12 / 29
分からせパート
第10話 立夏ちゃん、下呼び
しおりを挟む
何やら教室内が静かになった。
何故だ。
……僕が何かしたんだ。
「今、立夏ちゃんって……」
七崎さんが声を漏らす。
水泳が男女混合と聞いて気持ちが上がっていた僕は、鹿波ちゃんのノリで七崎さんも下呼びにしてしまった。
だが、引くわけにはいかない。
作戦は、強引に攻める。
このまま押し通そう。
「嫌だったかな?」
「いや、じゃないけど……。どうして私のことだけ下呼びしたの?」
いきなり核心を突いてきた。
「……ねえ、どうして?」
そう言って、にじり寄ってくる七崎さんの様子は明らかにおかしかった。
息は荒く、頬が紅潮し、瞳は何やら欲望の光がギラギラと宿っている。
「立夏ちゃん……?」
「知ってますよ。下呼びしてくれたってことは……“そういうこと”なんだって」
……どういうこと?
「そういうことっていうのは分からないけど、僕はただ、立夏ちゃんともっと仲良くなりたいだけだよ」
「そうですか。私も日浦くん……いえ、大晴くんと仲良くなりたいな」
「じゃあ僕らは気が合うね」
顔を見合い、笑い合う。
「でも気を付けてね。誰にでも愛想をふりまいていると、いつか勘違いされて、そのうちストーカーみたいな女子が出てくるよ」
「それは怖いね。その時は立夏ちゃんに助けてもらうよ」
「本気で心配しているんだよ? けれど、大晴くんがそう言うなら分かった。危ない時は私が助けるね」
と、また2人顔を見合わせ、笑い合う。
先程から静かなクラスメイトたちは、僕たちを見守っているのようだ。
「ほんと、大晴くんは隙がありすぎて心配」
「隙ってどういうこと?」
「その内分かるよ。ただ今言えることは、もっと危機感を持った方が良いってこと。女子はみんなケダモノなんだから」
「立夏ちゃんもケダモノなの?」
ここで七崎さん……もう立夏ちゃんでいっか。
立夏ちゃんの笑顔が固まる。
「……さぁ? どうでしょう」
「あはは、はぐらかされちゃった。でも僕は立夏ちゃんがケダモノになったところも見てみたいな」
「っ、」
かなり露骨なアピールでからかうと、立夏ちゃんの言葉が止まった。
……ふう、いっぱい話した。
ヘタレな僕にしては女の子と自然に話せたと思う。
それに、こうやって挑発しても、この学園にいる限り中々手を出してこないだろう。
立夏ちゃんの次なる言葉を待っていると、高橋に肩を叩かれる。
「日浦くん、ちょっと外に出ようか?」
「そうだよ、日浦くん。俺らとお話しがあるから」
「え、なになに2人とも。え、ちょっと!!」
「あらあら。朝のホームルームまでには帰ってきてくださいね~」
にこやかな笑顔を浮かべる立夏ちゃんに見送られ、高橋と田中に連れられた。
*****
大晴が去った後。
立夏の周りには、残された女子たちが集まっていた。
「なになに!? 立夏さんと日浦くん、そんなに親しかったの~!」
「この前の体育の時、お姫様抱っこしたのだって、やっぱり2人はそういう関係なの!!」
「みんな落ちついて。私も急に話しかけられて、ビックリしたよ」
「で、実は付き合ってるとか?」
「ないない」
立夏は話を早く切り上げたいが、興奮が冷めない女子たちは、さらに彼女にズイッと近づいてくるだけ。
「本当に?」
「本当」
「生徒会特権で既に童貞を奪ったとかないよね?」
「大丈夫。そんなことしないから」
ハッキリとした立夏の言葉にクラスの女子たちは胸を撫で下ろしていた。
(それにしても、彼が私のことを下呼びにしてくれるなんて……これは、ちょっとは期待してもいいのかな)
何故だ。
……僕が何かしたんだ。
「今、立夏ちゃんって……」
七崎さんが声を漏らす。
水泳が男女混合と聞いて気持ちが上がっていた僕は、鹿波ちゃんのノリで七崎さんも下呼びにしてしまった。
だが、引くわけにはいかない。
作戦は、強引に攻める。
このまま押し通そう。
「嫌だったかな?」
「いや、じゃないけど……。どうして私のことだけ下呼びしたの?」
いきなり核心を突いてきた。
「……ねえ、どうして?」
そう言って、にじり寄ってくる七崎さんの様子は明らかにおかしかった。
息は荒く、頬が紅潮し、瞳は何やら欲望の光がギラギラと宿っている。
「立夏ちゃん……?」
「知ってますよ。下呼びしてくれたってことは……“そういうこと”なんだって」
……どういうこと?
「そういうことっていうのは分からないけど、僕はただ、立夏ちゃんともっと仲良くなりたいだけだよ」
「そうですか。私も日浦くん……いえ、大晴くんと仲良くなりたいな」
「じゃあ僕らは気が合うね」
顔を見合い、笑い合う。
「でも気を付けてね。誰にでも愛想をふりまいていると、いつか勘違いされて、そのうちストーカーみたいな女子が出てくるよ」
「それは怖いね。その時は立夏ちゃんに助けてもらうよ」
「本気で心配しているんだよ? けれど、大晴くんがそう言うなら分かった。危ない時は私が助けるね」
と、また2人顔を見合わせ、笑い合う。
先程から静かなクラスメイトたちは、僕たちを見守っているのようだ。
「ほんと、大晴くんは隙がありすぎて心配」
「隙ってどういうこと?」
「その内分かるよ。ただ今言えることは、もっと危機感を持った方が良いってこと。女子はみんなケダモノなんだから」
「立夏ちゃんもケダモノなの?」
ここで七崎さん……もう立夏ちゃんでいっか。
立夏ちゃんの笑顔が固まる。
「……さぁ? どうでしょう」
「あはは、はぐらかされちゃった。でも僕は立夏ちゃんがケダモノになったところも見てみたいな」
「っ、」
かなり露骨なアピールでからかうと、立夏ちゃんの言葉が止まった。
……ふう、いっぱい話した。
ヘタレな僕にしては女の子と自然に話せたと思う。
それに、こうやって挑発しても、この学園にいる限り中々手を出してこないだろう。
立夏ちゃんの次なる言葉を待っていると、高橋に肩を叩かれる。
「日浦くん、ちょっと外に出ようか?」
「そうだよ、日浦くん。俺らとお話しがあるから」
「え、なになに2人とも。え、ちょっと!!」
「あらあら。朝のホームルームまでには帰ってきてくださいね~」
にこやかな笑顔を浮かべる立夏ちゃんに見送られ、高橋と田中に連れられた。
*****
大晴が去った後。
立夏の周りには、残された女子たちが集まっていた。
「なになに!? 立夏さんと日浦くん、そんなに親しかったの~!」
「この前の体育の時、お姫様抱っこしたのだって、やっぱり2人はそういう関係なの!!」
「みんな落ちついて。私も急に話しかけられて、ビックリしたよ」
「で、実は付き合ってるとか?」
「ないない」
立夏は話を早く切り上げたいが、興奮が冷めない女子たちは、さらに彼女にズイッと近づいてくるだけ。
「本当に?」
「本当」
「生徒会特権で既に童貞を奪ったとかないよね?」
「大丈夫。そんなことしないから」
ハッキリとした立夏の言葉にクラスの女子たちは胸を撫で下ろしていた。
(それにしても、彼が私のことを下呼びにしてくれるなんて……これは、ちょっとは期待してもいいのかな)
41
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。

俺、貞操逆転世界へイケメン転生
やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。
勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。
――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。
――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。
これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。
########
この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる