

「僕、先に上がるね」

 次の作戦を練るために湯船から上がろうとしたが……

「私のこと、見て……」

 鹿波ちゃんが僕の腕にしがみついてきた。
 柔らかな感触に、ふわりと香る良い匂いによって、僕の意識が一気に彼女に集中する。

「……大晴」

 悲しそうに、でも甘えるように目を細め、湿った息が顔にかかる。
 
「ごめんね、鹿波ちゃん。さっきのは嘘だよ」

 僕は両手で鹿波ちゃんの顔を挟み、そして、唇を重ねた。

 唇と唇が軽く触れあって、数瞬の後に離れる。 

「私……大晴のことが好きなの。大好き……っ」

 鹿波ちゃんからの始めての、好きの言葉。
 思わず頬が緩む。

「鹿波ちゃんありがとう。あの日僕を拾ってくれて。そして、僕のことを好きになってくれて。僕にとって鹿波ちゃんは1番目に好きになった女の子。けれど、僕はみんなのことを愛したいから、1番に愛を注げるかは分からないけど……一生大切にすることは間違いないから」
 
 彼女の目を見て真っ直ぐ告げる。

「一生……。その言葉、忘れないから」

「うん、約束するよ」

 微笑み、再びキスをする。

 鹿波ちゃんの気が済むまで、僕は彼女にキスをするのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

男女比1/100の世界で《悪男》は大海を知る

イコ
ファンタジー
男女貞操逆転世界を舞台にして。 《悪男》としてのレッテルを貼られたマクシム・ブラックウッド。 彼は己が運命を嘆きながら、処刑されてしまう。 だが、彼が次に目覚めた時。 そこは十三歳の自分だった。 処刑されたことで、自分の行いを悔い改めて、人生をやり直す。 これは、本物の《悪男》として生きる決意をして女性が多い世界で生きる男の話である。

男女比の狂った世界は、今以上にモテるようです。

狼狼3
ファンタジー
花壇が頭の上から落とされたと思ったら、男女比が滅茶苦茶な世界にいました。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

貞操逆転の世界で、俺は理想の青春を歩む。

やまいし
ファンタジー
気が付くと、男性の数が著しく少ない歪な世界へ転生してしまう。 彼は持ち前の容姿と才能を使って、やりたいことをやっていく。 彼は何を志し、どんなことを成していくのか。 これはそんな彼――鳴瀬隼人(なるせはやと)の青春サクセスストーリー……withハーレム。

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

シン・三毛猫現象 〜自然出産される男が3万人に1人の割合になった世界に帰還した僕はとんでもなくモテモテになったようです〜

ミコガミヒデカズ
ファンタジー
 気軽に読めるあべこべ、男女比モノです。  以前、私がカクヨム様で書いていた小説をリメイクしたものです。  とあるきっかけで異世界エニックスウェアに転移した主人公、佐久間修。彼はもう一人の転移者と共に魔王との決戦に挑むが、 「儂の味方になれば世界の半分をやろう」  そんな魔王の提案に共に転移したもう一人の勇者が応じてしまう。そんな事はさせないと修は魔王を倒そうとするが、事もあろうに味方だったもう一人の勇者が魔王と手を組み攻撃してきた。  瞬間移動の術でなんとか難を逃れた修だったが、たどり着いたのは男のほとんどが姿を消した異世界転移15年後の地球だった…。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

処理中です...